久しぶりの露店[朝]
「ダグさん、おはようございます」
いつもの中央広場のいつもの場所に革職人露店商のダグさんは露店を開いていた。
「おお、カエデさん。久しぶりだの採取の旅を無事に終えたようでなによりだのう」
相変わらずの朗らかな笑顔の人だ。
「おや、走竜を買ったのかね?」
「ええ、懐かれましたのでその縁で買いました。走竜のクロロです」
「ほっほ、そこまで深く懐かれるとは珍しいのう。よろしくのクロロ」
「クルル」
やはり珍しいのか
ダグさんと会話しながら露店の準備をする。
久しぶりとはいえ、もう慣れたのでテキパキと商品を並べていく
クロロは隣に座り欠伸をしてのんびりしている。
「今日は露店やってるのね」
「イリスさん、お久しぶりです」
2級冒険者のイリスさんが音もなく立っていた。
相変わらず綺麗な人だ。
「イリスさん、[ミルクダケ]の薬水できましたよ」
「えっ?本当に作れたの?」
本気でミルクダケから薬水が作れるとは思っていなかったのかな?
「こちらです。味見してみますか?」
「ぜひ頼むわ」
小さいコップに[ミルクダケ薬水]を入れてイリスさんに渡す。
「いただくわ……ごくっ…… ! ほのかに甘くて、なんて滑らかな…こくもあって美味しい。こんなにも濃いミルクダケの味は初めてね」
それはもう薬水一本にミルクダケ10個使っていますから
ここで[ミルクダケ薬水]に合う携帯食を紹介しよう。
「イリスさん、こちらの携帯食[チョコバー]を食べてみてください、ミルクダケに合いますよ」
「ち、ちょこばー?初めて聞く名前ね」
俺からチョコバーを受け取りまじまじと観察している。
「焦げ茶色…でも甘い香り…いただくわ…」
チョコバーを一口食べたイリスさんは表情をほころばせ
「ほろ苦く…甘い…香りもいいわ」
「ミルクダケを飲んでみてください」
[ミルクダケ]薬水を一口飲むイリスさん
「!……口の中でミルクダケとチョコバーの味が混ざり合って更に美味しくなるわ」
ミルクとチョコが合わないわけないからな。
そうだ、後でミルクチョコバーを作ってみるのもいいかも…
「両方5個づつ。それと解毒薬も1本買うわ」
「ありがとうございます」
[ミルクダケ薬水]は材料多く使うから銀貨5枚なんだけど、2級冒険者にはたいした額ではないのか。
「走竜を買ったのね」
商品を受け取りながらイリスさんはクロロを見ている。
「撫でていいかしら?」
「クロロ、いい?」
クロロに了承を取ってみる。
「クル」
「撫でてもいいみたいです」
イリスさんはクロロを撫でる。
優しい顔になっている、走竜が好きなのかな?
「またくるわ」
「お待ちしています。ありがとうございました」
満足気な顔で去っていくイリスさん
その後姿は相変わらず格好いい。
「新商品売れてよかったのう」
「はい、一安心です」
ダグさんは俺とイリスさんのやり取りを朗らかに見守るように見てくれていた。
「ダグさん、よかったらチョコバーの味見をしてもらえませんか?」
「ほ?いいのかの?」
「はい、色々な人の感想も聞きたいので」
ダグさんにチョコバーを差し出す
「カエデさんは熱心だの、なら遠慮なく………… ! これはいいの!これほどのまろやかな甘さは今まで一度も味わったことないわい」
ダグさんにもチョコバーは好評だ。
「しかし最近、騎士や冒険者達の動きが騒がしいのう」
チョコバーを美味しそうに食べながらダグさんが言う
「わかるんですか?」
「こうして座っていれば、自然とわかるのう」
さすがは熟練の露店商だ。
「何かはわからんがこういった時は決まって嫌な事が起こるからのう」
グル廃坑の事で騎士団や冒険者達が動き始めているようだ。
「ま、ワシらは変わらず商売すればいいだけだのう」
「ですね」
肝が座っていらっしゃる。
「あの、カエデさんですか?」
王都民が着るには上質な服、栗色髪ロングの20前後綺麗と可憐の間の顔立ちな女性が声をかけてきた。
「はい、私がカエデです」
「よかった。夫の言っていたとおりの姿でした」
夫?誰だ?
「私、警備隊第4隊長グレイの妻をしておりますリーシャといいます」
グレイさんの奥さんとは……若いな。
「グレイさんの奥様ですか、グレイさんにはお世話になっております」
お互いにお辞儀
「それで今日は?入り用の商品がありますか?」
「シャンプーをください!他になにか美容に良いものがありましたらください!」
なるほど…興奮しているな。シャンプーがそんなに欲しいのか?
「シャンプーをしたら夫が髪を褒めてくれるんです!だからもっと美容に気を使ったらもっと夫が褒めてくれると思うんです!」
………バカップル
「わかりました。ではこの[リンス]を使ってみてください、これを使えば更に髪がサラサラのつやつやになりますよ。こちらが説明書になります」
「サラサラのつやつや……買います!」
毎度ありです。
ならあのテスト品も売ってみるか
「この[化粧水]などもいかがでしょうか?こちらを使えばお肌がぷるぷるになりますよ」
「買います!買わせていただきます!」
即決。
説明書もお付けする。
[化粧水]は次回の新商品として数品作っていたものだ。
「これで夫に喜んでもらいますね。それではカエデさん!失礼いたします〜!」
「はい……」
こちらに手を振りながらリーシャさんは帰っていった。
「第4隊長は愛されておるのう」
「……ですね」
「クル……」
何か疲れた……。




