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地底に存在する世界    作者: 風鳥 紀乃
地底世界
19/23

学校

「あっ、カワン!」


 サジェスがカワンの名前を言ったとたんに、アンヌは頭を下げた。


「おはよう、サジェス。そしてそちらは……、頭を上げてください。ここでは、ただの生徒です。しかし、あなたは……もしやアンヌ様で間違いないだろうか」


 アンヌが顔をあげたとたん、今度はカワンが頭を下げる。


「あってるのじゃ」


 苦々しげに、アンヌが言うが、なんだろう。そういえば、アンヌって何者だろう?


「西方ラフェイ王国の姫君と知らず、失礼いたしました、アンヌ様。お噂は常々、本国の姫君より聞いております。私は、カワンと申します。以後お見知りおきを」


 姫君!? アンヌが!? 


「どんな噂か気になるところじゃが……カワン殿。そんな堅苦しいのはなしじゃ。学校ではみんな対等なのじゃ。わしのこともアンヌと呼ぶのじゃ」

「アンヌ、では私のこともカワンとお呼びください」

「わかったのじゃ」


 二人の緊張した雰囲気がフッと緩んだ。

 そして、二人は話ながら中央柱へ歩き始める。やばい、置いていかれる。


「しかし、マーメイド寮でサジェスと仲良くなっているなんて、驚きました」

「たまたまじゃ。わしが寝てたら、入ってきたのじゃ。それに、カワン、敬語はやめるのじゃ」


 しばらく考えた後、カワンは目を伏せていった。


「分かりました」

「分かりました。じゃなくて、違う言い方があるじゃろう?」

「分かった」

「ふむ、それでよいのじゃ」


 敬語ではなくなり、満足したようでアンヌはスタスタと歩き始める。


「おい、サジェス、アン、ヌ? ってどんなこだ?」


 前にいるアンヌに聞こえないよう、カワンが小声で聞いてきた。


「ん? 優しい子だよ。いろいろ教えてくれたんだ」

「ふーん。そうなんだぁ」


 一応、小声で話しているが、全部聞こえている気がする。後ろを一度も確かめず歩いていくし、耳も赤くなっているのが見える。それに、上機嫌に、鼻歌を歌い始めた。どこの国の物か分からないけど不思議なメロディーだ。


「ねぇ、アンヌ、その曲何の歌?」


 サジェスは、アンヌの横に入り込む。もう、カワンの話は終わったようだから、アンヌと三人で話したい。


「ふむ、これはの、友情を歌う歌なのじゃ。カワンは知っておるじゃろう?」

「うん。けど、歌詞までしっかり覚えてないかな」

「なら、今度教えるのじゃ」

「あ、ああ」


 二人が仲良くなれたようでなによりだ。


「もちろん、サジェスにも教えるのじゃ」

「えっ、いいの?」

「うむ。もちろんじゃ」


 いつ教えてくれるのだろうか? 今から楽しみだ。


「やっぱり、ここって大きいね」

「当り前だよ。中央柱は木の上まで続いているからね」


 話しているうちに、中央柱にたどり着いた。昨日は、校長室に行ったが今日は、そのまま教室に行くらしい。

 アンヌと一緒に、一年生の教室に向かう。


「では、またなのじゃ」

「ああ、また後でな。授業が終わった後に会おう」

「うん。じゃあ」


 一、二年生の教室は一階にある。カワンは、最上級生の十年生なので、五階に教室があるらしい。

 校舎に入り、左に曲がるとすぐが、一年生の教室だった。


「あ、あのサジェス、先に入って欲しいのじゃ……」


教室に着くと、アンヌに背中を押された。


「え__?」


 まだ、心の準備ができていないのに……。

 気が付いたら、パタンとドアが開き二人は中に入っていた。


「ちょっと、ア__」


 アンヌに文句を言おうとした途端、懐かしの学校の雰囲気に包まれる。アンヌは目に不安の色合いを漂わせ、サジェスの後ろからそっと覗いていた。


「あら、お久しぶりね。アンヌさん。そして……新しい生徒のサジェスさんよね」

「は、はい」


 教室でみんなの前に立っている人が言ったとたん、私語が消えた。この人がきっと先生なのだろう。


「今日からよろしくね」

「は、はい。よ、よろしくお願いします」

「座っていいわよ」

「は、はい」


 座ってもいいって、どこに座ればいいのだろう。アンヌはどこに座るのだろうか。


「ねぇ、アンヌ……」


 横を見ると、アンヌはすでにいない。空いているところに座っていた。サジェスの方を見て手招きしている。そして椅子を指す。

 サジェスは、アンヌのとなりに腰を下ろした。


「今日は久しぶりに、一年生全員揃うことができました! 今日も一日頑張っていきましょう! で、皆が気になっていると思うけど、新入生がいます!」


 周りの人からの目線を感じる。そんなに見ないで欲しい! もう教室に入ったときに見たでしょ。お願いだから、前見てて……。


「自己紹介をしてもらいましょう。サジェスさんお願いします」


 え……。自己紹介……? なに言えばいいの? てか、やりたくない。


「名前、出身とかなんでも好きなことを言えばいいのじゃ」


 アンヌが小声でいってくれたけど、自己紹介自体が苦手だ。


「大丈夫なのじゃ。頑張るのじゃ」

「サジェスさん、ちょっと前に来てくれる?」


 聞かれたら、断れない。


「は、はい」


 アンヌは、ポンと背中を押してくれた。


 前に出ると、クラスの人数が思ったより少ないことが分かった。これなら、頑張れる。高校のクラスの人数より少ない。

 担任の先生が頷くのを見て、サジェスは口を開いた。


「は、始めまして。ティエラから来ました、サジェスです。しゅ、趣味は、読書です。よ、よろしくお願いします」


 頭を下げると、場がざわめいた。「ティエラだって?」「ほんとかな?」と、言う声が聞こえてくる。


「はーい、注目! サジェスさんは事情があって、この世界で学ぶことになりました。分からないこともあると思うので、その時は教えてあげて下さい」


 先生が話している間、アンヌと目が合い笑い合った。


「サジェスさん、ありがとう。もう席に戻ってもいいですよ」

「は、はい」


 クラスメイトの視線から逃れたく、急ぎ足で席に戻る。


 チャイムがなると、教室移動らしい。バタバタとして教室を出ていく。サジェスのことを見ている人もいたが、話しかけては来なかった。様子を見ているいる感じだ。


「サジェス、行くのじゃ。遅れるのじゃ」

「う、うん」


 アンヌはいつも誰と一緒にいるのだろう? ずっとサジェス解いて平気なのか?

 アンヌはいつ出してきたのか、手に教科書と、筆記用具を抱えていた。


「どこに行くの?」

「ついてくるのじゃ。荷物は休み時間にロッカーにいれるのじゃ。とりあえず今は急ぐのじゃ」

「うん」


 アンヌは、教室を出て廊下を進む。

 着いたのは、日が入らない暗い教室だった。中央柱に入ってすぐにあったドアのところだ。二人でひとつの机を使うようになっている。


「今から始まるのは薬学の授業なのじゃ」

「やくがく?」


 薬の種類を学ぶのだろうか。


「教科書を開いて見るのじゃ。あぁ、そうじゃったな。教科書はこのビンの絵の教科書じゃ」


 席につくと、リュックから小さい教科書を出す。ビンの絵が描いてあるのは一つしかない。


「ちょっと借りるのじゃ。小さくしてたの忘れてたのじゃ」


 スッと、手から教科書がなくなりアンヌの手に収まる。


「ん」


 アンヌが手を触れたとたん、赤く光、もとのサイズに戻った。

 何度見ても魔法はすごい! 


「ハイなのじゃ」

「ありがとう」


 教科書を開くと、薬学は作るのが主らしいことが分かった。面白そうだ。

 教科書、筆記用具を出して準備は完了! あとは先生を待つのみ。


「おや、新しい生徒がいますねー」

「えっ!」


 突然、声が響き草の臭いが強くなる。

 声はするのに人の姿は見えない。それも声は頭の中に響いてくる。


「サジェス、どうしたんじゃ?」

「あ、声が……」

「声?」


 どうやら、サジェス以外の人には聞こえていないらしい。


「ここですよ、ここ机の上」

「えっ、えっ、カエル!?」


 可愛い! 背中に星の模様がある。手で持ち上げると、ゲコゲコ鳴く。

 頭には「む、なぜ逃げないのです? ティエラの女の子は悲鳴をあげて逃げると本で読んだのですが……」と、カエルの声が響く。


「先生、何しとるのじゃ?」


 アンヌの声が横から聞こえた。

間が空いてすみません。最近忙しくて……。


次は、授業に入ります!

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