学校へ向けて
さて、お風呂だ。
「どうやってお湯、入れるのかな」
とりあえずお風呂場へ。やはり、蛇口はない。シャワーや湯船はあるのに。あっ、けど、シャワーには、ホースの部分がなかった。どこから、お湯が流れてくるのか。よく見てみようとしたとたん。
「うわわぁぁー」
いきなり出てきたお湯に服が濡れる。
「あーあ、びしょびしょ」
シャワーに触ったとたん、赤い光が浮かびお湯が出てきた。
これ、シャワーを持てば湯船にも、お湯を入れられるんじゃない?
「よし!」
すぐ外にあるタオルで軽く足を拭いて、洋服を取りに行く。靴はもう履かなくてもいいや。部屋のなかきれいだし。
洋服と下着をつかむと、お風呂場へ戻った。
「ふぅー」
お風呂に入れてよかった。
ココアを飲んで一服する。
温かいお湯は疲れた体を癒してくれ、温めてくれた。さすが、マーメイド寮のお風呂だ。入っていると塩の香りが漂い、海にいる気分になれた。
ただ、お湯を入れるのに、ずっとシャワーを持っていなくてはならないことは大変だったが。
「あー。美味しい」
ココアは注文するとすぐに、転移されてきた。
お風呂上がりだから、冷たいやつだ。濃さもサジェス好みでとても美味しい。
あっという間にそこが見え、コップからなくなった。
「ごちそうさまでした」
コップを下げベッドに座り、読書タイム。やっぱり、本を読むと落ち着く。
カワンが持って来た本の読み返し。もう一度読めば、もっとこの世界を知れるかも知れない。一度じゃ分からないところもいくつかあった。
学校へ行けば図書室があるだろう。本が、この世界のいろんな本が読める。楽しみだ。
「ふぁーあ」
眠くなってきた。髪ももう乾いてきたし、もう寝ようかな。
「あっ、目覚ましセットしなきゃ」
確か時計は机の上にあったはず。
「あったあった」
机の上にしっかり載っていた。森のモチーフのそれは、サジェスの冒険の証だ。明日は学校にこれを着けていこう。
「__ん?」
青の紙が見える。
「あっ!!」
寮の説明書、読むの忘れてた! 今から読むか。いや、寝よう。明日の朝に読めばいいだろう。
「目覚ましは、確かこうして、こうで……」
裏のボタンを押すと十二のところに針が集まる。そこからネジを回してならしたい時刻にセットするのだ。
「これでいいよね?」
裏のボタンを放すと、時計は現在の時刻を示した。
「多分、これで大丈夫なはず」
サジェスは時計をベッドの近くにある椅子の上におく。これで、朝に鳴ったらすぐ音を止められる。
「じゃあ、寝よう」
電気を消して、目を瞑った。
トゥルッ、トゥー。トゥルッ、トゥー。
ん? 鳥の鳴き声?
サジェスが目を開けると、朝日が窓から注いでいた。
「ふぁー。もう朝か」
トゥルッ、トゥー。
「ん? 鳥どこ?」
鳥の鳴き声がするのに、鳥が見えない。
鳴き声は、椅子の上からする。
時計だ。鳥の鳴き声は、時計から聞こえてくる。目覚まし時計の音が、鳥の鳴き声だったのだ。
「あ……」
後ろのボタンを押して、音を止める。
今日は、学校だ。授業だ!
時計を手首に押し付けるようにして、身につける。ずっとリュックに入っていたから、着けるのは久しぶりだ。手首に吹き付ける風が気持ちいい。
立ち上がり、まずは朝ごはん。やっぱり、白ご飯に卵をかけて食べたい。あと、お味噌汁。
「メニューにあるかな」
こんなに分厚い本である。卵かけご飯とお味噌汁ぐらい、載っていそうだ。
「な、ない」
そうだ、和食は載ってなかったんだ。白いご飯は載っている。ステーキなどと一緒に食べれるように。けどお味噌汁と醤油は無さそうだ。
「そうだ! 塩とゴマならあるんじゃない? 洋食でも使う調味料だし。そしたら、ごま塩ご飯ができるよ」
ごま塩ご飯なら、和食と言っても過言じゃない。和食だ。
メニューを捲っていると、調味料という欄が出てきた。
「あっ、塩もゴマも書いてある」
書いてあるなら、朝ごはんは決定だ。あとは飲み物も欲しい。おっ、野菜ジュースがある。これでいっか。
「えっと、ボタンを押して……」
これで欲しいものを言えばいいんだよね。
「白ご飯、塩とゴマ、あと野菜ジュースを一つ」
チャリーン。
音がなって、ランプがついたのもつかの間。すぐに台が青く光、ご飯とジュースが現れた。
「え、もう……」
いくら簡単だと言っても早かった。
塩とゴマは、小さい小皿に盛ってあった。自分で混ぜてご飯にかければいいらしい。ゴマの方の小皿に塩を少し入れ、混ぜる。
「これでいいかな」
できたごま塩を一摘まみ。パラパラとご飯にかけた。
「うん。美味しい」
懐かしの味。無性にティエラに帰りたくなる。しかし帰れないものは仕方がない。今はこれで我慢しよう。
朝食が終わりしばらくすると、アンヌとの待ち合わせの時間になった。
「学校でしょ。持ち物ってなんだろう? リュックは持ってくけど、中に何を入れよう?」
筆記用具はいる。ノートも一応入れていけばいいだろうか?
トン、トン
「サジェス。行くのじゃ。支度はどうじゃ?」
アンヌが迎えに来てしまった。ああ、昨日の夜のうちに支度しておけばよかった。
「ま、まってて。今行く!」
とりあえず、筆記用具とノートだけでいいか。
机にあるのをパッとリュックに入れる。
「あっ」
青い紙がめくれる。寮の説明書だ。読むのすっかり忘れていた。まあ、けど、大丈夫だろう。アンヌもいるし、分からないことがあったら、聞けばいい。
「サジェス?」
「う、うん」
アンヌの声に、急いでドアを開けた。
「遅いのじゃ」
「ご、ごめんなさい」
ドアを開けると、アンヌが仁王立ちでたっていた。
アンヌは遅いって言うけど、ティエラの時よりは早い気がする。家じゃなくて部屋だから、走るほど広くないし……。
「じゃあ、行くのじゃ」
「うん」
人はあまりいない。もう、学校に行ったのだろうか?
「イエーイ! サジェス、アンヌ、おはよー!」
下に着いたとたんに聞こえたのは、ハイテンションの声。ミュリアだ。朝からよく、そんなテンションでいられると思う。
「おはようございます。寮母さん」
「お、おはようございます」
「うん! おはよー! サジェス、今日から授業だね! はい! これ、教科書だよ! 」
ドンと腕に重さがかかる。カウンターの裏に置いてあったみたいだ。それにしても細くて小さな体のミュリアがよく、この重い教科書を持ち上げたと思う。それも軽々と。
「あ、ありがとうございます」
やっぱり、寮母さんだと思うと緊張してしまう。
「授業の時間割なんだけど、クラスごとに受けるの。私が説明するつもりだったんだけど……アンヌ! サジェスに色々教えてあげてね!」
「な、なんでわしが!」
そんなに拒絶することはないと思う。少し傷ついた。もしかして、嫌われてしまったか。
「だって、教えてあげれるでしょ? 同じクラスだし!」
「それは、そうじゃが……」
アンヌの顔が下がる。
「それに、もう友達になったんでしょ!? 私が説明するより聞きやすいと思うし。よろしくね! アンヌ!」
アンヌの顔が、真っ赤になっていく。そして、目は世話しなく動き出す。
「ともだち……」
アンヌの顔がサジェスの方を向いて、パチリと目が合う。
「……あぁ! わかったのじゃ! 教えるのじゃ!」
どうやら、アンヌに嫌われたのではなく、ただ単に照れていただけらしい。
「ありがとーアンヌ! サジェスも話、しっかり聞くんですよ!」
「は、はい」
こうやって話す所を見ると、寮母さんだと実感させられる。見た目と違い、しっかりしているようだ。
「サジェス、学校楽しんでね! アンヌもしっかり学んでくるんだよ!」
「はい」
アンヌは、ミュリアをうっとおしそうに見ると、ドアへ歩き始める。
「行くのじゃ。サジェス」
「うん」
動くと、教科書の重たさが染みる。リュックには入らないから手持ちだ。
「教科書って全部学校に持ってくの?」
今日使う分以外は部屋に置いておいてはダメだろうか。
「あっ、そうじゃったの。学校に行けば、ロッカーがあるのじゃ。だから持って行った方があと後楽なのじゃ」
二人は、話しながら寮を出る。
「うむ。そうじゃ! ちょいと止まるのじゃ」
サジェスが止まると、アンヌの手から赤い光が出てきた。光はサジェスの教科書を包み込む。まず大きさが小さくなる。一冊が、手のひらくらいの大きさだ。次に重さが軽くなる。腕にかかっていたものが、ふっと軽くなった。
アンヌは、ふうと息を吐き赤い光は消えていった。
「これでいいのじゃ。リュックにも入るじゃろ?」
「うん。ありがとう」
「べつに、お礼はいいのじゃ」
サジェスが教科書を全部リュックに入れるのを待って、二人で歩き始める。
少し歩くと、前から少年が歩いて来た。
まっすぐに少女達に近づいてくる。
「サジェス? おはよう。迎えに行こうとしたけど要らないみたいだね」
少年は、カワンだ。サジェスを迎えに来てくれたのだ。
また学校まで行かなかった……。
次こそ行って授業を受けます!




