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『東方仙影譚』第一話

どうも!初投稿させていただきます。作者の炙りサーモンです。この作品は東方projectの二次創作です。作者の勝手な解釈などもあります。それでも大丈夫という方は次に進んでください

「――これからどーするか」

俺はポツリと、独り言を呟いた。

人のざわめきも、冷たい視線も、もう何もかもがどうでもよくて、馬鹿馬鹿しい。ただ、一人になりたかった。

俺はとにかく一人になれる場所を探して、ただひたすらに歩いた。そうしてようやく見つけたのが、薄暗いコンビニの裏口。たまに店員が休憩にでも使っているのだろう、小さなスペースだった。

行き場のない疲れに耐えかねて、俺はそのまま床へと倒れ込む。

家にも、学校にも、この世界のどこにも居場所なんてない。このまま誰にも忘れ去られた方がよっぽど楽だ。いっそ、このまま世界から綺麗に忘れ去られてしまえばいいのに。

――そう、本気で思っていた。

――なのに。

「……は?」

次に目を覚ましたとき、視界に飛び込んできたのは、見渡す限りの広大な竹林だった。

さっきまでコンビニの裏にいたはずだ。コンクリートの匂いは消え失せ、代わりに湿った土の香りが鼻腔びくうを突く。

「夢遊病か、俺は……?」

あまりの現実味のなさに、思わずそんなマヌケな感想が口をついて出た。

とりあえず状況を整理しようと、俺は自分の顔を触る。その時、左の耳たぶに強烈な違和感を覚えた。

「……冷たっ、なんだこれ」

指先が金属の感触に触れる。

触ってみて、俺はゾッとした。

外の世界にいた時、男勝りな格好つけのつもりで左耳に挟んでいた、ただの安いノンホールピアス。

穴を開けていないはずの耳たぶに、それが今、まるで生まれつきそこにあったかのように、皮膚と完全に同化してカチリと埋まっていたのだ。

引っ張ってもビクともしない。

取れないどころか、触ると自分の体の一部みたいに温かい血が通っている感覚さえある。

「夢、じゃねえな。これ……」

自分の耳に起きた得体の知れない異変に、冷や汗が背中を伝う。

「それはそうとして、、、こりゃちょっとヤバいな」

俺はこれからどう生きるか、それだけを考えた。

とりあえず、当てもなく歩いてみた。けれど、どれだけ歩いても視界に入るのは緑の竹藪たけやぶばかり。

そうして延々と歩き続けているうち――不意に地面の凹凸おうとつに足を取られ、激しく左足を挫いてしまった。

激痛が走る。

いつもなら「こんなの気合で関係ない」と思いながら無理にでも歩くタフさ。けれど、今回のは笑えないくらいに結構痛い。じんじんと熱を持って、まともに立ち上がることすらできなかった。動けない。

「最悪や…」

思わず地面に拳を打ち付け、悪態が口をついて出る。

水も、食料も、一刻も早く探さなきゃいけないってのに、このザマだ。

――そうして、絶望の中で丸一日が経った。

「まだ生きれる。まだ、いける……」

唇を噛み締め、自分に言い聞かせるように、俺は何度も強く思った。

でも、現実は残酷だった。

どんどん喉が焼け付くように痛くなって、頭も熱を持ってボーッとしてくる。まともに考えることもできず、視界がぐにゃりと霞んでいく。

痛い、苦しい、……泣いたい。

なんで、こんな目に遭わなきゃいけないんだ。

外の世界にいた時からずっとそうだ。いつも、なんで俺ばっかりこんな酷い目に遭うんだよ。

――俺は、このまま誰にも知られず、こんな場所で死ぬのか?

二日目の夜が明ける頃、俺はついに完全な限界を迎え、冷たい地面へと突っ伏した。

限界の視界の端に映ったのは、一人の人影だった――。

「生きてるか? おーい?」

誰かがこちらに話しかけてきた。少し低めの、落ち着いた女の声だ。

なんだよ。こちとら限界で目も開けられないんだ。そっとしておいてくれ。

「おーい? 聞こえてるかー?」

聞こえてるよ。聞こえてるけどな、声が出ねぇんだよ。

俺の心の文句なんて伝わるはずもなく、その誰かは、俺の頬をペチペチと軽めの力で叩いてきた。

なんとか抵抗しようと指先を動かそうとしたけれど、ピクリと小さく動くのが精一杯だ。

「……ありゃ、こりゃ本当に限界か」

声の主が小さくため息をついた、次の瞬間。

「っと、重くはないな。よし、運ぶぞ」

浮遊感と共に、俺の体はひょいとその誰かの肩へと担ぎ上げられた。

白い長い髪に、赤と白の不思議なズボン。それが、俺と藤原妹紅の、最悪で最高の出会いだった。

次に目が覚めたとき、俺はどこか見知らぬ木造の小屋の中にいた。

固い布団の上に寝かされていて、横を見ると、さっきの白い髪の女が、おにぎりを差し出してきた。

「目が覚めたか。ほら、とりあえずこれ食え。動けないだろ」

おにぎりの匂いを嗅いだ瞬間、胃袋が狂ったように悲鳴を上げた。

――だけど、知らない奴から貰った食べ物を、素直に食うほど俺はバカじゃない。

外の世界で人間に裏切られ、居場所をなくしてきたんだ。得体の知れない目の前の女を、そう簡単に信じられるわけがなかった。

「……誰だテメェ」

俺は、野生の動物みたいに鋭い目で、その女をキッと睨みつけた。

「おいおい、そんなに睨むなよ。私は藤原妹紅ふじわらのもこうだ。……まぁ、別に無理に話さなくていい。ただ、死ぬなよ」

妹紅はため息をひとつついて、俺の頭を少し乱暴にガシガシと撫でた。その手は、驚くほど温かかった。

助かった。でも、これからどうする。

左耳に冷たく光る、結界の向こうで生まれたばかりの謎のピアス。

そして、俺の意思とは関係なく、床の上でずっと不気味にうごめいている黒い影。

俺と、影に棲む異形「ルクス」の幻想郷での物語は、この深い竹林の底から、静かに始まりを告げたんだ。

読んでいただきありがとうございました!次回はなるべく早く出しますので、お待ちください

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