21
ひとしきりじゃれあいが終了して現状の確認に入った、というか議題は一つしかないのだが。
「で、黄龍様の居場所は?というか結局犯人って誰なの?」
「封印されたせいで黄龍の詳しい位置はわからないけれど・・・・・・犯人は確定しているわ」
緑龍様がイツキとヒノミヤを見ながら詳細を語りだす。先に聞いていたのか二人は口を挟むことなく、しかし常にうつむいたままだった。まあ決別した――ヒノミヤもなのだろうか?――相手とはいえ知り合いがこんな大罪を犯すなんてショックだろう。
「うーん、まあ予想通りといえばそれまでだけど彼らは自分たちが何をしているのか本当に理解しているのかな?」
「してない・・・・・・と思いたいな」
「うん、みんなわかってないだけ、説明したらきちんと理解してこんなことやめてくれるはずだって思いたい。だって勇者になるんだって、世界を救うんだって、そのために動いていたはずなんだもん」
「その過程で同族殺しが発生する意味が分からないけど・・・・・・彼らの殺生権は神龍様次第だから殺したくないなら頑張って説得してね?特に赤龍様と青龍様ってそっち方面過激だから」
「『異世界人』は殺さない方向じゃないのか?俺たちが助けられたのってそういう理由だろう?」
「『異世界人が死ぬことでできる穴』と『マナの根源』、優先がどちらかなんて比べるまでもない話よ。『穴』は塞げるけど『根源』に代わりはいないもの」
というか根源が消えると穴の修復もできなくなるし。世界樹の負担どころの話じゃなくなるんだよね。これ早く解放しないとガチで神様出張ってくるんじゃないかな?・・・・・・伝え聞く神様の性格考えるとあれだね、ボロボロな世界をいちいち修復するより全部ぶっ壊して作り直すって選択しそうで怖いんだよね。その場合残るのはエネルギー源として作られた神龍様方だけかな?
「ウルイはしばらくこの村で静養するとして・・・・・・俺と火宮はあいつらを探しに行くつもりだ」
「町に行けば何かしら情報があると思うんだよね、仮にも『勇者』だし」
「私や白龍・・・・・・というか神龍は全員はしばらく眠りにつくわ。現身本体は黄龍がいないせいでバランスが崩れてマナのコントロールがきまないし」
「分身は残しておくので問題なかろう。本体はマナの結晶状となりそれぞれの契約者か眷属が管理すればよいじゃろう。ということでハウよ、わしの本体の管理は任せるぞ?」
「イツキもよろしくね」
ちなみに赤龍様はコントロールがうまくいかないヒノミヤではなく眷属の不死鳥が管理するらしい。ただヒノミヤはもともと不死鳥の加護を持っているからその辺のつながりを利用してうんたらかんたら言ってた。べ、別に理解できなくなったわけじゃないよ?話が長くて面倒なだけなんだからね!
「ちなみに青龍と黒龍からこんなものが届いておる」
そういって差し出されたのはマナの結晶でした。・・・・・・って本体じゃん!?
「黒龍の契約相手は幻想界の住人でこっちにいないし、青龍の眷属は争いには向かないからさっさとこっちに避難するってさ」
本体である青龍様がいる間、住処である海はあれに荒れて大変だったとか。眷属の魚人(人魚ではない、これ大事)が何頭も犠牲になってしまって青龍様は本格的に引きこもってしまったようだ。身内には本当に優しい方だからなぁ。
イツキがメンで編んでくれた紐に結晶を取り付けて首に掛ける、キラキラしていて目立つかも?
「大丈夫だ、毛皮で隠れて一切見えない」
自分も服の下に緑龍さなの結晶を隠したイツキが保証してくれた。隠し場所について分体の緑龍様と何やらひと騒動あったようだが僕は何も知らない。知らないったら知らない。ヒノミヤが私も彼氏とかほしいかもなんてつぶやいていたけど一切関係ないから。
「ウルイちゃんは私の養子なんだから関係なくはないのよ?まだまだお義父さんが必要でしょう?」
「ボクマダコドモダカラヨクワカンナイ」
「言葉が片言だよ!?」
うるさいよヒノミヤ。




