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『東方仙影譚』第三十一話

四日目くらいでこんなに投稿してしまった

『……おい。僕だって、殺るときは殺るんだからね?』

 色欲の悪魔アスモデウスのその一言と共に、リビングの空気は完全にガチのシリアスへと凍りついた。

 オネエ口調のまま放たれる、部屋ごと消し飛ばしそうなおぞましい黒紫色の殺気。キモくてダルいだけかと思ったら、こいつ、本当の本当にシャレにならないレベルの怪物だ。

 

 だが、幻想郷の少女たちも、ただ黙って異世界の魔王の威圧感にひるむようなタマじゃなかった。

「夢想封印!」

 先陣を切って飛び出した博麗霊夢が、お祓い棒を翻して色鮮やかな巨大な結界の弾幕をアスモデウス目がけて一斉にぶっ放した。博麗の巫女の、容赦のない必殺のスペルカードだ。

 しかし、アスモデウスは身構えることすらなく、片手をスッと動かしただけでそのすべての弾幕の軌道を歪め、完全に無力化してみせた。

「簡単に避けれるね」

「え?」

 自分の最強の技を初見であっさりスカされた霊夢が、驚愕きょうがくの声を漏らす。

「フジワラヴォルケイノ!」

 続いて、食卓の隅から妹紅が飛び出し、自身の身体からおそろしい不死の紅蓮の炎を爆発させてアスモデウスへと突撃した。リビングの畳が焦げるほどの凄まじい熱波。

 だが、アスモデウスはその直撃をピンク色の魔力の障壁だけで真っ向から受け止め、煙を払いながら退屈そうに言い放った。

「威力弱いね」

「は?」

 プライドを木っ端微塵にされた妹紅の顔が、ガチの不機嫌へと歪む。

「金閣寺の一枚天井!」

 さっきまで「部屋行こ」とサボる気満々だったはずの輝夜まで、あまりの敵の強さに引き籠もるのを諦めたのか、虚空から光り輝く巨大な建物の天井(弾幕)を召喚し、アスモデウスの頭上へと勢いよく叩きつけた。

「ちょっと痛いかも?」

「ふぁ?」

 直撃したはずのお姫様のスペカすら、アスモデウスは頭を少し撫でるくらいの余裕で耐え切ってみせた。

 霊夢、妹紅、輝夜。幻想郷のトップクラスの主戦力たちのスペルカードが、ことごとく絶望的な実力差で撥ね返されていく。

 う、嘘だろ……。二十七話でルクスと対等のデビルコネクトを終えたばかりだけど、こんな化け物相手に一体どうやって戦えばいいんだよ!

 俺が本気で冷や汗を流しながら、これから始まるであろう絶望のデスゲームに身震いした、まさにその瞬間だった。

 俺の隣に立っていた、頭に軍帽を被った大きいキメラ――望月ルクスが、深緑色のマントをバサァッと翻して凄まじいスピードで肉薄し、その大きな前足の鋭い爪をアスモデウスの顔面へとダイレクトに突き出した。

「目潰し!」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! 目がぁ……目がァァァァァァァァ!」

 バシィィィン!!! と凄まじい肉声の打撃音(※ただの物理)が響き渡り、さっきまで最強の威圧感を放っていた魔界の王アスモデウスは、両目で顔を覆いながら畳の上をのたうち回って大絶叫し始めた。

 嘘だろ。幻想郷の最強陣のスペルカードをすべて涼しい顔で防ぎきった超大物が、まさかのデカいキツネ(望月ルクス)の大きな前足による原始的な目潰し一発でム○カ大佐並みの致命傷を喰らっている。

 だが、この圧倒的な大チャンスを、博麗の巫女が見逃すはずがなかった。

 ドガッッッ!!!

 ――静まり返るリビングに、生々しい鈍い衝撃音が響いた。

 

「背中! 背中! わかった! わかったから無言で蹴らないで! 痛い!」

 目が開かないアスモデウスの後ろに回り込んだ霊夢が、冷徹な死んだ魚の目のまま、一切の容赦なくガチのローキックや前蹴りを背中に何度も叩き込んでいた。おい博麗の巫女! 弾幕ごっこで勝てないからって、視界を奪われた敵に無言でリアルな格闘技の暴行を加えるんじゃないわよ!

 バァァァン!!! バァァァン!!!

 さらにそこへ、妹紅がどこから取り出したのか、お笑い芸人がツッコミで使ったりする『叩くとめちゃくちゃいい音が出るあの蛇腹のハリセン』を両手に構え、のたうち回るアスモデウスを無言で全力でメッタ打ちにし始めた。

「こっちも!?」

 良い音がリビングの中に響き渡る。おいもこたん! 不死身の少女の腕力でハリセンをフルスイングするな! 良い音のレベルを超えて風圧で畳が浮き上がってんじゃねぇか!

 ゴッッッ!!!!

 極めつけは、さっきまで「部屋行こ」と戦闘をサボろうとしていたはずの輝夜だった。

 お姫様は、真顔のまま両手でしっかりと「外の世界のゲーム機(据え置き型ハード)の角」を握りしめ、アスモデウスの脳天へと寸分の狂いもなく正確に振り下ろした。

「痛い!!!」

 アスモデウスが頭を押さえて涙目で絶叫する。

 おい月のプリンセス!!! ゲーム機の角で殴るのだけはガチでやめろ! それは十二歳の少女の俺の視点から見ても、武器として一番リアルに痛くてケガするやつだろ!

「カオス……」

 俺はリビングのど真ん中で、繰り広げられる地獄の集団リンチ(※全員無言)を眺めながら、ぽつりと呟いた。

 魔界の七大悪魔が来襲して幻想郷の存亡を賭けた大バトルが始まるはずだったのに、蓋を開けてみれば「目潰しからのガチボコ(物理)」である。東方 Project の綺麗な弾幕要素が1ミリもねぇわ。

 頭から湯気を出し、全身をハリセンの跡とゲーム機の角の打撲でボロボロにされたアスモデウスは、ついに両手を上げてワンワンと泣き出しながら叫んだ。

「もう無理! 魔界帰る!」

「弱」

 妹紅が、鼻で笑いながらハリセンを肩に担いでバッサリと言い放った。

 お前らが寄ってたかってリアルな暴力を振るったからだろ! 可哀想に、色欲の魔王のプライドが完全に粉々に粉砕されてメンヘラみたいになってんじゃねぇか!

 アスモデウスは涙を拭いながら、魔界のゲートへとトボトボと歩き出し、去り際にふと思い出したように俺たちを振り返った。

「あ、もう誰も来ないよ」

「おかしいでしょ」

 俺は思わず、本日最大級のツッコミをリビングの中に響かせた。

 おいアスモデウス!!! おかしいだろ!!

 二十九話の手紙でベルフェゴールがあれだけ大真面目に「これからお前らのコアを獲りに行く、覚悟せよ」って壮大な七大悪魔争奪戦バトル新章のフラグを立てておいて、お前一人がボコられただけで「もう誰も来ない」ってイベント自体を勝手に全終了させてんじゃねぇよ! 次の強欲や色欲の悪魔たちの出番はどうしたんだよ!

 こうして、魔界からの最凶の刺客アスモデウスは、ルクスの目潰しとヒロインたちのガチリンチによって一話で完全に心が折れて魔界へと帰っていった。

 せっかく始まったはずの大バトル新章を、わずか数分(一話分)のグダグダ物理コントで強制終了させた俺たちの数日目の朝は、やっぱりタイトル以上のガバガバさ(カオス)と共に、静かな(?)永遠亭へと戻るのだった。

宿題の自由研究の資料コピーめんどいよぉ

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