第七話
「……な!」
想像もしていないことだったのか、さすがのリディアが声を上げる。
しかし、もう遅かった。
どんどんと衛兵達が部屋の中に集まってくる。
「待ってください、マイク様! さすがにこれは……」
「うるさい! 黙っておれ!」
しかし、血走った目のマイクが止まることはなかった。
集まってきた衛兵達へと叫ぶ。
「どうなってもかまわん! この女を捕らえろ!」
瞬間、衛兵達の間にどよめきが走る。
「へ! やったぜ!」
「好きにしていいのか!」
……相変わらずのその態度に、私は思わずため息をつきたくなる。
衛兵とはとても言いたくない態度の人間達だが、それも仕方ないだろう。
何せ、ここに雇われているのは、ほぼチンピラ同然の素人達なのだから。
何千回、何万回と衛兵を変えろと言い続けてきたのだが、最後の最後までマイクは私の忠告を聞くことはなかったらしい。
唯一、まともなのは青白い顔で私の前に立つ衛兵長くらいか。
……彼だけが、先代からの人間だったか。
「そもそも、何が衛兵なのか。ただの私兵だろうに」
そういいながら、私はどうするべきか悩む。
目の前にいる衛兵達は精々二十もいかないくらい。
簡単に制圧できる。
何度、この衛兵達に報いを味わわせてやりたいと思ったか、数え切れない。
ただ、今は早く自分の主のもとに帰りたかった。
故に、私は一番簡単かつすぐに終わる方法を採ることにした。
「来い。サリサ」
近衛騎士、暁のサリサ。
それは近衛騎士に個別につけられる名前ではない。
代々、受け継がれていく名前になる。
ただ、実のところ受け継がれているのは名前ではなく。
──暁のサリサという名の魔剣だった。
「……え?」
私の手元に突然現れた剣に対し、唖然とした人間の声が聞こえる。
それもそうだろう。
この魔剣は古代に失われた魔術によって鍛えられた武装。
この王国の辺境に面する影の森の魔獣さえ切り裂く、まさしく魔法の剣だ。
この場にいる人間のほとんどが、目にするのも初めてだろう。
……魔剣の存在を知るよしもない人間達は今、鞘に入った状態の暁のサリサに目を奪われていた。
その剣の柄を、私は軽く握る。
そして私はその剣を。
──契約者が気に入らなければ殺す、魔性の剣を鞘から引き抜いた。




