プロローグ 終わりの始まり
――勇者。それは勇気ある者を称える栄誉の称号。
その中でも神によって選ばれし勇者を、人々は神託の勇者と呼んだ。
「みんな、見送りありがとう」
青空の下、小さな村の入口で僕は振り返る。そこには老若男女、大勢の村人が集まっていた。見た限りおそらく村の全員が詰めかけていた。
「首都の使者に招かれるなんてさすがだな!」
「村の誇りだ!」
みんな一様に視線に期待を乗せている。僕はその一心に注がれる視線を受けてにこりと笑った。
その僕を見て涙を流す人がふたりだけいた。
「立派な勇者になるんだぞ……!」
「どうか体にだけは気をつけてね……」
首都へ行く日、父と母は泣いていた。
誇らしいと同時に、心配と寂しさもあったんだろう。
僕は村で一番強かった。だいたいのことは少し習えばそこそこ上手くできた。僕は十歳にしてみんなから頼られるようになっていた。
だから首都から誘いを受け、勇者になるべく首都の英雄養成機関、通称冒険者学校に呼ばれたのは必然だった。
「父さん、母さん、今までありがとう。それじゃあみんな、いってきます!」
僕はそう言って手を振った。みんなわあわあと歓声を上げながら手を振ってくれた。
こうして僕は、期待と不安を胸に生まれ育った村を旅立った。
それから五年後、勇者は魔王を討った。
そして僕は――ニートになっていた。




