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地底に存在する世界    作者: 風鳥 紀乃
地底世界
17/23

部屋の中

 しばらくすると授業に行っていた生徒たちが戻ってきた。


「午後の授業が終わったみたいなのじゃ」

「うん」


 その頃にはサジェスも普通に話せるようになっていた。


「明日は、七時半にここ集合じゃ」

「わかった」

「今日はもう寝る。くたくたなのじゃ」


 今は夕方。寝るにはまだ早いと思うが、アンヌはとても疲れているように見える。


「あっ」


 立ち上がるとアンヌは少しふらついていた。


「大丈夫?」

「ああ、大丈夫じゃ」


 アンヌの部屋は、珊瑚の扉。無事たどり着き、ドアはバタンと閉められた。


「どうしよう……」


 このあと、どうしよう……。

 一人でここにいて、誰かに話しかけるか? いや、そんな勇気ない。

話しかけてくれるまで待つ? どれくらい一人でいれば話しかけてくれるだろうか。そもそも、ここに見たことがない子がいることに気づいてくれるだろうか。


「よし」


部屋に戻ろう。みんなグループで話しているみたいだし……。


「荷物、全然ないけど、整理とかしておこうかな」


 立ち上がり、亀のドアへ急ぐ。変な人だと思われるのは嫌だから、できるだけ他の人を見ないようにして。


「金色のところにさして、回すっと」


 小さく呟きながらドアを開ける。


「よし! 完璧」


 スッとなかに入る。


「ふぅ」


 鍵を閉めた。もう自分だけだ。

 ドアを閉める直前、顔を上げるとばっとみんなに顔を逸らされた。

 やっぱり、この世界でもぼっちになるはずだったのかな。アンヌがいてくれてよかった。


「うわっ」


 あぶない! 入り口近くにある銀色の台にぶつかりそうになった。何だろうこれ? 鞄置き場かな? とにかく邪魔だ。確か、アンヌの部屋にもあった気がする。

 この部屋の窓は二つ。外から見ると亀に見えるのだろう。甲羅の模様がついている。

 窓から外を見ると、多くの生徒が歩いているのが見える。明日からは、サジェスもあの中に入るのだ。どんなことを学ぶのだろうか。


「よいしょ」


 リュックの中身を、ベッドの上に広げていく。以前来ていた洋服。ノート、筆記用具。カワンから借りた本。タオル。懐中電灯。そして、小さいポケットには、時計が入っていた。

 この時計は、やはりこの世界の物だったみたいで、何人かつけている人がいた。それに、カワンから借りた本にも載っている。何年も使っているが、目覚まし機能があることは初めて知った。


「えーと、服はクローゼットに入れて……」


 クローゼットは、たぶんここ。右奥の大きなドアを開ける。


「うわぁ!」


 正解だ。この世界の服が、何着も入っていた。全部、今日来ているような、しっかりとした服だ。刺繍もかわいい。ワンピースだけでなく、ズボンもシャツも入っている。


「すごい! 用意してくれたんだぁ」


 下にある、タオルのかかった籠の中には、下着も入っていた。タオルの上に上が一枚載っている。


「あっ、パテラさんからだ」


 勉強頑張れ。学校生活、楽しんでね。 パテラ


 じゃあ、この洋服などを用意してくれたのは、パテラさんだ。

 大事に使おう、と心に決めた。


「えっと、次はタオル。タオルは洗面所だよね」


 洗面所は、ベッドの奥の所にある。ここはもう、暗くて電気をつけないと見えない。


「これかな?」


 曲がってすぐの所にあるボタンを押すと、光があふれた。


「すごい! きれい」


 洗面台には、貝が埋め込まれており、光を反射して所々光っている。


「こっちのドアは? あっ、トイレだ! じゃあ、こっちは?」


 洗面台の横のドアを開けたあと、もう一つ奥にある、ドアを開ける。


「お風呂だ! 広い!」


 お風呂場も洗面所と同じく貝が埋め込まれており、青系の色彩の壁で、海の中を連想させる。それに、広い! 足を楽々伸ばせるし、浮き輪を使って入れそうだ。


「片付けたら、お風呂入ろう!」


 先に、片付けなくては。タオルは、洗面台の横にある棚に入れる。


「あっ、これもパテラさんが用意してくれたんだ」


 パテラは、生活に必要な物を一通り用意してくれたみたいだ。 棚の中には、タオルがいっぱい入っていた。じゃあ、いま、持っているタオルはここの物と混ぜない方がいい。今持っているタオルは、ティエラから持ってきたものだ。机の棚に入れて、思い出の品として大事にしておこう。


「これは、とりあえず、机の上に置いておこう」


 筆記用具と、ノートは机の上に置いておく。まだベッドに載っているのは、本、懐中電灯、時計だ。

 時計も、机の上で大丈夫だろう。懐中電灯は机の中にしまって、本は、本棚へ。本棚は、机の横とクローゼットの横の所にある。


「ん? これなんだろう?」


 本棚にはすでに一冊本が入っていた。


「食事のメニュー表? なんでここに?」


 ページをめくると、さっき邪魔だと思った台の絵がある。


「えっ、ここに料理が出てくるの!?」


 ボタンを押して、台にメニューを言うと料理が出てくるらしい。 

 ちょうど、夕飯の時刻だ。試しにやってみよう。


「何のメニューにしようかな。えっ、ティエラの料理もある!!」


 この世界で、ティエラの料理が食べれるなんて。もう食べれないと思っていたから嬉しい。どれにしよう。たくさんあって迷っちゃう。


「スパゲティー、オムライス、ドリア、ハンバーグ。うーん」


 どうやら、和食は注文できないらしい。メニューに描いていない。


「よしっ、決めた」


 ティエラで一番好きだった料理。


「オムライスにしよう」


 母さんが作ってくれるオムライスは、本当に美味しかった。

 まず、横についているボタンを押す。そして、料理名をいうんだっけ。


「オムライス、一つ」


 チャラーン!


 音が鳴って、ランプがつく。メニュー表にはだいたい五分くらいかかると書いてあった。


「そうだ、待っている間にお風呂入れちゃおう」


 そうしたら、ご飯を食べた後、すぐにお風呂に入れる。靴を脱ぎ、風呂場に入った。


「え……」


 どうしよう……。

 どうやってお湯入れるんだろう? 蛇口がない。さっきは、お風呂の広さに夢中で気が付かなかった。ティエラのボタンを押せば、お湯が自動で入ってくれるやつと同じなのか? だけど、ボタンは見当たらない。

 今日は、お風呂諦めるしかないのか?


 チャラーン!


「あ……」


 料理ができたらしい。

 また後で、お風呂のことは考えよう。とりあえず、ご飯だ。オムライス。


「うわぁ、美味しそう!」


 サジェスが、銀色の台の所に着いた時、青い魔法円が表れた。そして、真ん中にオムライスが載っている。 

 オムライスは、湯気が出ており、作り立てだとわかる。スプーンも近くに添えてあった。そして、お茶もお盆の上に乗っけてくれていた。

 ここのお皿は、貝で、お盆は木でできている。魚の形だ。


「机の物どかさなきゃ」


 机の上に載っているものは、とりあえず机の中に一時避難。

 よし、きれいになった。


「いただきます」


 お盆を机の上に置き、食べ始める。一人で食べる食事は寂しいが、とても美味しい。


「あっ、これ、チーズが入ってる。それに半熟だ! 美味しい」


 ご飯も、ケチャップ以外にも何か入れているのだろうか? コクがあり美味しい。鶏肉も、ちょうどいい大きさで味もしっかりしている。

 お茶は、少し苦いが、脂(あぶら)っこいこの料理とあっていた。


「ごちそうさまでした!」


 オムライスは、あっという間になくなる。お腹が膨れて眠くなってきた。

 窓の外を見るともう真っ暗。コルと空の遠くで、ぼんやりと光を発しているが、サジェスのいるところは、月明かりのようにしか届いてこない。

 異世界にいる。

 そんなことを改めて感じる。

 これから、どうなるのだろうか? 明日からはどんな生活になるのか? 楽しみだが、ティエラにいた自分ではなくなってしまいそうで少し怖い。


 チャラーン!


 何も、注文していないのに、音が鳴る。


「うわぁ。すごい」


 サービスです。というメモとともに、デザートのフルーツゼリーが届いた。マーメイド寮らしいデザインで、かわいらしく綺麗だ。

 仕方ない。不安でも、進むしかないのだ。

 サジェスは、目元に浮かんだ涙を拭いて、フルーツゼリーを机に運んだ。


「ごちそうさまでした」


 さっぱりしていて美味しかった。

 お盆にフルーツゼリーのお皿も載せ、一緒に銀の台に置く。


「ありがとうございました」


 ボタンを押してそういうと、青い魔法円が浮かび、お盆ごと消えた。

次こそ、学校へ向かいます。

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