逃走戦
「フルミナ!急いで!追いつかれる!」
クイナは弓で迫りくる魔物の群れに牽制しつつ魔法使いのフルミナを鼓舞する。
「はぁ、はぁ…うん、が、がんばる!」
フルミナもそれに応えようとするがスタミナがついて来てくれない
「城が見えてるんだ!あともう少し!」
クイナ達の少し前にいる槍士のキーヤも励ましている。
「なんだってあんな所に魔物の群れがいんだよ!クソッ!」
更に前を走る剣士のカントが苛立ちを込めた言葉を放つ
「今そんな事考えても仕方ないでしょ!逃げることだけを考えて!」
「あ〜〜!わかってるよ!」
クイナとカントのやり取りもこんな状況では冴えがない
「! グレイウルフが来るぞ!」
中型犬サイズの灰色の狼が一匹迫ってきている。
「くっ!当たらない!逃げながらじゃ難しすぎる!」
逃げながら矢を当てるのは至難の技である。
「あっ!」
フルミナが草むらに足を取られ倒れてしまう…
「フルミナ!!」
倒れたフルミナにグレイウルフが襲いかか………ろうとして遠くまで吹き飛んでいった。
「[赤い猪]のみなさん無事ですか?」
吹き飛んだ後には
走竜に乗ったカエデが颯爽と現れていた。
「カエデさん!?どうして!?」
「今は会話より撤退ですよ」
すでに火を付けた[臭煙筒]を魔物の群れの方に投げ込む。
煙を浴びた魔物の群れの叫びが聞こえてくる。
まさか作って早々に役立つとは思わなかった。
「逃げますよ。クイナさんは走竜の後にフルミナさんは…」
俺の意図を汲み取り走竜はフルミナを咥えて後に放り投げ
「ひゃっ!」
「私の腕の中にいてくださいね」
手綱を握る両腕の間、お姫様抱っこするようにフルミナさんを抱える。
「乗りました!カエデさん!」
素早く後に乗るクイナさん
「カントくんとキーヤくんは根性で走竜の両脇にしがみついてください」
走竜が走りだす
「お、おうよ!」
「了解です!」
走りだす走竜の両脇にしがみつく少年二人。
「走竜ごめん。重いだろうけど頑張って!」
「クルルッ!!」
煙に巻かれている魔物群れを置いて
俺の期待に応えるように速度を上げていく走竜。
「あまり無理はさせられないな」
そんな独り言を言っている俺を抱っこ状態のフルミナさんはボ〜…とした表情で見上げていた。
×
「「「「カエデさん!ありがとうございます!」」」」
[赤い猪]の少年少女が一斉にお礼を言ってきた。
場所は平原地帯の中程
魔物の群れは追ってくる気配はないし、これ以上走竜に無理をさせたくないので、ここで野宿する事にした。
走竜は疲れたのか、もう寝ている。
「お礼はいいですよ。四人が無事で何よりです」
少年少女が無事ならそれでいい
「それにしてもあの魔物の群れはどうしたのですか?」
その疑問にクイナさんが答えてくれた。
「私達、お兄さんに魔導ランプを安く作ってもらう為の材料集めにグル廃坑に行ったんです」
「そうしたらさ!奥からブワッて出て来たんだよ!」
カントくんが被せるように言ってきた。
クイナさんが睨んでいるぞカントくん
「私達、必死に逃げてそれで…」
フルミナさんが震えている。
震えるのも無理はない、まさに死ぬ思いだったのだから
「でもおかしいんです…アソコはダンジョンではなく、ただの廃坑であんなにも魔物の群れがいるなんて事ないのに」
キーヤくんの疑問に答えがある気がした。
露店商のダグさんに聞いた話だが、ダンジョンは生きた洞窟だと言う
自らの中に魔物を住まわせる快適環境を提供し、魔物達はダンジョンの中で生活する。
魔物達の排泄物や残飯などを糧にして生きるのがこの世界のダンジョンらしいのだ。
「グル廃坑がダンジョン化したということですかね」
「ダンジョン化!確かにそれならあの魔物の数も納得できる!」
「うそ!なら冒険者ギルドに報告しないと!」
少年少女がわいわい話し始める。
「とりあえず、まずはこのスープを飲んで休みましょう」
俺はお手製スパイスで作ったスープを少年少女に渡していく
器はスキルでこっそり作った。
「うまっ!少しピリ辛だけどあと引く!」
「魚も美味しい!味しみてる!」
「生き返る…うまい」
「美味しいです」
うまい食事は精神を整える…灰色な商社マン時代に学んだことだ。
「コレに使ったスパイスは売ってないんですか!?」
「今のところは売り物ではないですね」
「そんな!売って欲しい!」
クイナさんとカントくんがガッカリしている。
「スパイスは高いからね」
「ですよね…でも美味しいです」
どうにか安くできる方法はないかな?
「明日は朝一番に街に戻りましょう、[赤い猪]は冒険者ギルドに報告してください」
「「「「はい!」」」」
少年少女は元気を取り戻したようだ。
明日は朝から忙しいな。




