それぞれの冒険者と露店[夜]
王都は夜になり
夜の露店開始である。
「今日は[赤い猪]が来るとか言ってたっけ」
「クルル」
クロロも覚えているようなので間違いない
いつ来るかはわからないので気長に待つか…
「よう、景気はどうだ?モミジ」
「どうもグレイさん」
警備隊第4隊長のグレイさんが来た。
「あの[雷光球]役に立ったぜ、使い切ったがおかげで部下たち全員無事だった。ありがとよ!」
「それはよかったです」
自分が作った魔導具が役に立ってよかったよ。
「[雷光球]は売ってるか?これからも魔物の群れにすぐに対応できるように2・3個持っておきたいんだが」
商売チャンスだけど…
「すみません。あれで在庫切れでして…また材料から集めなおしです」
「そうか〜、もし作ったら3個くらいとって置いてくれないか?少し高めで買うからよ」
ご予約とは…
「わかりました。作ったらお取り置きしておきますよ」
「助かる」
おっ、そうだ。
グレイさんならアレを買ってくれるかも…
「グレイさん、奥さまにこちらの魔導具はどうですか?」
「妻に?なんだこの筒に取っ手を付けたような魔導具は」
俺がグレイさんに見せたのは昭和時代のドライヤーのような魔導具………というかドライヤーである。
「こちらはドライヤーといいまして髪を早く乾燥させる魔導具なんです」
「髪を…?早く乾燥させて何がいいんだ?自然に乾燥させてはダメなのか?」
ここからがセールスポイントだ。
「ダメです。自然乾燥では髪にダメージを与えてしまうのですよ。その点、この魔導具を使えば適度な温度の温風で早く乾燥させ、その上に魔導具から出る魔力粒子により髪をよりさらツヤにいたします」
なんかウソっぽいセールスになってしまったが、魔力粒子とかはスキルがそう言っているので本当である。
「よりさらツヤに?ほ、本当か?」
「試してみてください」
取っ手にあるスイッチを入れて温風を出した状態で渡す。
「おお!確かに温風だ………なっ!確かに汗で濡れた髪がサラサラとしていくぞ!」
自分の髪で確かめていくグレイさん
では最後のひと押しに……
「お値段は金貨10枚になりますが、ダンジョン鎮静化で戦いにいかれたグレイさんを心配している奥さまに労いのプレゼントとしてはどうでしょうか?」
「買う!そうだな!妻の心労を労わないとな!」
お買い上げありがとうございます。
乱用はダメだけど奥さんの名前は決め手になるようだな。
「ありがとうございます。こちら取り扱い説明書になります…あと何かトラブルがありましたら私か妹に言ってください、すぐに対応しますので」
「おう!ありがとうよ!待ってろリーシャ!」
グレイさんは奥さんの下へ元気に走り去っていった。
コレで更に奥さんは美しくなる事だろう。
「景気がいいな」
「クルル〜」
夜はダグさんの代わりにクロロが返事をしてくれる
嬉しいな。
×
「モミジさん!」
[赤い猪]の少年少女達が来た。
「いらっしゃいませ、妹から聞いてますよ。魔導式ランプの材料を集めたとか」
「うん、でも魔灰水晶はダメだった…」
剣士カントくんは悔しそうだ。
「コレが材料です」
弓少女クイナさんが金貨と革袋を渡してきたので中身を確認する。
「確かに…お金と材料そろっていますね」
俺はあらかじめ作っておいた魔導式ランプをクイナさんに手渡す。
「作っていたんですか!?」
「君達なら材料を持ってくると思ってね」
魔灰水晶を持ってきたら光源を取り換えればいいだけなので、とりあえず魔導式ランプは作っておいたのだ。
「お〜…明るいな」
「わ〜…」
クイナさんがスイッチを入れて緑に光るランプの光を見ている。
「あの…でも普通の魔導式ランプよりも明るい気がします…それに小さいような?」
「よく気が付きましたねフルミナさん。そのランプは一般的に売っている魔導式ランプに比べて軽量かつ頑丈にし、光量も高めているんですよ」
俺に褒められて少し照れているフルミナさん
「えっ?じゃあ普通の魔導式ランプと同じ値段でいいんですか?」
クイナさんが驚いて聞いてくるが…
「そこは作る人の技量で変わりますからね。気にしないでください」
その言葉を聞いて「流石は道具師…」と納得する3人。
「あ〜!そうなると魔灰水晶の事が気になる!絶対に取りに行きたいな!」
「そうね!」
「う、うん!」
3人は取りに行く気に満ちている。
おまけして付けてあげようかと思ったけれど…この少年少女達には不要なのかな。
そういえば、さっきから槍少年キーヤくんが静かだな。
「あの……モミジさん、この鉄の槍は魔剣…いや、魔槍ですか?」
なるほどキーヤくんは魔槍をじっと見ていたのか
「そうですよ。そちらは[無属性鉄魔槍]といいます」
「む、無属性!初めて聞きました!それに鉄の魔槍が存在するなんて」
確かにね。他の店で売ってる魔剣とかは高い材料使って作るからね。
「マジか!鉄製の魔槍なんてあんのか!」
「あの、モミジさんが作ったんですか?」
カントくんが興奮する中、フルミナさんの質問に頷く
「道具師ってすごいです…」
最近スキルが身体に馴染んではきたが
まだまだスキルだよりなので褒められても素直には喜べないな。
「試し斬りしてみます?」
「いいんですか!?」
兄妹冒険者の時のように丸太を取り出し置く。
それを見て、少し遠慮気味だったキーヤくんは鉄魔槍を手に取る。
「使い方は確か…魔力を込めて……!…緑色に光った!なら!」
キーヤくんの放った突きは……丸太を貫通した。
「すごい…」
「マジか!マジか!俺にも使わせてくれ!」
カントくんも下手な槍の振り方だが丸太を切り裂く
「………スゲ。でもコレは」
「ああ、まだ僕達には早い…今から使ってたらこの魔槍に頼りきってしまう」
キーヤくんの冷静な判断
カントくんも普段は元気少年だけど冒険者としての生き方はしっかりしているようだ。
「あと、1つ…7級冒険者になったら考えようぜ」
「そうだね。7級冒険者からはなにか強みが欲しいからいいかも」
2人は真剣に話しているが…
「まぁ、お値段は金貨15枚ですがね」
「「そもそも買えない!」」
2人そろって叫んでいる…いいコンビだな。
そうだな……この少年少女を応援がてらに提案してみるか…
「また魔導式ランプの時と同じになりますが…7級冒険者を目指しながら、お金を貯めるのと魔剣や魔槍の材料集めなどをしたらどうですか?」
少年少女が俺の方を見る。
「魔剣や魔槍の材料を持ってきてくだされば、少しお安くお作りいたしますよ」
こんな提案はどうだろうか?
「ま、魔弓も作ってもらえますか!?」
「ま、ま、魔杖もできますか!」
クイナさんとフルミナさんがせまってくる。
「もちろんです。材料さえあれば…」
俺は材料を紙にメモしていく…
「金属は何がいいんですか?」
キーヤくんが聞いてきた。
「自分にしっくりくる金属を探して、集めてください…それが一番相性がいいですから」
「しっくりくる…ですか」
材料を書いたメモをキーヤくんに渡す
「よし!やる気出てきた!目指せ7級冒険者!」
「お金もね。モミジさん、ありがとうございました!頑張ります!」
「ま、魔杖の為に頑張ります!」
「モミジさん、色々ありがとうございました。魔槍目指して7級冒険者になりますから」
少年少女達がこれからの事を話し合いながら去っていった。
「ま、ゲームでいうならサブクエストかな?」
俺から[ 赤い猪]へのサブクエスト
やるもやらないも少年少女達しだいだ。
「俺達もそろそろ帰ろうかクロロ」
「クル〜」
閉店準備をしようとした時…
何かとても薄い気配が近づいてくるのを感じた。




