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『東方仙影譚』第二十話

どうも作者の炙りサーモンです。この作品は東方projectの二次創作です。パロディやメタ発言、作者の勝手な解釈などが含まれます。それでも大丈夫という方は次に進んでください。

 ルクスのあまりにも涙ぐましい魔界のブラック企業(?)並みの苦労話を聞き終えた俺たちは、ようやく目的地の永遠亭へとたどり着いた。

 

 長かった。博麗神社に行って一発殴りたかっただけなのに、まさか異世界の七大悪魔が勢揃いして早口言葉大会までやる羽目になるとは、鳥居をくぐった時点では誰も予想していなかっただろう。全部作者のせいだけどな。

「うどんげー! 遊びに来たぜ!」

 永遠亭の門をくげる(くぐる)なり、霧雨魔理沙が我が物顔で玄関の引き戸をガラガラと開け、大声を張り上げた。

「もう……。魔理沙、いきなり大声で入ってこないでください。ここは一応、病人が療養する病院でもあるので」

 奥の廊下から長い兎耳をペこりと垂らしながら現れたのは、永遠亭の苦労人、鈴仙・優曇華院・イナバだった。

 優曇華はあきれたようにため息をついたが、俺たちの姿――特に俺の左腕のガチガチの包帯と、その後ろで佇む小さなルクスを見るなり、ハッとして表情を和らげた。

「あ、仙さん。無事に博麗神社から戻ってきたんですね。怪我の具合は大丈夫ですか?」

「ああ、永琳さんの気付け薬のおかげでなんとかな。……それより優曇華、魔理沙が道中からずっと、お前に仕掛けるイタズラのことで頭がいっぱいだったみたいだぞ」

 俺が半目になりながら予告すると、優曇華は露骨に嫌そうな顔をして、一歩後ろに身を引いた。

 だが、魔理沙の『優曇華いじり』はすでに発動していた。魔理沙はニヤニヤとした笑みを浮かべ、人差し指を優曇華に突きつける。

「おい、優曇華。お前、患者にあの座薬打ち込むのか?」

「だから座薬って言うな!」

 優曇華は長い耳をピーンと逆立てて、待ってましたと言わんばかりのベタなツッコミを返してきた。東方ファンの間で擦り切れるほど言われている「座薬ネタ」だが、本兎にとっては未だに許しがたい不名誉な呼び名らしい。

 しかし、魔理沙の猛攻は止まらない。今度は急に真面目な顔をして、とんでもない無茶振りをぶっ放した。

「じゃあ質問だ。うどんと優曇華の違いってなに?」

「は……? うどんと、私……?」

 唐突すぎる『うどん大喜利』に、優曇華はポカンと口を開けてフリーズした。

 おい魔理沙、いきなり初対面の兎にそんな雑な謎かけをするなよ。文字数が余計に消費されるだろ。

 優曇華は数秒の間、必死に脳細胞をフル回転させていたが……やがて、何かをひらめいたようにハッと顔を上げた。

「……。冷製か、鈴仙れいせんか」

 冷たい『冷製うどん』と、自分の本名である『鈴仙れいせん』をかけた、驚くほど綺麗に決まった世紀の大爆笑ダジャレだった。

「誰か座布団五枚」

 あまりのクオリティの高さに、俺は思わずパチパチと手を叩きながら、空の向こうの山田くんに座布団を要求した。

「……」

 だが、隣に立つ妹紅だけは、完全に冷え切った死んだ魚のような目で、無言のまま優曇華を見つめていた。

 せっかく渾身のギャグを決めたというのに、永遠亭の玄関には、なんとも言えないシュールでローテンションな空気が流れ始める。

 だが、魔理沙はそんな空気を1ミリも気にすることなく、ニヤニヤしながら次の無茶振りを叩き込んできた。

「じゃあ次! 声真似して、優曇華!」

「ええっ!? 声真似!? ちょっと魔理沙…!」

 優曇華は本気で嫌がったものの、魔理沙のキラキラした圧に押され、再び数秒のフリーズの後に覚隔(覚悟)を決めて叫んだ。

「……。君の! 力じゃないか!」

 どこかのヒーローアカデミアの、主人公がショートに言い放った名セリフだった。元ネタがジャンプ漫画のシリアスなシーンなせいで、このグダグダな玄関先では完全に浮いている。

「知らない人いるからもっと有名なので」

 後ろに控える妹紅から、感情の籠もっていないローテンションなダメ出しが飛んできた。ガチのオーディション並みに審査が厳しい。

「う、うるさいわね……! じゃ、じゃあこれならどうよ!」

 優曇華は顔を真っ赤にして、今度は人差し指をビシッと俺の鼻先に突きつけて、これ以上ないほどの大声を張り上げた。

「ポ○モン、GETだ ぜ ☆」

 スペースと星マークまで見えるほどの、渾身の『サ○シ』のモノマネだった。これなら外の世界の人間である俺にも100%伝わる、超国民的アニメの名セリフ――。

 だが、俺は腕を組み、スンッとした真顔のまま、冷酷な現実を突きつけた。

「もうサ○シの時代は過ぎた」

「えっ」

「外の世界じゃもう主人公交代して引退(勇退)したんだよ。時代遅れなんだぜ、座薬兎」

「引退したの!? っていうか結局座薬って呼ぶじゃないの!!」

 優曇華の悲痛なツッコミが永遠亭の廊下に虚しく響き渡る。

 そんな俺たちの、玄関先でのあまりにも文字数を無駄遣いした大喜利大会を終わらせるように、奥の部屋の引き戸が、凄まじい勢いでバァァァン!! と開け放たれた。

「うるっっっさい!」

 ――ドガッ!!!

 凄まじい爆音と共に、奥から飛んできた永琳さんが、ニヤニヤしていた魔理沙の脳天に容赦のない強烈なげんこつを叩き込んだ。

「いったぁぁぁぁぁ!!! 何するんだよ永琳!」

「何するんだよ、じゃないわよ! 玄関先でギャーギャーと、国民的アニメだの主人公交代だのメタボケを連発してんじゃないわよ! 患者の療養の邪魔でしょ!」

 鬼の形相で般若のように怒り狂う永琳さん。その怒声と、あまりにも身内の不始末に容赦のない苛烈な説教のスタイルを前にして、俺は思わず腕を組み、冷や汗を流しながらぽつりと呟いた。

「バクゴーの母ちゃんの声真似しとる……」

 さっきの優曇華のヒロ○カネタに続いて、今度は永琳さんがバクゴーの母親ばりのリアルなガチギレ声真似を披露してきやがった。おい優曇華、お前の師匠、自分の怒声を使って完璧にジャンプアニメのパロディを成立させてるぞ。

「ちょっと仙! 声真似じゃないわよ、地! っていうか、あんたたちいつまでそんなマニアックな声優ネタ引っ張るつもりなのよ! 読者が置いてけぼりになるでしょ!」

 永琳さんはフーフーと荒い息を吐きながら、眼鏡の位置を直して俺を睨みつけてきた。

 だが、この永遠亭のカオスな悪ノリは、まだ終わっていなかった。奥の和室の引き戸から、今度はニートの姫様が、もの凄いテンションで奇声を上げながらジャンプして飛び出してきたのだ。

「ヤハ! イィヤァァァアァァッハッッッ!」

「うるさ」

 俺は光の速さで、限界突破した音量の奇声に真顔でツッコんだ。

 おい輝夜、外の世界のどこかの小さくて可愛い奴の奇声を、月のお姫様が本気で完コピしてんじゃなねぇよ。

 すると、さっきまで死んだ魚のような目で一連の声優ネタを見ていたはずの妹紅が、急に胸の前で両手を握りしめ、涙目を浮かべて潤んだ声を響かせた。

「エ! ワ、ワァ……」

「仲悪いのに(?)なんでそこはかぶるんだよ!!!」

 俺は思わず、二人の見事すぎるちい○わ劇場のコンビネーションに叫んだ。

 お前らいつもは顔を合わせるたびにガチの殺し合いをしてるくせに、なんでトレンドのアニメネタの時だけは、ちい○わとうさぎの完璧な掛け合いを披露してんだよ!

「ア! 泣いちゃった!」

 輝夜はさらにハチワレ模様のネコの声真似でちい○わ(妹紅)を指差す

「ウラ」

 妹紅はちい○わの次はうさぎだ。

 これ以上やらせたら、著作権に引っかかる。俺は一歩前に踏み出し、二人に向かってピシッと言い放った。

「ち○かわネタもうやめろ」

「「はい」」

 もこかぐの二人は、先生に怒られた生徒のように、揃って一瞬でスンッと真顔になって返事をした。

 なんなんだよ一体! 怒涛のアニメパロディ連発のせいで、もう1ミリもストーリーが進んでないぞ!

 俺が心の中で大慌てでツッコミを入れていると、永琳さんが呆れたようにカルテで自分の額をパシッと叩き、俺の襟首を後ろからガシッと掴んだ。

「はい、おふざけはここまで。これで一話分終わっちゃうから、早く診察するわよ。奥の部屋に来なさい」

 八意の賢者様が、なろうの連載ペースと文字数を本気で気にするガチのメタ発言を放ちながら、俺を無理やり廊下の奥へと引きずり始めた。

 ズルズルと引きずられていく俺は、廊下に残された妹紅や魔理沙たちに向かって、これ以上ないほどの大声を張り上げた。

「たぁすけてお兄ちゃぁぁぁぁあんッ! かぁいぞうされちゃぁぁぁぁぁぁ!」

 今度は、どこかの死柄木な少年か、あるいはラジオ等で有名な、あのクール系イケメン声優さんの渾身の迷台詞の完コピだった。

「次はアニメの迷台詞じゃなくて声優さんの迷台詞か」

 妹紅が、ポケットに手を入れたまま、おそろしく冷めた声で俺の元ネタを的確に分析してくる。

「ツッキーとかの声優さん……」

 輝夜まで、烏野のクレバーブロッカーの顔を思い浮かべながら、ぼそりとそのマニアックな正解を呟いていた。お前ら、外の世界の声優事情に詳しすぎだろ!

「誰が改造するか! 早く診るわよ!」

 永琳さんの鋭いツッコミと共に、俺はそのまま診察室の引き戸の向こうへと放り込まれたのだった。足元の小さなルクスがトボトボと後ろから付いてくる。

 白を基調とした静かな診察室に入ると、永琳さんは白衣を翻して椅子に腰掛け、カルテの束を机の上にトントンと整えた。

 さっきまでのバクゴーの母ちゃんみたいなキレっぷりはどこへやら、その瞳はすっかり「八意の賢者」としての冷徹で知的な輝きに戻っている。

「……さて。じゃあ、さっき傲慢のルシファーが言っていた『魂の油汚れ』についてだけど。あれ、ただの不名誉な例え話じゃないわ。あなたの魂、いま大変なことになっているのよ」

「大変なこと……? 」

 俺が思わず身構えると、永琳さんは首を横に振った。

「そうじゃないわ。ミカエルのハートの封印の魔力が、あなたの魂に雑にこびりついた結果……あなたの存在そのものが、魔界と幻想郷を繋ぐ『強力なアンテナ』になっちゃっているの。だからこそ、十八話でマモンやベルフェゴールたちがピンポイントであなたのいる場所にワープしてこられたのよ」

 永琳さんの言葉に、俺は思わず冷や汗が流れるのを感じた。あの悪魔たちが次々と現れたのは、ただの作者の文字数稼ぎじゃなくて、俺の魂が彼らを引き寄せる磁石になっていたからなのか。

して、そのアンテナの『核』になっているのが……仙、あなたの左耳でずっと揺れている、その外れないピアスよ。そのピアスにはね、あなたの相棒――ルクスの魂のコア(核)が直接宿っているわ」

 外れないピアス。外の世界では失われかけた、同性愛者を示す秘密のサイン。それが幻想郷で、まさか元・憤怒の魔王サタンの魂の核と結びついて俺の左耳にこびりついているなんて。

 これ以上ないほどの大変な事実を、八意の賢者様は重々しいトーンで告げてくれた。診察室の空気は、一瞬にして世界滅亡の一歩手前みたいなシリアスさに包まれる。

 だが、俺はそんな重大発表を完全に右から左へ受け流し、椅子の下でトボトボと座っていた小さな相棒へと、実に気軽な調子で声をかけた。

「あのさ、ルクス。デカくなって。その方が俺好み」

『え?』

 俺の突発的なリクエストに、ルクスは一瞬だけ紅い瞳を丸くした。だが、主の絶対的な「俺好み」という殺し文句の破壊力は凄まじかったらしく、次の瞬間、いつもの小さな体は爆発的な光に包まれ、一瞬にしてスラリとした大きい深緑色の姿になった。そしていつの間にか頭に軍帽がある。

『あ、はい』

 姿はめちゃくちゃ格好いいのに、返事だけは恐ろしく素直だった。元・憤怒の魔王の威厳はどこへ行ったんだよ、やっぱりお前、俺と出会って丸くなりすぎだろ。

 でも、やっぱりこのデカいサイズで、俺の隣に直立してくれている方が、俺の性癖――じゃなくて、相棒としての見栄え的にしっくりくる。

「……ねえ、聞いてる?」

 俺たちの前で、カルテを持ったままの永琳さんが、おそろしく冷めきった死んだ魚のような目でこちらを睨みつけていた。

 せっかく物語の根幹に関わる超重要な展開を長々と解説してあげたのに、主人公が自分のビジュアルの好みを最優先してボケ倒したため、賢者のプライドは一瞬でズタズタに引き裂かれたらしい。

「あ、すんません。ちゃんと聞いてますよ、アンテナがどうとか、ピアスが核だとか……」

「絶対に聞いてないわね、この滑舌不良の野蛮人」

 永琳さんは眼鏡の位置を直しながら、深く長いため息をつくのだった。

読んでいただきありがとうございました!次回はなるべく早く出しますので、お待ちください。

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