↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/50

『東方仙影譚』第二十二話

どうも作者の炙りサーモンです。この作品は東方projectの二次創作です。パロディやメタ発言、作者の勝手な解釈などが含まれます。今回はかなりグダグダです。それでも大丈夫という方は次に進んでください。

 ……ん。

 翌朝、パチリと目が覚めた俺は、いつもの調子で勢いよく身体を起こそうとして――寸前のところで、ピキリと動きを止めた。

 危ない、あと数センチ早かったら大惨事になるところだった。

 俺の顔の、本当にすぐ鼻先をかすめるほどの至近距離に、誰かの綺麗な顔が浮かんでいたからだ。

 なんと、永遠亭の姫様である輝夜が、俺の真横にちょこんと正座して、じっと俺の顔を覗き込んでいた。

 あのまま何も気にせず勢いよく身体を起こしていたら、輝夜の顔面に俺の頭が盛大にぶつかるところだった。俺の硬いおでこで、月の姫の綺麗な鼻筋を叩き割ってしまう危機一髪の瞬間である。

 ――待てよ?

 ピキリと静止した体勢のまま、俺は薄目の奥で必死に思考を巡らせた。

 俺が目を開けたのはほんの一瞬だ。輝夜は楽しそうにクスクス笑っているけれど、もしかして……。

(あ、まだ気づいたってバレてないかな?)

 そうだ、まだ俺が寝ぼけていると思っている可能性は大いにある。

 このままじっとしていてもプレッシャーで息が詰まるだけだし、それならいっそのこと、完全に「寝起きの不可抗力」を装って――。

(今、体起こすか!)

 よし、いけっ!

 覚悟を決めた俺は、これ以上ないほどのハイスピードで、ガバッと勢いよく布団から上半身をね起き上がらせた。

 ――ドガッ!!!!

 鈍い衝撃音と共に、俺の視界が一瞬だけチカチカとした星で満たされた。

 

いづっっっ!!!」

 案の定だった。

 バレていないという淡い期待はものの見事に打ち砕かれ、俺のおでこと輝夜の額が、正面から盛大に正面衝突を果たしてしまったのだった。

 俺は涙目で火花が散るおでこを押さえながら、目の前の月の姫を見た。

 きっと「いったぁーい!」とか怒るんだろうな――そう思っていたのだが、現実は違った。

 輝夜は、なんかありえないものというか、床を走るゴキ○リを見るような、底冷えするゴミを見るような目で俺をジッと見つめていた。

(あ、ヤバイかも。これ、ガチで殺される……?)

 お姫様の上品な顔から放たれる、あまりにもド直球なドン引きの視線に、俺の背中にドッと冷や汗が吹き出す。

 いつもならふざけ合ってくれるのに、朝一番からこんなガチの嫌悪の目を向けられるなんて、完全に地雷を踏み抜いたとしか思えない。

 だが、恐怖はそれだけでは終わらなかった。

 しんと静まり返った和室の中、俺の脳の防犯アラームが、さらに特大の危険信号を鳴らし始めた。

 

(あともう一人、居るね絶対……)

 この部屋に満ちているのは、俺と、目の前の輝夜の気配だけじゃない。

 いつものアカギツネ色の従者――ルクスのものではない、おそろしく不穏な「何か」の気配が、俺の真後ろに漂っている。

 すっごい背中に視線が刺さる。

 痛い。文字通り、物理的に視線が背肉を貫通してきそうなほどの殺気だ。

 

 後ろ振り向けない。

 怖い。本当に怖い。

 この世の全ての呪いを背負わされているかのようなプレッシャーの中、俺の耳に、聞き覚えのある低い声がボソッと届いた。

「……」

(あ、妹紅!?)

 声の主は、間違いなく昨日博麗神社から一緒に帰ってきたもこたんだった。

 

 え、なんで妹紅いるの? え? ここ永遠亭の俺の部屋だよね?

 お前ら普段あんなに仲悪くて殺し合ってるのに、なんで朝一番からお姫様とセットで俺の寝所に不法侵入してんだよ!

 疑問は山ほどあるけれど、やっぱり後ろは振り向けない。

 後ろ振り向けないけど、なんかすっごい俺のことを見てる。

 怖い。

 どういう体勢で見てるんだろう?

 想像すればするほど、背中に刺さる視線の鋭さが増していく気がする。

 でも怖くて後ろ向けない。本当に怖い。

 いや、このまま視線の恐怖に怯えて固まっていても何も始まらない。俺はグッと拳を握りしめ、一か八かの覚悟を決めて勢いよく後ろを振り向いた……!

「うおっ――あ、え? え? え? あ、え?」

 後ろを振り向いた俺の口から、脳の処理速度が完全に追いつかなくなった間の抜けた声が漏れ出た。

 妹紅は、うん。

 あ、え? なんで?

 俺が必死に視線を感じていたその場所――なんと妹紅は、外の世界のあの有名すぎる『アル○ックのCM』で、霊長類最強のレスリング金メダリスト様が披露していた伝説の防犯ポーズのまま、和室の天井と壁の角に手足を突っ張ってガッチリと張り付いていた。

 天井の角から、白髪をだらりと垂らした不死の少女が、無言のまま死んだ魚のような目で俺を見下ろしている。

 怖い。え? え? え?

 なんでそんなアクロバティックかつ、最強の警備員みたいな体勢で俺の寝顔を見守ってたんだよ!

(っていうか俺、なぜ今の今まで気づかなかった!?)

 あんな部屋の四隅にガチの不審者が張り付いていたら、目が覚めた瞬間に気配で分かりそうなもんだろ!

 さらに俺は、目の前でいまだにゴキ○リを見るような目で俺を睨んでいるお姫様に、心の中で全力のツッコミを投げつけた。

(輝夜、なんで気づかないの!?)

 お前は真横に正座して俺の顔を覗き込んでただろ! 自分の部屋の天井の角に、宿敵の藤原妹紅がアル○ックのポーズで張り付いてるんだぞ! なんでそんな普通にスルーして優雅にクスクス笑ってられるんだよ!

 こっわ。

 え、待って、この永遠亭の幼馴染コンビ、朝一番からレベルが高すぎてこっっっわ!!!

 

 俺が天井の角を見上げながら本気で引き攣っていると、アル○ックのポーズで完全に静止していたはずの妹紅が、だらりと垂らした白髪の隙間から、なんともバツが悪そうな声をボソッと漏らした。

「コレどう降りんの?」

(猫か!?)

 心の中で光の速さでツッコんだ。

 高い木の上には勢いよく登ったはいいものの、後先考えてなくて自力で降りられなくなったドジな野良猫かお前は!

 さっきまでの霊長類最強の威圧感はどこへやら、天井の四隅でモジモジとし始めた妹紅の姿に呆れていると――。

「あー、もう面倒くせ」

 妹紅は考えるのを放棄したのか、突っ張っていた手足をパッと離し、そのまま頭上の高さから畳に向かって文字通り重力に従ってドサリと飛び降りてきた。

 ――バキッ。

 静かな和室の中に、明らかに人間の身体から鳴ってはいけない、乾いた不吉な破壊音がハッキリと響き渡った。

「え?」

 俺は一瞬で思考が停止した。今、確実に『バキッ』って生々しい音がした。

(え? 骨折れた!?)

 床に転がっている妹紅の身体が、ありえない方向を向いている気がする。

 俺は慌てて布団を跳ね除け、床の上の少女へと掴みかからんばかりの勢いで身を乗り出した。

「大丈夫妹紅!? 完全に今なんか折れたろ! 永琳さん呼んでくるからな!?」

 俺が本気で大パニックになって叫ぶ中、畳の上に転がっていた妹紅は、死んだ魚のような目のまま、おそろしく平然とした声を響かせた。

「アー、カタノカンセツガ、ハズレチャッタナー」

 驚くほど感情の籠もっていない、完全なカタカナ棒読みだった。

 妹紅はそのまま、よいしょと起き上がると、自分の左肩を右手で掴み――。

 バキバキバキッ!!!

 と、まるで煎餅でも噛み砕いているかのような凄まじい生々しい破壊音を部屋中に鳴り響かせながら、自力で無理やり関節を元の位置へとハメ直した。

 怖い。化け物だろ、無茶苦茶すぎ。

 いくら不死身の蓬莱人だからって、朝一番から他人の部屋でゴキ○リのごとく天井に張り付き、落ちて脱臼した関節を自分でバキバキ鳴らしてハメる女子がいてたまるか。

 しかし、俺の脳内パニックは、これだけでは終わらない。

 俺はすぐ目の前で、未だに正座したまま静かに微笑んでいるお姫様へと再び視線を戻した。

(もうさ、そして輝夜はなぜ気づいてない……? え、気づいてんの? え?)

 今、確実にこの狭い和室の中に、誰がどう聞いても鼓膜が震えるレベルの『バキバキ音』が鳴り響いていたんだぞ。

 俺が冷や汗を流しながらそんなことを考えていると、目の前の輝夜はおもむろにパッと後ろを振り返り、何でもないことのように驚きの声をあげた。

「あ、妹紅! いつから居たの?」

「今気づいたの!?」

 俺は思わず、本日何度目か分からない大音量のツッコミを和室の中に響かせた。

 お前、本当に今の今まで気づいてなかったのかよ! 関節がバキバキ鳴る凄まじい音が、すぐ真後ろで鳴り響いてたでしょ!

 だが、そんな輝夜の呑気な質問に対し、肩をハメ終えた妹紅は、ポケットに手を突っ込みながら平然と言い放った。

「昨日」

「こっちもこっちで怖いよ!!!」

 俺は今度こそ、恐怖のあまり布団を頭まで被りそうになった。

 

 昨日!? お前、昨日神社から一緒に帰ってきて、俺が「もう寝る!」って部屋に引き籠もったあの瞬間から、ずっとこの部屋にいたのかよ!

 

(なんで俺、全く気付かなかったの!?)

 昨日からこの部屋の天井の四隅に張り付いて、俺の寝言や、ルクスとキャッキャとゴムボールで遊んでいた尊い主従のイチャイチャを、ずーーーっと無言で真上から見下ろしていたということか。

 恥ずかしさと恐怖で、俺の脳の血管が何本かブチ切れそうだった。

 俺は布団から這い出ると、頭を抱えたまま、目の前の不法侵入系女子二人をジト目で睨みつけた。

「……。君たちさ、プライバシーって知ってる?」

「「聞いたことはある」」

 またしても奇跡的なハモりを見せながら、もこかぐの二人は揃って堂々と言い放った。聞いたことがあるなら少しは配慮してくれよ!

 はぁ、と俺は大きなため息をつきながら、和室の窓の外から差し込む朝日に目を細めた。

 

 ――あとさ。

 もうこのくだりだけで、一話分終わっちゃったよぉ〜。

 昨日の二十話で永琳さんが「これで一話分終わっちゃうから!」って大慌てで診察室に連れて行ってくれたっていうのに、翌朝になったら今度は俺の布団の周りだけで丸々一話分の文字数を無駄遣いしてしまった。読者の皆様、本当にすみません。グダグダなのは仕様です。

 でも、あのパニックのせいで、俺はもう一つ、おそろしく重要な異変に気がついていなかった。

「……あーあ。そういやルクス、どこ行った?」

 俺は自分の影を見つめ、それから誰もいない部屋の隅々を見渡した。

 昨日の夜、俺の布団のすぐ横で、大きい姿のまま軍帽を被って静かに眠りについたはずの、俺の自慢の従者。

 その姿が、朝起きたらどこにも見当たらなかった。

 

 朝一番からのもこかぐの襲来。そして、相棒の謎の失踪。

 俺の幻想郷での二日目の朝は、昨日以上の特大のカオスと共に、幕を開けようとしていたのだった。

読んでいただきありがとうございました!次回はなるべく早く出しますので、お待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。