『東方仙影譚』第十八話
どうも作者の炙りサーモンです。この作品は東方projectの二次創作です。パロディやメタ発言、作者の勝手な解釈などが含まれます。それでも大丈夫という方は次に進んでください。
俺は哀れな強欲の悪魔を見下ろしながら、ふと気になったことを尋ねてみる。
「なぁマモン、そもそもなんでお前は外の世界からわざわざここに来たんだ?」
『それが……外の世界の魔力が薄くなって、他の大罪の奴らもこっち(幻想郷)に向かってる形跡があったんですの!』
「はぁ!?」
マモンの口から飛び出した衝撃の告白に、俺は思わず大声をあげた。
おい待て。憤怒と強欲だけでもお腹いっぱいなのに、また設定盛り盛りの大罪悪魔たちが来るってことか!?
――と思った、その瞬間だった。
境内の空間がグニャリと歪み、紫色の禍々しい魔法陣が出現する。
『…ここどこだよ……。あ、来るとこ間違えた、魔界帰る』
魔法陣から現れたのは、羊の角を生やした眠そうな男――『怠惰』を司る悪魔、ベルフェゴールだった。奴は境内の景色を一度見回すと、一歩も動かないまま、秒速で魔法陣の中に消えていった。
「なにしに来たのアイツ」
あまりのやる気のなさに、俺の口から光の速さでツッコミが飛び出した。本当に帰るためだけにここに来たのかよ。
だが、息つく暇もなく、今度は桃色の妖しい煙と共に、異様に顔の整った美男子が姿を現した。
『やぁ、麗しき僕の主。僕と気持ちいいことしよう?』
甘ったるい声でウインクをかましてきたのは、『色欲』の悪魔、アスモデウス。
男勝りな俺の見た目が好みだったのか、いきなり直球すぎるセクハラをぶっ放してきた。
だが、俺は一ミリも動じることなく、スンッとした真顔で言い放つ。
「そういう展開は専門外です」
ラノベのジャンル(全年齢対象)という壁に阻まれたアスモデウスは、目に見えてショックを受けた顔でそのまま煙の中に消えていった。メンタル弱すぎだろ。
すると今度は、お腹をゴロゴロと鳴らした巨大な蝿の羽を持つ大男がドスンと着地した。
『食い物を寄越せやコラ』
これぞ『暴食』の悪魔、ブブゼルブ。
いかにも悪魔らしい狂暴さで吼える奴に対し、隣にいた妹紅がポケットに手を突っ込んだまま、冷めた目で湯呑みを差し出した。
「お茶しかない」
『……じゃあいいです、帰ります』
もこたんのあまりの塩対応に心を折られたのか、ブブゼルブまでもがトボトボと元来た穴へと帰っていった。
「おい、なんなんだよ一体!!」
次々と現れては、くだらない理由で秒速で魔界へ帰っていく大罪悪魔たち。
俺が誰もいなくなった空間に向かって絶叫していると、今度は神社の境内にどんよりとした、どす黒い霧が立ち込めてきた。
『妬ましい……! 妬ましい……! リア充め…!全員まとめて…爆発しろ…!』
怨念を撒き散らしながら現れたのは、『嫉妬』を司る悪魔、レヴィアタンだった。
リア充が憎いとか爆発しろとかって、ネットか?流石は大罪悪魔だ。
すると、俺たちの後ろで三角帽子を直していた魔理沙が、おもむろに前に進み出て言った。
「パルスィですか?」
『…………。パルパルパルパルパルパルパルパル……!』
東方ファンなら誰もが知っている地霊殿の嫉妬妖怪のモノマネを振られ、(原作では言ってません)レヴィアタンは数秒の沈黙の後、全力の「パルパル」で応えた。悪魔のプライドを捨てた見事なノリツッコミである。
「ありがとうな、ネタに乗ってくれて」
魔理沙がニカッと満足げに笑うと、レヴィアタンは「やりきった……」と言わんばかりの清々しい顔で、そのまま霧と共に魔界へ帰っていった。帰る前に一芸披露していくスタイル、嫌いじゃないぜ。
だが、これで終わりではなかった。
直後、これまでに現れたどの悪魔よりも強大で、神聖さすら感じる圧倒的な後光と共に、十二枚の美しい翼を持つ男が舞い降りてきた。
『……ふむ。我が主の影に潜む、かつての憤怒の王サタンよ。……いや、それよりもそこの人間の娘。あなた、魂になにかこびりついていますよ』
これぞ七大悪魔の首領であり、『傲慢』を司る王――ルシファー。
奴は俺の魂をじっと見つめると、何やら不穏なことを口にし、おもむろに指先から恐ろしい威力の光の剣を錬成した。どうやら俺をこの場で殺す気満々らしい。
「油汚れみたいに言うな!」
妹紅が、ルシファーの「こびりついていますよ」という洗剤のCMみたいな言い回しに鋭いツッコミを叩き込む。だが、相手はガチの殺意を向けてきている。俺は慌ててルシファーを指差して叫んだ。
「殺そうとすんなや! この回で終わってまうから! 打ち切り不可避だろ! 帰れ!」
ラノベの寿命がかかった俺の魂の絶叫が境内に響き渡る。
すると、最高位の悪魔であるはずのルシファーは、錬成した光の剣をピタッと止め、なんとも言えない真顔になった。
『ソレハ、タイヘンダー』
感情の全く籠もっていない、驚くほどのカタカナ棒読みのセリフを残し、ルシファーはそのまま光の中に消えていった。おい、魔王としての威厳はどこに忘れてきたんだよ。
嵐のように現れては、コントのセットを片付けるように一瞬で消え去っていった大罪悪魔たち。
博麗の巫女も唖然とする中、残された俺たちは、しばらく誰も言葉を発することができなかった。
そんな中、空っぽの賽銭箱を抱えたまま、悪魔たちのスカスカな大移動を見ていた強欲の悪魔マモンが、ぽつりと呟いた。
『ア ホ く さ』
スペースを空けたガチのトーンだった。
あまりのくだらなさに、悪魔としてのやる気が一瞬でゼロになったらしい。
『お嬢様口調は?』
足元の小さなルクスが、冷めた目でかつての同僚に鋭いツッコミを入れる。
『もう帰るですわ』
マモンは無理やり語尾だけを「ですわ」に変えて取り繕うと、抱えていた空っぽの賽銭箱をベチャッと地面に放り出し、そのまま大慌てで魔界へ繋がる穴へと飛び込んでいった。
引き際だけは、強欲の悪魔らしく実にあっさりとしたものだった。
「……何だったんだ、一体」
俺はガシガシと頭を掻きながら、完全に疲れ果ててため息をついた。
マモンが魔界に帰っていった後の博麗神社には、再びなんとも言えない、気まずい沈黙が流れる。
「……」
「……」
「……」
全員が完全なる無言。
またさっきの17話みたいに、物語が1ミリも進まない虚無の時間が訪れようとしていた。
このままじゃまた読者さんに謝る羽目になる! 焦った俺は、沈黙を打破するためにとんでもない提案をぶち上げた。
「歌でも歌う?」
「著作権に引っかかる」
妹紅が、なろうの二次創作ガイドラインや利用規約を本気で気にするガチのメタツッコミで即座に却下してきた。さすがに外の世界の著作権管理団体の恐怖は、幻想郷の不死の人間であっても逆らえないらしい。
「じゃ、じゃあ……早口言葉〜!」
「いぇーい」
(※やる気なし!)
俺の必死のヤケクソな盛り上げに対し、妹紅はおそろしくローテンションな歓声をあげた。だが、言ったからには引っ込みがつかない。俺は胸を張って、大声で言い放った。
「じゃあ俺言うね。――隣の柿は(!?)客食う客だ(???)」
謎の早口言葉。
というか、そもそも早口言葉にすらなっていない上に、文脈が怪奇現象のそれだった。
さっきまでツッコミを放棄してボケ倒していたはずの全員が、その瞬間、一斉に鋭い視線で俺を睨みつけた。
「新種の人喰い柿ですか?」
妹紅が、不気味なホラー風の真顔で真っ先に突っ込んでくる。
「途中から柿が客に変わったけど」
霊夢も、湯呑みを置く手を止めて理路整然と文字の矛盾を指摘してきた。
「食べ物から人間に昇格した?」
魔理沙まで、新種の生態系を発見したかのような目で純粋な疑問をぶつけてくる。
「今度はツッコミ担当ばっかかよ!!!」
俺は境内の中心で、頭を抱えて叫んだ。
なんなんだよ一体! さっきまであれだけ全員でメタボケを連発していたくせに、俺がちょっとボケた瞬間、全員がキレッキレのツッコミマシーンに進化しやがって!
だが、ツッコミマシーンと化したみんなの猛攻は、これだけでは終わらなかった。
「はいもう一丁!」
妹紅が、おそろしくローテンションな声のまま、言葉だけはノリノリで次の早口言葉を要求してきた。おい、その口調で「もう一丁!」とか言うなよ! テンポの落差で耳がおかしくなりそうだ!
だが、ここで引いたら主人公のプライドが許さない。俺は深呼吸をして、次こそはと誰もが知っている超定番の早口言葉に挑んだ。
「東京特許きょかかかかきょく(?)」
言えなかった。
というか、途中から完全にバグった機械みたいな音になっていた。
俺が言い終わった瞬間、妹紅は一歩前に踏み出し、スンッとした真顔のまま、腹の底から声を絞り出した。
「滑 舌 悪 す ぎ だ ろ」
スペースを空けた、ガチのトーンのツッコミだった。
外の世界の悪魔たちのノリの良さを見習ってほしいくらい、俺の滑舌への評価は容赦がなかった。
だが、滑舌マシーンと化した妹紅の追撃は、まだ終わらない。妹紅はポケットから手を出さないまま、さらに俺を追い詰めるような短いお題を投げかけてきた。
「手術言える?」
「しゅ☆%¥〒☆」
言えるわけがなかった。
というか、もはや日本語の50音ですらなかった。噛みすぎて脳の回路がショートしたのか、俺の口からは完全に文字化けした謎の怪音声が飛び出していた。
「なんて言った?」
妹紅はピクリとも表情を変えないまま、おそろしく冷ややかなトーンで聞き返してきた。
お願いだからそんな目で俺を見ないでくれ。今のは俺だってなんて言ったか分からねぇんだ。おい作者、主人公に「しゅ☆%¥〒☆」なんて奇声を上げさせるなよ!
「ふははは! 仙、お前最高だな! 魔法の森の珍獣より面白いぞ!」
魔理沙はお腹を抱えて大爆笑しながら、箒をパタパタと叩いている。
『……我が主、やはり一刻も早く永遠亭に戻り、永琳様に脳の精密検査をしてもらうべきです』
「ちょ、ルクス!?」
俺は思わず声を上げた。ルクスはもはや諦めを通り越して、本気で俺の心配をするような哀れみの目を向けてきている。
結局、博麗神社での誤解は解けたものの、最終的には俺の滑舌の悪さがすべてをかっさらっていった。
俺とルクスの幻想郷での明日は、一体どっちを向いているのだろうか。
読んでいただきありがとうございました!次回はなるべく早く出しますので、お待ちください。




