↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
2/50

『東方仙影譚』第二話

どうも炙りサーモンです。こちら作品は東方projectの二次創作です。作者の勝手な解釈などもあります。それでも大丈夫という方は次に進んでください。

おにぎりを差し出されてから、数分が経った。

俺はまだ、それを口にしていない。

――いや、違う。食いたいのは山々なんだが、食えないのだ。目の前にいる白い髪の女――妹紅からの『圧』が、とにかく凄すぎる。

なんか、すっごい笑ってる。……ぶっちゃけ、めちゃくちゃ怖い。

なんだよその笑顔。普通の微笑みならいい。可愛いもんだし、歓迎されてるって思えるからいいんだよ。いいんだけどね。

お前(妹紅)のその笑顔は、なんかジャンルが違って本気で怖いんよ。

目の奥が笑っていないというか、何か企んでいるというか……。え、何これ、食わなきゃいけないやつ? 食わないとキレられて命がないタイプのやつか?

「……おい」

耐えかねて俺が声をかけた、次の瞬間だった。

「――もうとっとと食え!」

妹紅がしびれを切らしたように、おにぎりを俺の口へと無理やり押し込んできた。

「むぐっ!? ――げほっ、ごほっ!」

荒い! 荒いなこの人!

行き倒れの病人に対する扱いが絶望的に荒いよ!

必死でおにぎりを噛み砕き、なんとか胃袋へと流し込む。

「殺す気かお前!」

人心地がついた瞬間、俺は妹紅に向かって激怒していた。

「喉に詰まりかけたんだぞ! まじで死ぬかと思ったわ!」

味は普通に美味かった。外の世界にいた頃の、故郷の田舎の米を思い出すような、素朴で温かい味だった。だけど、そんな感動もこの理不尽な暴力の前には吹き飛ぶ。

俺が怒鳴り散らしているというのに、目の前の白い髪の女は、腕を組んでフッと鼻で笑うだけだった。

「生きてるんだからいいだろ。それに、それだけ元気よく怒鳴れるならもう安心だな」

妹紅は呆れたように肩をすくめた。そのサバサバした態度が、どうにもしゃくに触る。

「……一発ちょっと殴っていい?」

「ダメダメダメ」

俺の真面目な提案に対して、返ってきた答えがコレだ。

なんだよ、一発くらい殴ったっていいじゃないか(?) こちとらは本気で死にかけたんだから、それくらいの権利はあるはずだ。

俺が心の中でめちゃくちゃな言い訳をしながら睨みつけていると、妹紅はふと、小屋の窓の外へと鋭い視線を向けた。その一瞬で、彼女のまとう空気がピリッと変わる。

「……チッ、のんびりおにぎり食ってる場合じゃなくなったな」

妹紅が低く呟いた直後、小屋の壁が外側から激しくぶつかられた。メキメキと木が軋む音が響く。

外から聞こえてきたのは、野生の獣ような「グルルル……」という唸り声。

「おい、お前はそこにいろ」

妹紅が部屋の真ん中へ一歩踏み出す。その全身から、ボッと紅蓮ぐれんの炎が燃え上がった。

「うおっ!? 燃えてるぞお前! 人間じゃねえのか!?」

俺が驚いたその時、小屋の扉が凄まじい音を立てて吹き飛んだ。

目の前に現れたのは、巨大な牙を持った、熊のような異形の化け物。化け物は炎をまとう妹紅を無視して、奥にいる弱り切った俺へと狙いを定め、猛スピードで突っ込んできた。

妹紅が手を伸ばす。だが、化け物の鋭い爪が、俺の目の前に迫る。

あ、ヤバい。コレ、死ぬやつだ。

俺が絶望した、まさにその瞬間だった。

俺の意思とは関係なく、足元の影がぐにゃりと爆発するように波打ち、空間を切り裂いて、どこからともなくパッと「異形」が飛び出してきた。

緑色のドラゴンの羽を広げ、鱗に覆われた強靭な尻尾を大きく一振りする、モフモフとしたキツネ。

「ギィッ……!!!」

異形のキツネの、夜の森を切り裂くような鋭い咆哮が小屋の中に轟く。

突如現れたその生き物は、凄まじいスピードで跳躍すると、ドラゴンの尻尾を叩きつけ、襲いかかってきた巨大な化け物を一撃で激しく壁の向こうへと蹴散らした。

するとそのまま俺の方に来て、俺の体に頬を擦り付けてきた。

さっきの、夜の森を切り裂くような凶暴な強さはどこに行ったんだよ……。

「ナニソレ」

不意に、部屋の奥からそんな声が聞こえた。

恐る恐る視線を向けると、そこには全身の炎をすっかり消した妹紅が立っていた。なぜかカタコトだし、俺たちのいる場所からあと五メートルくらいは確実に距離を取っている。

警戒しすぎでしょ、この人。さっきまであんなに強そうだったのに。

「……いや、ナニソレって言われても、俺が一番知りてぇよ」

俺が呆れながらそう言うと、足元にいる緑の羽のキツネは、自分の名前を呼ばれたと思ったのか、「ギィッ!」と嬉しそうに短く鳴いた。その鋭い鳴き声に、妹紅の肩がビクッと跳ねる。

助かった。死ぬかと思った。

だけど、これから一体どうなるんだ。

外の世界に居場所をなくし、この見知らぬ竹林に迷い込んだ俺。

どうやら俺の影には、とんでもない「異形」が棲みついてしまっているらしい。

これが俺と謎の異形のキツネ『ルクス』の出会いだ。

読んでいただきありがとうございました!次回はなるべく早く出しますので、お待ちください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。