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闇のレイン

レインVSファルグカス。魔法使いのプライド、技術、能力、そしてsomething。 ジュリアの身に危険が迫っていた…。

 レインは山紙埠頭に着いたが、埠頭の僅か100メートルほど先で、大掛かりな何かの撮影をしていることに気付いた。


 明かりか煌々と灯っているので、盆踊り、風の盆、などのお祭り会場を思わせるざわめきが感じられた。

 レインは微かに聞こえる話し声を聞きながら、考えていた。


 中岡を含めた子分7人は川口のマンションの下の道路に全裸で並んで横たわって動けないでいた。


 レインは、パトカーや救急車、消防車までもが川口のマンション下の道路に並んで渋滞しているのが、意識のビジョンを飛ばす魔法を使い状況を見ていた。


 『所詮は下っ派の連中。命を奪う事ほどの悪行はしていないが、外にいたら、同じことを繰り返すだけの奴等だと分かっている。


 悪を続けるだけのオツムしかないのだから、正直、生きる価値も無い輩だ。今後は2度と、悪が出来ないように、病院か牢獄で永遠に隔離されることだろう』とレインは川口の手下どもの今後の予測を考えた。


 『川口は、犯罪や樹里愛(ジュリア)にしたことの首謀者なので、狭山と同様、消えてもらった。ただし、狭山の肉体は消滅したが、川口は魔法で暗闇だけの時空の狭間に、身の丈に合った「ラギェルハックコン」という硬い物質で作られた棺に閉じ込めた。

(「ラギェルハックコン」は魔法界で1番硬い物質のこと)

 誰の助けも届かない場所で川口は命が尽きても叫び続けるだろう』とレインは考えて【悪の首謀者だけには、問答無用の結果を優先して与える事にする】という務めのポリシーを、改めて再確認をした。


 川口の隠し金庫にあった9000万円は警察に知らせる。狭山に使い込まれた60万円の樹里愛の手術費用はそこから捻出しない。


 レインは第3倉庫のある場所まで瞬間移動をした。


 レインは赤茶色の古びた倉庫の前に立って倉庫に手を当てた。中から温もりに似た空気が漏れ出ていた。

 レインは目を見開くと、樹里愛(ジュリア)の悲痛な心の叫びが聞こえた。


 ファルグカスはレインのライバルではない。ファルグカスは、それなりに力はあるし、魔法の技術のレベルも高いものがある。


 ファルグカスはレインに対して必要以上に対抗意識や、一方的なライバル心や敵意を剥き出すだけの存在とレインは捉えていたが、今は『油断できる相手ではないし、決して侮ってはならない』と思っていた。


 レインはテレビに映ったファルグカスが、以前よりも体が一回り大きくなっていたのが気になった。


 樹里愛の魔法の方が、ファルグカスよりも数段上のはずだった。

 樹里愛は腰が悪く、手術を3日後に控えていた。

 魔法の能力も練習不足だったのだろう。ベストな状態の樹里愛なら、かなりの魔法の能力が出せるので、ファルグカスと渡り合えるか、それ以上の結果が十分にあるはずだ。


 レインはファルグカスが艶夢(あでむ)市にいることも気になっていた。


 『曇り空が3週間も続いていたり、妙な胸騒ぎや、湿った重苦しい空気、何百羽の鳥が、毎日、北へ移動する異変を目撃していた。 魔法界の争いや抗争、侵略的な何かが次元の裂け目から影響を及ぼしているのかもしれない。まだ何が原因か、はっきりと分からない』とレインは思った。


 レインは深呼吸をしてから倉庫の扉を開けた。


 レインに気づいたファルグカスは樹里愛の横に立っていた。


 目隠しをされた樹里愛は気配を感じて顔を上げた。


 「ウーウー」と樹里愛は体を左右に動かしながらうめき声を出していた。


 「樹里愛、遅くなってすまないな。兄ちゃんが来たから大丈夫だぞ」とレインは樹里愛を安心させるために明るい声で話し掛けた。

 樹里愛は顔を歪ませて、安堵の涙を一筋流した。


 「レイン、久しぶりだ。長い髪だな。ちゃんと、洗っているのか?」とファルグカスは小バカにしたように言った。


 「樹里愛、今から兄ちゃん、ちょっと、5を数えるからな」とレインはファルグカスを完全に無視した。


 「レイン、随分な態度をしてくれるじゃないか。3年ぶりの再会だろう?」とファルグカスは面白くなさそうに言った。


 「いいか、いくぞ」とレインは言ってから素早く、 『怪我すると困るから体に力を入れて踏ん張れよ』と樹里愛にテレパシーを送った。脳内ダイブに近いテレパシーだった。

 ファルグカスには読み取れない範囲で送ったダイレクトなテレパシーだった。

 樹里愛は微かに顎を下げてレインのテレパシーに答えた。


 「5」とレインは手のひらを地面に向けて大声て叫んだ。


 縄で縛られて椅子に座る樹里愛が、一直線にレインの元に飛んできた。

 てっきり、5からカウントダウンをすると思ったファルグカスは、慌てて腕を伸ばし、樹里愛の腕を掴もうとしたが空を切り、寸でのところで取り逃がしてしまった。


 「もう大丈夫だ」とレインは言ってジュリアの目隠し、猿ぐつわ、縄を取り、椅子に座らせた。


 「お兄ちゃん、アイツをブチのめしてね」とジュリアは泣きながら言った。


 「腰は? 大丈夫か?」とレインは屈み込んで、ジュリアの腰の様子を見ながら聞いた。


 「痛いよ」とジュリアは腰に手を当てた。


 「ジュリア、倉庫の外にいるか、自分の部屋に戻ってもいいぞ」とレインはジュリアに瞬間移動をするように促して言った。


 「腰が痛いから無理みたい。お兄ちゃんに何かあると困るから、椅子に座ったまま、お兄ちゃんをサポートするわ。防御の魔法なら座ってでも出来るし」とジュリアは怒りに溢れた目でファルグカスを睨んだ。


 「分かった。無理は禁物だからな。すぐ片付ける」


 レインはファルグカスをを鼻で笑った後に右手を握り締めて自分の胸元に置いた。

 右手が赤い炎に包まれていく。レインはそのまま地面から5センチほど浮かび上がると瞬きよりも速く、姿を消した。


 ジュリアは腰を擦りながら勝ち誇った顔をしてファルグカスを見ていた。


 ファルグカスは視線を宙に漂わせた。

 腰を深く落として、両腕を自分の胸元に置くとクロスにして重ね合わせた。


 「食らえ!ブガディム」とファルグカスは腕から勢いよくオレンジ色の波動を空中に出し撒き散らした。


 『ブガディム』は波動エネルギー砲の1種で、極めて高い殺傷力がある。波動を打つ前には、腕の防護シールドを貼らなければならない。


 ブガディムは飛距離が短いのが欠点だが、至近距離には効果が大きい優れた魔法だ。レインがファルグカスの側にいるなら効果覿面と言える。


 ファルグカスはブガディムで自分の周辺を撃ちまくっていたが当たったような手応えはなかった。


 「クソッ、一体、何処にいるんだ?」とファルグカスはブガディムを止めて宙を睨んでいた。


 「相変わらずヘタだな。ブガディムは、ほぼ初歩的な魔法と一緒で、基本形態と同じなんだ。ブガディムが出来ないとなれば、魔法使いとして全く話にならないね」とレインの深い声が倉庫に響き渡った。


 「レイン、逃げるなよ。隠れてないで早く姿を見せやがれ!」とファルグカスは煽るように叫んだ。


 「食らえ!」と闇の底からレインの声が聞こえた。


 身構えたファルグカスは防御の体勢を取った。


 風を切る音がした。ファルグカスの後頭部に波動砲が当たり、前のめりに倒れ込んだ。ファルグカスは後頭部を押さえて、苦痛に悶えていた。


 「おい、どうした?分かりやすく風の音を聞かせたのに」と姿を見せないレインは拍手をすると、嘲って笑った。


 「クソッ…」ファルグカスは倉庫の暗めの電灯が憎たらしくなった。朧気に見える天井の高さが把握できないという事は、空間を掴めていないに等しいのだ。『せめてレインを至近距離に引き寄せたい』とファルグカスは考えていた。


 「なるほど。至近距離を狙っているのか。相変わらず馬鹿なんだな」とレインの声が、上から、左から、右から、下から、聞こえてきた。


 戸惑ったファルグカスはジュリアに視線を移し焦点を絞った。




――――――――――――




 三杉慎二は椅子に座って台本を睨んでいた。

 1ページに及ぶ長い台詞の練習をしていた。


 監督に気に入られた慎二は『台詞をやるから覚えとくように。頼むぞ』と打ち合わせで、急遽、監督と脚本家に言われて、台詞を言う事になった。慎二は喜びよりもプレッシャーで体がひしゃげそうだった。


 時刻は夜の9時。『今晩も撮影が長引きそうだ』と思った慎二はスタッフから頂いた熱いコーヒーを飲んで気合いを入れ直した。


 先程から撮影が一時止められた状態が続いていた。 監督と照明係とカメラマンが25分近くも熱心に話し込んでいた。


 「やっぱり右からの斜光が足りないから、ライトをもう1つ追加してくれ」と監督は照明係に伝えた。


 「あとカメラだけど、左の斜め後ろから来るんじゃなくて、あえて俳優の真後ろから迫っていくようにして撮れ。ライトを1つ足せばライディングが丁度良い感じになるから。分かったな」と監督は自分で描いたクロッキー・デッサンを見せながらカメラマンにイメージの説明をした。


 「なるほどなぁ。さすが監督です。光が弱くて迷っていたんですよ」


 「さっきのだと逆光になるから立体感が出ない。照明を右から柔らかく当ててくれよ」と監督は照明係とカメラマンに伝えた。


 「はい、分かりました」とカメラマンと照明係は良い返事をしてから自分の持ち場に戻っていった。


 照明係は撮影機材が置いてあるトレーラーまで全力で走っていった。


 慎二は撮影風景が大好きだった。たくさんのスタッフ(150人)に囲まれている幸せは何物にも代えがたかった。


 撮影期間が長いとスタッフや俳優同士の絆が強まり家族同然のような関係になってくるのだ。


 慎二は俳優としての第一歩を踏み出したばかりで、自分の限界を突き破る覚悟で初めての映画撮影に挑んでいた。


 「監督、山本文香さんが『コンタクトレンズを楽屋で落としたので、もう少しだけ待ってください。すみません』と謝って言っていました。まだ探しているみたいです」と若いアシスタントの男が監督の傍に来て言った。


 「またかよ! これで3度目だぞ! ソフトのコンタクトレンズにしろよ、と伝えろよ。まったく」と監督は地面を蹴った後に、帽子を取って髪を掻いた。


 山本文香(ふみか)は、25歳の若手実力ナンバー1の人気女優だった。

 美人で誰からも好かれる憎めない女性だった。


 『文香さんが来るまで、イメージ・トレーニングをしていよう』と慎二が思った時だった。



 倉庫の屋根が爆音と共に吹き飛ぶと、火柱が20メートル程の高さまで上がった。地鳴りが響き渡り、空気が震えていた。


 地震のような揺れがしていた。揺れは2分近くまで続いたように感じた。


 揺れが収まると再び倉庫から爆音が響いてきた。

 熱風が撮影現場にまで届いてきた。





つづく


ありがとうございました♪テンポ良く、リズムに乗って書いていきます!続きも楽しみにしていてね!宜しくお願い致します♪


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