『東方仙影譚』第五話
どうも作者の炙りサーモンです。この作品は東方projectの二次創作です。作者の勝手な解釈などもあります。それでも大丈夫という方は次に進んでください。
俺は今、輝夜に引きずられて永遠亭のどこかにいる。
すっごい満面の笑みを浮かべている。輝夜さん、すっごい笑ってる。
逆に怖い。目が笑ってなくてマジで怖いよ。
「そこに座ってください♪」
満面の笑みのまま言われた。逆らえるはずもなく、大人しく座る。
すると次の瞬間、輝夜さんは俺の額に向けて綺麗な指をパチン、としならせた。
――ごすっ!!
痛い。このお姫様、忘れてたけどゴリゴリの怪力だからめちゃくちゃ痛い。頭蓋骨にヒビ入ってないかな!?
「これで、どっちもどっちですね」
満足げに輝夜さんが言った。
「どっちもどっちじゃねぇよ! お前怪力だろうが! 脳震盪起こすわ、いてぇよ!」
俺の涙目の反論は完全にスルーされた。
輝夜さんは無言のまま、ひょいっと俺を米俵みたいに担ぎ上げ、どこかへ歩き出す。
されるがまま運ばれた先は、どこかの客室だった。
「診察結果が出るまで、大人しくお待ちくださいね」
輝夜さんはそれだけ言い残し、ピシャリと戸を閉めた。
――数分後。
輝夜さんに部屋へ放り込まれてから少し経った頃、障子が開いて永琳さんが入ってきた。
彼女は手元の資料に目を落としながら、事も無げに告げる。
「あなたの能力ですけど、詳しく調べたところ『影から異形を召喚する程度の能力』のようね」
「あ、はい」
まぁ、それは知ってた。自覚もあったし、だろうなとしか言いようがない。
納得している俺を見て、永琳さんは資料をめくりながら、今度は顔を上げてドストレートに聞いてきた。
「ところであなた、性別はどっちかしら?」
「……はい?」
まぁ、確かに外見のせいでよく聞かれはする。するけどさぁ。
初対面の女の子(?)に向かって、いくら何でもストレート過ぎやしないだろうか。
若干引きつつも、俺は事実を口にする。
「一応、女子です」
「あら、男勝りなのね。じゃあ、年齢は?」
「12歳です」
呼吸をするように次々と個人情報を抜き取られていく。
やっぱストレートすぎるって! 質問の角度が直球のデッドボールだよちょっと!
この天才医師、デリカシーって概念を月の都に置いてきたんだろうか?
「ちょっと、その異形とやらを見せてもらってもいいかしら?」
永琳さんがペンを構えながら言ってきた。
逆らう理由もないので、俺は大人しく相棒を呼び出す。
「ルクス、出てこい」
俺の足元にある影がぐにゃりと波打ち、そこからずるりとルクスが姿を現した。
キツネの頭と体に、ドラゴンの翼と尻尾を持つ、俺の自慢の異形だ。
ルクスは部屋を見回すと、不思議そうに首を傾げた。
『キュ~?』
……うん、可愛い。見た目は結構いかついハイブリッドなのに、鳴き声が超可愛い。癒やされる。
一方、永琳さんはルクスをじっと観察し、手元にあるカルテ(のような怪しい書類)にサラサラと何かをメモしていく。
ひと通り書き終えると、彼女はあっさりと顔を上げた。
「あ、もう引っ込めて大丈夫ですよ」
「あ、うん。ルクス、もう戻って大丈夫だぞ」
俺が言うと、ルクスはまた俺の影の中へと溶けるように消えていった。
すると永琳さんは「じゃあ、そういうことで」とばかりに、くるりと背を向けて部屋を出ていってしまった。
ピシャリと閉まる障子。残されたのは、ぽつんと畳に座る12歳の俺一人。
――え?
待って、これでもう終わり?
このまま放置されるの?
怒られるわけでもなく、監禁されるわけでもなく、ただデータを取られて終わり!?
え、本当にこのままでいいの……!?
――コンコン。
静まり返った部屋に、突然ノックの音が響いた。
「あ、はーい」と俺が答えるよりも早く、ガラリと障子が開く。
入ってきたのは、やっぱりというか何というか、輝夜さんだった。
輝夜さんは部屋の中にいる俺を見る。
俺も、入ってきた輝夜さんを見る。
数秒の、謎の沈黙。
「あ、ここじゃないわ」
輝夜さんは真顔でそう呟くと、何事もなかったかのように黙って障子を閉めようとした。
「おいおいおい!? 黙って出て行こうとしないで!? ねぇ! 確実に俺と目ぇ合ったよね!?」
あまりにシュールすぎる状況に耐えかねて、俺は立ち上がって必死に引き留める。
だが、俺の悲痛な叫びも虚しく、ピシャリと容責なく戸は閉められた。
廊下を遠ざかっていく、優雅な足音。
――いや、置いてくなよ。
ここの連中、ちょっと自由過ぎないか!?
お姫様も医者も、他人のデリカシーとかプライバシーを幻想郷の境界の彼方にでも投げ捨ててきたの!?
読んでいただきありがとうございました!次回はなるべく早く出しますので、お待ちください




