それぞれの冒険者と露店[朝]
「「「「カエデさん!あの時はありがとうございました!」」」」
朝の露店をしていると冒険者[赤い猪]の少年少女が一斉にお礼を言ってきた。
魔物の群れに追われていた時に助けたお礼だろうか
「お礼はあの時に言っていた気がしますが…」
「改めてお礼が言いたかったんです」
弓少女クイナさんが真面目な顔で言ってきた。
残りの3人も頷いている。
「俺達、グル廃坑ダンジョンの鎮静化の後方支援をして報酬もらったんだ!」
剣士少年カント君は得意気な顔で言う
「なので薬水などを買いにきました」
槍少年キーヤ君が続けるように話し
「な、何か新商品ありますか?」
魔法使いのフルミナさんが更に続いて聞いてきた。
「ええ…ありますよ。まずはこちらのチョコバー……」
新商品の説明をする、もちろん味見つきである。
「チョコバー!うっまぁ!」
「ほろ苦くて甘い…こんなの初めてだ」
「シャンプーとリンス!欲しい!」
「薬水ミルクダケ味とても美味しいです。リンスとシャンプーも買います」
新商品好評だ。
ならもう一つ…小さめの陶器製の瓶を前に出す。
「これはいかがでしょうか?[発雷液]というものです」
[雷光球]のあまりから作った、ピリリ草とビリッホッパーを混ぜ合わせ、そこに金属の微粉末を混ぜた粘度の高い液体
矢尻や剣先につけて相手を攻撃すると軽いスタンを起こす薬だ。
「買います!」
クイナさんが勢いよく手を上げた。
お買い上げありがとうございます。
「そうだカエデさん、夜の露店にお兄さんはきますか?」
「はい、今日はきますよ」
「結局、魔灰水晶は取れなかったけど魔導式ランプの材料持ってうかがいますと伝えてくれませんか?」
そういえば以前、材料持ってきたら安く作ると約束したっけ…
「はい、伝えておきますよ」
「ありがとうございます!」
少年少女はダグさんの店でも革製品を買い、手を振りながら去っていった。
「ほっほ、景気がいいのう」
「ですね~」
ほくほく顔のダグさんと会話。
後方支援とはいえ今回の戦い、少年少女達にはいい経験になったのかな。
×
「お兄ちゃん、同じ場所にいるよ!」
「まて、走るな!コナ!」
ん?こちらに向かってくる冒険者には見覚えがあった。
夜の露店で鉄魔剣と鉄魔斧を買った冒険者兄妹だ。
「あなた、ここで夜露店してるお兄さんの妹さん?」
「はい、確かに夜は兄がここで露店をしていますが」
やっぱりと妹さんは笑顔で頷く
その後ろで兄はやれやれな感じだ。
「妹がいきなりですまない…俺達は少し前にアナタのお兄さんの露店で魔剣を買ったんだ」
「鉄魔斧もね!もうね!使い心地が最高なんだから!もう最高の相棒って感じ!」
妹さん興奮気味だ…でもそこは兄の方も頷いている。
「気に入ってもらえてよかったです、兄も喜びます」
よかった魔剣と魔斧は役に立ったようだ。
俺が礼を言う姿に「できた妹だ…」とぼそっと小さく呟いた兄冒険者。
「それにオマケで貰った薬水がすごく美味しかったから買いにきたんだ!」
「俺も買いたい」
オマケがうまくいったようで嬉しいな。
「そうですか、ありがとうございます。薬水でしたらこちらになります。色々な味を取り揃えておりますよ」
「えっ!こんなにいろんな味があるの!?」
「ナードレモネにグレプ味…ミルクダケ味…すごいな」
味見してみるかと聞くと、即答で「する」だった。
「おいし〜…私はコレとコレかな?いやレモネも捨てがたい〜!」
「俺はリゴナ味だな。コレを4本くれないか」
妹さんは悩みながらも色々な味で5本、兄はリゴナ味を4本お買い上げ。
「あっ…でも入れ物どうしよう?」
「そうだな、何かいい革袋は…」
「それでしたら、お隣の革職人ダグさんの露店でいい物がございますよ」
入れ物に困っていた兄妹冒険者をダグさんの露店に誘導する。
「ようこそ、冒険者のお二方いい革袋ありますぞ」
ダグさんの露店で革袋を買った兄妹冒険者は笑顔で去っていった。
「ほっほ、景気がいいのう」
「まったくですね」
ほっくほっく顔なダグさんとお互い笑顔でお話。
商人同士は持ちつ持たれつだからね。
×
「チョコバーと薬水ミルクダケ味をちょうだい」
槍美人冒険者イリスさんが目の前に来るや注文してきた。
「ありがとうございます。おいくつですか?」
「両方10個づつね。それくらいないとすぐ無くなるから」
どうやらチョコバーと薬水ミルクダケ味がお気に入りのご様子……ならここは試作品も売りこんでみるか
「あの、実は新しいチョコバーの試作を作りまして、中にナードベリーのジャムを入れた……」
「5個ちょうだい」
こっちが言い切る前に買う意思を言われてしまった。
「チョコバーにナードベリーなんて、美味いに決まっているわ、試作じゃなくて早く製品化してね」
「…………わかりました」
製品化の催促までされてしまった。
商品を渡す。
「悪いわね。急いで注文して、これから依頼があるのよ」
「いいえ、大丈夫ですよ」
ダンジョン鎮静化させたばかりなのにもう依頼なんて、イリスさんは人気の冒険者なんだな。
イリスさんはダグさんの露店に行く
「このチョコバーを入れる特別な入れ物ないかしら?」
「おお、それでしたらこちらの小型の革鞄などはいかがかですかの?」
ダグさんがすすめたのは丁寧な作りの小型の革鞄。
「いい作りね。いただくわ」
金貨5枚を迷いなく払うイリスさん…格好いい美人さんだ。
軽く手を振り去っていったイリスさん。
「ほっほっほ、景気がいいのう」
「まったくですね」
ほっくほっくほっく顔のダグさんと満面の笑顔で会話。
そんな感じで朝の露店は過ぎていった。




