#42
振り返った妖魔に痛烈なる衝撃が走る!
『ぐ…ぎぎぎッ!』
それは妖魔の左右両方の頭部…こめかみ辺りにグサリ…グサリと円月の両手の指先全てが第二関節よりも深く突き刺さっているのであったからだ。
当然…妖魔は忌々しい円月を振り払おうと身体を動かす。
しかし…その行為は無駄なものとなるのであった!
『…グォォォォォォォォォォォオヲ…をッッ!!
な、何故だ…何故、身体が動かないのだッ!
キサマァ…ッ!!
一体…何をしたァァァァッッ!!』
妖魔が…どんなに力を入れてみても指先さえ、ピクリとも動かないのであったからだ。
妖魔は…額に脂ぎった汗を滲ませて、うんうんと唸りながら険しい表情で…必死に全身へ力を込めるが、やはり無駄な抵抗であるようだ。
円月は妖魔と対峙してから初めての笑みを溢した。
「ふふ…妖魔よ、人間の底力を甘く見たようだな。
もはや…これまでだ…観念しろッ!!」
円月は指先から自らの霊力全てと生命力を全てを妖魔と化した酔月に注ぎ込んだのであった!
妖魔は…死という恐怖を感じたのか!?
これには流石にマズイと口からデマカセを幾つも並べ立て…饒舌になる。
『す、すまなかった…許してくれ、許してくれよ。
う…あ、あの人間達は逃がしてやるからさ。
ここには…もう近付かないから…悪さなんてしないから………うぁぁ…助けてくれよぉッ!!!!』
円月は怒りに満ちた眼差しで睨み付けると…こう吐き捨てた!
「もしも…貴様が同じように人間から助けを乞われたら、貴様は迷わずに無垢な魂を奪うのであろう?」
『ち、畜生ーッ…ちくしょう、チクショウォォォ…ヲ…を…ッッー…!!』
命懸けの気迫を感じ、妖魔は足が竦み上がった。
清廉潔白なる銀色の輝きが妖魔と円月を包み込むようにして強く強くなっていくのであった!
「ふふ…親不孝などさせぬぞ…酔月よ。
私と共に逝こう…愛する我が子を独りきりになどするものか。
鏡月ならば大丈夫だ………あの子は麒麟様に選ばれたのだから……………ッ!!」
これから発動させる霊術の巻き添えにならないように配慮し…足の裏に集中させた僅かな霊力を使い、可能な限り…高く飛び上がった!!
真昼の真白き満月に妖魔と円月のシルエットが浮かび上がると、空気が一際…澄んだように感じられた。
殺那的な間をおいて、何もかもが真っ白になるくらいの鮮烈なる閃光が空と大地の輪郭を奪っていく。
《ズ………ドドォォォォーンンッッ…!!》
雷が落ちた時のような轟音と花火が爆発する時の腹に響く低音が交じりあったみたいに凄まじい衝撃を伝える音が空を切り裂いていく!!
ビリビリと肌に痛い程の衝撃音、爆発音は爆風となり大地と生い茂る木々をゆさゆさと揺らすのであった。
それは…妖魔に捕えられている里の人々や、麒麟の力を使いこなす為の修練をしていた鏡月にも確認できる程に凄まじい爆発であった…!!
「…む、あれは…なんだ……!?」
閉じ込められた人々は、爆発を目撃すると…騒然となりざわめきたてた!
「もしや…円月様が倒して下さったのでは無いのでしょうか?」
喜びに満ちた声を上げて、感謝する。
彼らにも…微かではあるが感じられたのだ、あの凄まじい爆発に命の輝きを…
尊い命と引き替えに自分達が助けられたのであろう事を………。
手を取り合い喜びを噛みしめる人々の耳に信じられない声が響いた!




