ピリリ草と西門
「明るいうちには王都に帰れそうだな」
西門がだいぶ大きく見えるようになった。
廃坑からの帰り道
まっすぐ王都には向かわずにふらふらと採取しながら帰ってきた。
薬水の材料を更に補充、他にも新しい素材も発見。
「[ピリリ草]微弱な静電気を帯びる草か」
見た目は猫じゃらし、猫じゃらしの部分を触ると少しパチっとする。
「コレを上手く使えばいいものが作れそうなんだけどな…」
[ピリリ草]を採取しながら西門に向かっていると、ピリリ草を食べているバッタを発見した。
「[ビリッホッパー]…このバッタなら」
スキル[薬学[極]を検索したら[ビリッホッパー]の名前が出た。
[ビリッホッパー]はピリリ草を食べ、静電気を体内に溜め込み、[増幅]して身を守るらしい。
その[増幅]する特性を上手く引き出せばいい物が作れそうだ。
[ビリッホッパー]を捕まえる。少しピリッとするが気にせず次々と捕まえていく…捕まえては毒魔法で動きを止めるを繰り返す。
「うん、大量だ」
一時間ほどバッタ取りをした。
こんなにもバッタを追いかけたのは小学生の頃以来だ。
夢中になりすぎて西門への道を外れて草原の方まで来てしまっていた。
「もう王都に戻るか」
西門への道に戻ろうとしていると、4頭立ての豪奢な馬車が西門へ向かっていた。
白馬に乗った白銀の鎧を着た女性や立派な鎧を着た騎士達が馬車を警護している。
「う〜わ〜…絶対に関わりたくない人達だ」
すごい貴族、もしくは王族だろうな…
豪奢な馬車は西門で止まることなく入っていった。
「俺もさっさと王都に帰ろう」
×
西門まで戻ってきたので露店許可証で城門の小さい扉から入ろうとした時…
「おうっ!モミジじゃないか!」
声を掛けられた…今の俺はカエデ(女)の姿である。
振り向くとそこにいたのは王国警備隊第4隊長のグレイだった。
「えっ!?女性!モミジじゃないのか…すまんな人違いだった」
「兄の知り合いの方ですか?私はカエデ。モミジとは双子の妹になります」
「妹!モミジは双子だったのか!」
知らないふりして初対面だ。
「すまないな、いきなり声を掛けてモミジに魔導ライトのお礼を言いたくてな。魔導ライトのおかげで盗賊を捕まえる事ができたんだ」
「そうなんですか。それを聞けば兄も喜びます」
知らないうちに魔導ライトが盗賊逮捕に役立ってくれたようだ。
「そこでだな。あと4本ほど魔導ライトが欲しいとモミジに伝えてくれないか?」
「あと4本ですか?」
「そうっス!隊長だけ持ってるなんてずるいっス!俺達も使いたいっス!」
警備をしている調子の良さそうな兵士が会話に入ってくるが……視線が俺の胸をちらちらと見ているのがわかる。
…男としても見てしまう気持ちはわかるが
……なるほど女性はこんな気持ちなのか。
「まーこんな感じでな。この魔導ライトは警備、特に見回りで有効でな。見回りするヤツらに持たせたいんだよ」
「わかりました。兄にそう伝えます…作成したらこちらにお届けしたらいいですか?」
「おー、届けてくれるのか。ならオレがいなくてもここの西門の兵士達の誰でもいいから渡してくれたらいいからな。金もすぐに渡せる。」
現在の魔導ライトの在庫は3本。あと一本作らないとな。
「それとアレもよかった!香り石鹸に香り洗髪剤に食器用洗剤!どれも妻が喜んでくれてな!特に香り洗髪剤!髪がいい香りがして、さらっさらになったって喜んでな!」
テンションが一段上がった…相当な愛妻家だな。
「石鹸とかならありますよ。私が作ってますから」
「なに!カエデが作ったのか!売ってくれ!石鹸と香り洗髪剤を2つ!」
まいどありです。
「 朝は私が露店をしていまして、夜の露店は兄がしているんです」
「おお、そうだったのか。妻に教えておこう」
そうだ。教えてくれるかはわからないけれど、聞いてみるか…
「あの、豪奢な馬車が入って行くのが見えたのですが、誰の馬車なのですか?」
「あれは第三王女の馬車さ、外遊から返ってきたんだよ。まったく王国の剣聖を連れ出して困ったものだ」
教えてくれた…豪奢なわけだ第三王女の馬車とは、しかも口ぶりからするにわがままな性格っぽいな。それと剣聖って…
「白銀の鎧を着た女性が剣聖様ですか?」
「そうそう当代の剣聖アルマ様。でも実力的には先代のレグリウス様にはまだまだ届かないけどな」
剣聖ってだけでも実力者だろうけれど、先代はどれくらい強いのだろうか?
「年を取ったから次代に継いだが、オレは今でもレグリウス様が剣聖でいいと思うけどな」
「そうなのですね」
グレイさんは今の剣聖に少し不満があるようだ。
俺には関係のない事だけどな。
「では失礼します。魔導ライトの件は兄に話しておきますね」
「おうっ!頼むぜ!」
魔導ライト4本か…思いがけない嬉しい注文があったものだ。
俺は軽くステップしながら王都に入るのだった。




