第二話
勇ましい侍女の言葉に、マイクの顔に険しさが増す。
「ほう……」
その一方、私は脱力しないようにするのに必死だった。
告発も何も、家の侍女を使えばそんなものいくらでもやりようがある。
そもそもだ。
……やる気があるのは発言している侍女だけで、他の人間は明らかにやる気もないではないか。
偽造の罪悪感故か、青い顔で後ろに立つ執事達の姿に、私は呆れを隠せない。
「それが本当だったら許されるものではないぞ、サーシリア。ところで、どんな悪評をたてていたのだ」
「はい。お嬢様が血も涙もないなど、不正も辞さない性格の悪さなどあることないこと申し立てておりました」
……その言葉を聞いて、私はわずかに自信がなくなる。
正直、言葉の通りリディアのことを思っているし、もしかしたら言ったこともあるかもしれない。
急に不安になってきた。
「ほかには、男遊びがひどいことや、猫かぶりなど。私の口では表現できないことまでいっておりました!」
いや、違うな。
……これは実際にリディアが社交界で言われている悪口だな。
途中そのことに気づいて目を向けると、リディアが人を殺せそうな目で侍女のことをにらんでいた。
いくら何でも人選を間違いすぎてはいないだろうか。
そう呆れつつ、ようやく私は口を開いた。
「リディア嬢、よろしいか?」
「え? え、ええ。もちろん」
……侍女に殺意を向けすぎて、私のことを忘れるのはやめてくれないだろうか。
「それは本当なのだな」
「そうですわ」
「なら、証拠はあるのか?」
「はい。言っているでしょう、この腕ですわ」
そういって、私にリディアは腕を差し出す。
しかし、実のところそんなものでは証拠というにはあまりにも材料不足だった。
それがわからない訳ではないだろうに、誇った様子でリディアは告げる。
「そうでしょう。信じてくださいますよね、マイク様」
その言葉を聞いて、私は理解する。
リディアには端からきちんと証拠を集めようとする気がないことを。
というのも、リディアはわかっているのだ。
この場において必要なのは、証拠を用意することではない。
「……かわいそうなリディア。すまない。私がもっと早くに気づいておれば」
──この場における上位者である、マイクを説得することが必要だと。




