そうだ廃坑へ行こう
「お姉さん!新しい味が増えたんだろ!」
「お兄さんに聞きました!」
午後の露店を開くとすぐに[赤い猪]の少年少女が押し寄せてきた。
「はい、リゴナ(林檎)味とナシャン(梨)味とスイケ(西瓜)味が加わりましたよ」
「ナシャン!俺はナシャンだ!あとスイケもほしい!」
「私はリゴナね。あ、ナードベリーも補充したいわ」
「僕はスイケに興味があるな。グレプも3本」
「わ、私はリゴナとナードレモネ、あと魔力飴を2つください」
薬水新味とその他のお買い上げありがとうございます。
味付き薬水は露店の看板商品になりつつあるな。
「うまっ!ナシャンうまい!」
「なんでもう飲んでんのよ!」
カントくんはもう飲んでいる。どうやら気に入ってくれたようだ。よかった。
「僕達、モミジお兄さんから素材持ってきたら魔導具を安く作ってくれるって話になったのでグル廃坑に行くんです」
「魔灰水晶もグル廃坑にあるから丁度よかったよな」
グル廃坑に魔灰水晶があるのか覚えておこう。
「そうですか兄がそんな提案を…あまり無理はしないでくださいね」
「わかりました。でもグル廃坑は9級冒険者から入れる所なので安心してください」
なるほど9級冒険者から入れるなら絶対ではないけれど安心かな。
「あ、あのカエデさん…魔灰水晶でつくおまけって何ですか?」
フルミナさんはおまけが気になるようだ。
「何かはわかりますが……それはお楽しみですね」
「で、ですよね…」
「それはそうよね」
カントくんが薬水を美味しそうに飲み干し…
「うしっ!気合い入った!行こうぜグル廃坑!」
「ああ!」
「カエデさん失礼します」
「がんばろ」
[赤い猪]少年少女はグル廃坑に向かって出発した。
「……廃坑か」
現在、冒険者に頼むほどのお金の余裕はないのがわかった…なら取りに行くしかないよな。
廃坑なら鉱石取り放題とまではいかないだろうけど端材でも俺のスキルなら活用できる。
「ダグさん、グル廃坑の他に廃坑ってありますか?」
隣で革ベルトを売り終えたダグさんに聞いてみる。
「お〜…ヘルル廃坑があるの。西の城門から出てまっすぐ一時間くらいの所にあるの」
西門から一時間か…そんなに遠くはないな。
「あそこは鉄鉱石とユラ石がよく掘り出されてたがの、あまり取れなくなって採算が合わず廃坑になっての、今では所有者すらわからなくなったらしいの」
所有者がわからないとはより好都合だ。
「ひょっとして行く気かの?カエデさん」
「はい、明日にでも行こうかと…」
思い立ったら吉日とも言うし
鉱石系の素材はいくらでもほしいのです。
「気おつけて行くんだぞい、できるなら護衛をつけるといいの」
「心配してくれてありがとうございます。ですがこれでも一人旅は慣れていますので平気です」
実際は一人旅なんて慣れてはいないけど、ダグさんを心配させたくはないからな。
あ、つるはし買っといた方がいいか…
「薬水の新しい味が増えたって聞いたんだけど…」
「いらっしゃいませイリスさん」
銀槍の女性、2級冒険者のイリスさんが音もなく立っていた。
「[赤い猪]の子達との会話が聞こえたの。あなた、お兄さんがいたのね」
「はい、自由奔放な兄ですが…こちらが新味ですよ」
イリスさんはじっと新味の薬水を見つめる。
「……悩むわね」
「味見してみます?」
「ぜひ頼むわ」
新味を一口づつ味見して、目を閉じることしばし…
「全部二本づつ買うわ」
「あ、ありがとうございます」
結局全部お買い上げ…これも味見の成果といえるのか?
「そういえばヘルル廃坑にはミルクダケという茸があるの…あれはとても甘くて滑らかな味よ」
そう言って立ち去るイリスさん。
ミルクダケを薬水にしろってことですね。




