第十一話
衝動的な私の告白に、陛下が呆れたように笑う。
それもそうだろう。
私の告白は一度や、二度のことではないのだから。
……といっても、何の進展もないのだが。
普段も、軽く流されて終わるだけ。
しかし、今日の陛下は優しかった。
陛下が私の頬へと手を伸ばし、かすかに笑いながら告げた。
「そんなこととうに知っておる」
異性にしては細く、けれど私とは明らかに違うがっしりとした指。
その感触を感じながら、私は思う。
……今の私の顔は間違いなく真っ赤だろうと。
「サーシリア、貴様は俺の大事なものだ」
陛下の顔に浮かぶのは、傲慢かつ獰猛な笑顔。
その笑顔のまま、陛下は告げる。
「──貴様は俺の剣で、猟犬なのだから」
「はい」
それは何度も陛下に言われてきた言葉だった。
故に、その答えも私の口からすぐにでた。
「私は陛下の犬です」
「で。犬と人間に恋は成立するのか?」
「いいえ。しません」
それは何度も何度も繰り返したやりとり。
その答えに満足したように、陛下が手を私の頬からはなす。
それを押さえて私は告げた。
「ですが、犬は一生恩を忘れません。どんなことがあっても、私が陛下を裏切ることはありません」
……私と陛下の関係、それは一般的な恩人と言うには過激なことは私は知っていた。
もし、何かの手違いがあれば私は死んでいただろうし、陛下は私に利用価値があるから優しく接してくれているにすぎない。
思いが成就するなど、最初から考えもしなかったような恋だ。
それでも、陛下がいなければ私はこうして生きていく意味も見いだせていなかった。
──俺は優しくもなければ、慈悲深くもない。ただ、一つだけ約束してやる。
……そして、自分の苦しみが人に理解されることもあきらめていた。
──貴様の苦しみを知っておいてやる。これまでも。そしてこれからも。
私はこの人が好きなのだ。
どうしようもない苦しみの中にいて、それでも私を見てくれるこの人が
だから、私はこの人に何度も思いを告げる。
この先、私は絶対にそばにいると告げる為に。
いつもはない私の行動に陛下は一瞬目を見開き。
その後に、とろけそうなくらい甘い笑顔を浮かべた。
「そうか」
「はい」
……陛下の笑顔に照れがあるように感じたのは、おそらく私の希望的観測だ。
それでも、私は心からの笑顔を浮かべた。




