属性魔石と冒険者ギルド
市場調査をしている最中に
よく行く魔導具店で聞いた「属性魔石を取り扱う店は貴族区にあるぞ」と
魔石は無属性。
属性魔石は属性がついた魔石で更に手に入れにくいらしい、サイズが[極小]くらいなら出回るようだがそれ以上のサイズは貴族区の魔導具店がほぼ独占しているようだ。
「貴族区にあるなら行かないの一択だな」
自ら嫌なイベントを体験しに行きたくはない。
「はぁ…」
「お姉ちゃん…どうしたの?元気ない?」
宿の朝食を食べながら溜め息をついたらベルちゃんに心配されてしまった。
「元気ですよ。ただ考えごとをしていただけですから」
「よかった〜」
俺の言葉を聞いて安心したベルちゃんは朝食を食べ始める。
「カエデさん、もしお困りごとがあるなら、お金はかかりますがギルドにでも相談したらどうかしら?」
テーブルを拭いていたベロアさんがアドバイスをくれた。
「そうですね…そうしてみます」
ギルド…冒険者ギルドか。
お金は余計にかかるけど属性魔石の依頼出してみようかな?
せめて見積もりだけでも聞いてみるか…
今日は午前中に冒険者ギルド、午後から露店で決まりだな。
×
冒険者ギルドは中央広場にある。
剣と杖が交差した紋様が刻まれた木の看板が目印。
建物は中世風の三階建てに見える。
「まずは男の姿でいってみるか」
カエデの姿では変な風に絡まれそうな気がしてならない。
木の両扉を開けると…
「…まさにラノベの世界だな」
剣に槍、杖に斧などを装備する人達は鎧にローブにマントをなびかせ歩く…ラノベでよく出るシーンそのものだった。
ただ一斉に睨んでくるとかはないようで安心だ。
「カウンターは…おお、受付嬢がいる」
カウンターに座る受付嬢にちょっと感動。
3人一定間隔で横並びに座っているけど誰でもいいのだろうか?
と考えているうちに冒険者達で2つ埋まってしまう、なので空いている受付嬢の所に向かう。
受付嬢の見た目は14か15くらいかな?亜麻色のゆるふわロングでかわいい顔立ちをしている。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。私はここを担当します受付のナナリアです。新規登録希望の方ですか?」
喜び勇んで登録するラノベはよく読むけど争い事は嫌いなので登録はしない。
「いえ、属性魔石の調達依頼の値段を知りたいのですが」
「属性魔石の調達依頼ですね。大きさはどのくらいの属性魔石でしょうか?」
大きさ…極小は探せば手に入りそうだしここは…
「属性魔石[小]を属性はどれでもかまいませんので1個の調達するとしたら依頼料はどれくらいになりますか?」
「属性魔石[小]ですと1つの市場価格平均で金貨5枚それに依頼料が金貨1枚銀貨5枚になります」
高…魔導ライト1つ分以上だ。
まぁ、冒険者も命がけで取りに行くんだから安いのかもしれないし…でも、元から持っている属性魔石を出すだけなら高い気もする。
でも貴族区に行くよりは断然マシではある。
本当は2・3個の依頼をしてみたかったけどまだまだ資金不足だ。
はぁ…これも勉強だと思って依頼してみようかな。
「えっと…では属性魔石[小]を1つでお願いします」
「ありがとございます。ではこちらにご記帳お願いします」
羽根ペンとインクと記入用紙が用意される。
記入は普通にできる。
これも異世界転生特典というやつだろうな。
記入完了っと
「モミジ様ですね。ではこちらの鋲でご依頼用紙を掲示板にお貼りください。それとこちらがお受け取り用の木札となりますので無くさないようお願いします」
入口の近くに大きい掲示板があるからあそこに貼るのか。
受け取り用の木札も無くさないようにしないとな。
「早くて1日の時もありますが大体は3日から一週間ほど待っていただけたらと思います」
なるほど、では3日くらいしたらまた来てみるか…
「あの、最後にできたらお顔の方をご拝見させていただきたいのですが…」
ついにこの時がきたか…
断る事も出来そうだけど、ここで断ると第一印象が悪くなる。
取引相手との第一印象は大切だ。
せめてこの顔がイケメンではなくフツメンであることを祈ろう。
周りの人達には見えないよう受付嬢ナナリアさんにだけ見えるように少しだけフードを上げる。
「…はぅ」
受付嬢ナナリアさんが硬直し顔がだんだんと紅く染まっていき小さく声が漏れる。
それだけでわかってしまう、モミジの顔はとてつもないイケメンなのだろうなと
商社マン時代では一度も見たことのない女性の態度に喜びというよりは戸惑うだけだ。
「ではこれからもよろしくお願いします」
「は、は、はいっ!こ、こちらこそ!よ、よろしくお願いします!」
慌てふためく受付嬢ナナリアさんを後にして掲示板に向かう。
「う〜ん、真ん中の下あたりに貼っとくか…」
掲示板にはたくさんの依頼が貼られている。
比較的空いている真ん中の下あたりに鋲で貼り付ける。
「えっ?か、カエデさん」
後ろから声をかけられる。
この声は…
「バカカントよく見なさいよ男性よ」
「い、いやでも同じ格好に見えたから…」
振り向くと8級冒険者[赤い猪]の少年少女4人組がこちらを見ていた。
確かモミジでは初対面だったよな。
「俺はモミジ。カエデは俺の双子の妹ですよ」
「えっ?」
「双子のお兄さん!?」
魔法使いのフルミナと槍士のキーヤが驚いている。
「えっと!お、オレは…!」
「ああ、妹から聞いてますよ。カントくんにクイナさん、キーヤくんにフルミナさんですよね?」
一斉に頷く4人組。
こうした方が手間が省けるからな。
「モミジさんはひょっとして冒険者なんですか?」
キーヤくんが聞いてくる。
「違いますよ。この依頼を出した所だったんです」
貼り付けた依頼を指し示すと4人組はそれを見る。
「属性魔石[小]の調達か」
「私達には少し難しいわね」
「そうだな7級から5級冒険者の依頼だ」
「でも報酬がいいね…」
属性魔石[小]は7級から5級冒険者の依頼になるのか、覚えておこう。
「妹は薬を作るのが好きだけど、俺は魔導具を作るのが好きなんですよ」
それを聞いてクイナさんが反応を示す。
「あのお兄さんもひょっとして道具師なんですか?」
「ええ、そうですよ」
少年少女の顔が顔を見合わせ驚いている。
「双子で道具師って…」
「とんでもない双子だ…」
道具師ってそこまで驚かれる職業なんだな…あまり大っぴらには言わない方がいいのかもな。
「俺は夜に露店をやっているのでもし暇ができたら見に来てくださいね」
「あはは…魔導具は欲しいけど、まだお金がありませんから」
8級冒険者はまだまだ半人前の冒険者。
7級冒険者からが一人前の冒険者と言われるようだ。
でも少しくらいは売り込んでおこうかな
「もし欲しい魔導具があったら素材を持ってきてください、少しはお安く作成できますから」
これなら素材を集める手間を省ける。
「ほ、本当ですか!な、なら魔導式ランプはどれくらいの価格になりますか?」
キーヤくんというよりは[赤い猪]は魔導式ランプがほしいみたいだな。
「本来の売り値は金貨8枚ですが、素材を持ってきてもらえたら金貨5枚になりますね」
素材の金額を引けばこれくらいかな。
「集める!素材を教えてくれ!お兄さん!」
カントくんが手を上げ購入意思を示している。
3人も頷いているな。
「こ、これに書いてもらえませんか?」
フルミナさんが紙質の低いメモ用紙と細長い木炭を渡してきた。
必要な素材を記入する。
そうだ…少しおまけ要素も書いておこうかな。
記入した紙を渡す。
「…魔石[極小]はあるわよね」
「鉱石類は取りにいかないと駄目だな」
「なら、あそこの廃坑にいこうぜ」
「うん、もともと行く予定だったし」
少年少女はメモ用紙を見て話し合っている。
こういうのは異世界の青春というのだろうか…
「あの、このおまけ素材とはなんですか?」
「それは手に入れても手に入れなくてもいい素材ですよ。でも手に入れたら少しだけ魔導式ランプに仕掛けをつけようかと」
RPG世界をリアルに生きる少年少女達にはこういったゲームのクエスト要素を付けてあげてもいいだろう。
「ま、マジ!?仕掛け!?」
「魔灰水晶…わからないな。クイナわかる?」
「知らないわ…初めて聞く」
「なら大図書館で調べてみたらいいのかな?」
「それだ!」といいながら4人組が大図書館に向かおうとする。
おっとあと一つ忘れていた。
「そうそう、妹が新しい味の薬水を作ったみたいですよ。午後から露店するみたいなのでよかったら見に来てくださいね」
「大図書館に行ったあとに絶対行きます!」
よし宣伝できた。




