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何者にもなれなかった僕たちへ ――勇者、ニートの章――  作者: 藍川ユイ


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1/11

プロローグ 終わりの始まり


 ――勇者。それは勇気ある者を称える栄誉の称号。


 その中でも神によって選ばれし勇者を、人々は神託の勇者と呼んだ。


「みんな、見送りありがとう」


 青空の下、小さな村の入口で僕は振り返る。そこには老若男女、大勢の村人が集まっていた。見た限りおそらく村の全員が詰めかけていた。


「首都の使者に招かれるなんてさすがだな!」

「村の誇りだ!」


 みんな一様に視線に期待を乗せている。僕はその一心に注がれる視線を受けてにこりと笑った。

 その僕を見て涙を流す人がふたりだけいた。


「立派な勇者になるんだぞ……!」

「どうか体にだけは気をつけてね……」


 首都へ行く日、父と母は泣いていた。

 誇らしいと同時に、心配と寂しさもあったんだろう。

 僕は村で一番強かった。だいたいのことは少し習えばそこそこ上手くできた。僕は十歳にしてみんなから頼られるようになっていた。


 だから首都から誘いを受け、勇者になるべく首都の英雄養成機関、通称冒険者学校に呼ばれたのは必然だった。


「父さん、母さん、今までありがとう。それじゃあみんな、いってきます!」


 僕はそう言って手を振った。みんなわあわあと歓声を上げながら手を振ってくれた。

 こうして僕は、期待と不安を胸に生まれ育った村を旅立った。



 それから五年後、勇者は魔王を討った。

 そして僕は――ニートになっていた。

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