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婚約者の幼馴染に冤罪をかけられました  作者: 影茸


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20/21

第二十一話 (国王陛下視点)

前話間違えて前の話を投稿しておりました

申し訳ありません

もし未読でしたら、前話からお願いいたします

 ──お兄さんは、本当に優しいですね。


 夢を、見ていた。

 かつての、もう見ることのない景色。


 その中には一人の少女の姿があった。

 ぼろぼろのドレスに身を包んだ一人の少女。


 ──私、いつか。……お兄さんの婚約者になりたいな。


 はかなげに笑うその少女の姿を、私は今も覚えている。


 ──お兄さん、この国を変えてね。私も、お兄さんの役に立ってあげるから!


 そういって、力こぶのない腕を曲げる少女。

 彼女はどうしようもなくかわいかった。

 その彼女が私の脳裏に焼き付く。

 自然と、その時私は理解していた。


 ……もう、彼女を忘れることなどありえないのだろうと。


 当然だ。

 だって、私は彼女を殺したのだから。



 ◇◆◇



「……夢か」


 目を開く。

 私の視界の端、よく見ていた金髪が消えていくのが見えたのはその時だった。

 自分の身体を見下ろすと、椅子の上で寝ていた自分の身体には毛布が掛けられていて、俺は思わず笑う。


「サーシリアか」


 実のところ、こうしてサーシリアが俺の世話を焼くのは一度や二度ではなかった。

 そんな中、俺は思わずにはいられない。


 ……本当に、どうしてサーシリアは俺を恨んでいいくらいであるのに、なぜ好意をここまで見せるのかと。


「馬鹿な奴だ。──俺はお前を尊重することなどないのに」


 侯爵家では事実上の囮にして時間を稼がせ、その他俺は躊躇なくサーシリアの命が危険にさらされる命令をくだしてきた。


 そして、俺はこれからも躊躇しない。

 俺は誰にも慈悲を見せない。

 必要が有れば、どんな手を使っても俺は覇道を進み、この王国を変える。


 その為に、命がなくなり、後世で簒奪王と罵られても。


「……そうでなければ、あいつが死んだ意味がない」


 そういいながら、俺の頭に浮かぶのは一人の少女だった。


 魔剣の主、王国の初代国王が持っていた、魔剣に愛される権能。

 妾の子でありながら、俺はその権能を持っていた。

 そしてそれは、現国王含めた兄弟全員が許せることではなかった。

 故に俺は命をねらわれて過ごすことになった。


 その少女と会ったのは、その逃亡中のさなかだった。

 純粋な少女だった。

 彼女は平民の生まれだと語った。

 そして、両親から逃げてきたのだと語った。


 ……思い出す。

 長い逃亡生活の中、彼女と過ごしたあの日々だけは楽しかったと。

 だが、その生活はすぐに終わることになった。


 俺をねらった暗殺者に少女が殺されたことで。


 俺が簒奪王になる、そう誓ったのはその時だった。

 今まで腐った国だと知りながら、俺は何も為す気などなかった。


 ──こんな国じゃなければ、私達はもう少し生きやすかったのかな?


 けれど、最後に過ごした日々の中、少女が告げたあの言葉が俺の中に残っていた。


「まあ、単純に俺がこの王国が嫌いだっただけだがな」


 そう、その少女の言葉は俺が人を殺す理由にはならない。

 ……だって、自分のせいだと知れば、あの少女は困ってしまうだろうから。


 だから俺はただ、自分の為にこの国を変える。

 ただ、俺が死んだ後あんな少女がいなければいい。

 その理由の為に、俺はどれだけでも非道になれる。


「その、はずなんだがな」


 そういいながら、俺はかすかにうつむく。

 頭に浮かぶのは、どれだけ非道な姿を見せても、ひたむきについてくる一人の近衛。


 ……その、サーシリアの笑顔が俺の記憶の少女を呼び起こす。


「やめてくれよ」


 あり得ないくせに希望を持とうとする自分を、俺はあざ笑う。

 そんな希望なんてありはしなくて、ただ自分が苦しむだけなのだから。


「サリサはもう居ない」


 俺の目の前で死んだあの少女の顔は、今も俺の頭に焼き付いていた。

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