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『東方仙影譚』第二十四話

学校ってなんだっけ?

「表出ろ」

 髪を振り乱し、顔を真っ赤にした妹紅が、俺の目の前にズイッと立ち塞がった。その瞳の奥に、ガチの青白い怒りの炎がメラメラと燃え盛っている。

 おい待て宿敵の輝夜じゃなくて、全ての元凶(頭を掴んで毛に押し付けた)である俺の方にガチの矛先が向いちゃったじゃねぇか!

 俺はパイプ椅子の上で冷や汗を流しながら、さっきの永琳さんのセリフを都合よく拝借して、子供の特権をフルに使って必死に言い訳をした。

「教育によろしくないよ」

『キョーイクッテ、ナニカ、ワカラナイナーアハハハー。よし来い』

 お前もカタカナ棒読みになるんかい!!!

 おいもこたん! 22話の脱臼した時や、28話のリビングでのルクスのあの『ウワータノシミダナー』という魂の抜けた棒読みを、ここでさらに天丼して不法侵入ヤンキーの凄みを増すんじゃないわよ! 全然アハハハーって笑える空気じゃねぇだろ!

 妹紅にガシッと腕を掴まれ、いよいよ竹林の奥へと連行されてガチのタイマン勝負リアルファイトが始まる――そう覚悟した、まさにその瞬間だった。

 

 カシャッ……。

 

 俺たちのすぐ真横で、おそろしく小気味良いカメラのレンズの作動音がリビングに響いた。

「シャッターチャンス」

 隣にいたニートのお姫様が、文屋から強奪した古いカメラのファインダーを覗き込み、不敵な笑みを浮かべながら指をシャッターに添えていた。

「やっぱやめよ」

 妹紅は掴んでいた俺の腕をパッと離すと、一ミリの躊躇ちゅうちょもなく、光の速さでカチコミを辞退して食卓の椅子へと座り直した。

 引き際が潔すぎるだろ!!! お前、さっきカメラで屈辱の窒息写真を激写されて伏字だらけの暴言(○○! マジで!)を吐き散らしたのがよっぽどトラウマだったんだな! 輝夜のシャッターの脅し、俺の「教育によろしくないよ」の100倍効いてんじゃねぇか!

 こうして、一瞬にしてリビングにまたしても平和(?)な静寂が戻ってきた。

 ……のだが、そんな静かな空間の中で、頭に軍帽を被った170センチオーバーの大きいキメラ――我が自慢の相棒である望月ルクスが、深緑色のマントを揺らしながら、おそろしく平然とした澄んだ低音ボイスでボソボソと独り言を呟き始めた。

『りんご、ごま、マントヒヒ、ひ、ひ、氷河期、木、帰路、ロバ、バス、スズメ、メダカ、過労、売り上げ、げんこつ、積み木……』

「ルクス……?」

 俺は椅子に座り直した体勢のまま、隣のデカいモフモフをガチのトーンで引きった顔で見つめた。

 おい相棒!!! 急に何の関係もない「しりとり」を一人で大真面目に進めてんじゃねぇよ! しかも『過労』だの『売り上げ』だの、外の世界のブラック企業みたいな生々しい大人の単語を悪魔の重低音ボイスで並べるのをやめろ!

 朝一番から不法侵入に脅かされ、魔王を撃退し、キメラ吸いで窒息した不死身の少女がカメラに怯えてカチコミを諦め、挙げ句の果てには相棒の悪魔が孤独にしりとりを始める。

 俺と望月ルクスの、幻想郷での居候生活数日目の朝は、やっぱりタイトル以上の大渋滞と意味不明さ(カオス)と共に、賑やかなお茶の時間が、本当に、いつまで経っても終わらないのだった。

過労…?

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