↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
17/50

『東方仙影譚』第十七話

どうも作者の炙りサーモンです。この作品は東方projectの二次創作です。パロディやメタ発言、作者の勝手な解釈などが含まれます。それでも大丈夫という方は次に進んでください。

 赤い鳥居をくぐり、俺たちは博麗神社の境内へと足を踏み入れた。

 夕暮れの静けさが広がる境内の奥――縁側に、お目当ての紅白の姿があった。

「あら、魔理沙に妹紅……それにそこの外来人。まだ生きてたのね」

 霊夢は湯呑みを片手に持ったまま、冷たい視線で大幣おんへいを引き寄せた。

 その瞳には、未だに俺の足元にいるルクスへの強い警戒心が宿っている。

 またあのおぞましい破壊力の光弾をぶっ放される前に、俺とルクスは、あらかじめ合わせておいた息で一歩前に出た。

『博麗の巫女ともあろう者が、確たる証拠もなしに無辜むこの人間を襲うとは、随分と野蛮な神社ですね。お賽銭が集まらないのも納得がいきます』

 小さな体のまま、ルクスが低く澄んだ大音声で言い放つ。

「なっ……化け物が喋った!? っていうか、お賽銭は関係ないでしょ!」

 霊夢が驚愕に目を見開き、痛いところを突かれて一瞬で顔を真っ赤にした。

 その完璧な硬直の隙を、俺は見逃さなかった。

 一歩踏み出し、痛む左腕を庇うことも忘れて、俺は霊夢を指差して怒鳴りつける。

「驚いたか? こいつは俺の自慢の相棒だ! 昨日は勘違いでいきなり殺しにきやがって! ちょっと一発殴らせろ、霊夢このヤロウ!!」

『……(随分と、我が主も野蛮ですね^^)』

 ルクスが後ろで、なんとも言えない微笑ましそうな視線を俺の背中に送っている気がしたが、今の俺の怒りはそんなことでは収まらない。

 鼻息荒く拳を握りしめる俺の肩を、後ろから妹紅が慌ててガシッと掴んだ。

「落ち着け仙! 気持ちは分かるが、そいつを今殴ったら逆に秒で殺されるぞ! お前まだ十七話目だぞ! ここで主人公が死んだら打ち切り不可避だ!」

 妹紅が、なろうの連載事情を心配する至極真っ当な(?)メタツッコミで俺をなだめてくる。

 だが、昨日の死の恐怖を思い出したら、俺の怒りはどうにも止まらなかった。俺は思わず天を仰ぎ、声を大にして叫ぶ。

「おい作者ァ! なんで殴らせてくれんのや! おぉい! こっちはガチで殺されかけたえんやぞ! 一発くらいイベントで殴らせてくれたっていいだろ!!」

 理不尽なストーリー展開への怒りを、空の向こうの創造主へとぶつける。

 するとその瞬間、どこからともなく、頭上から大音量の重低音ボイスが響き渡った。

『おい、なんでそんな作者に文句言うんや! お前んこと作ったんは作者の俺やぞ! 存在消したろか!』

 地響きのような天の声(作者)が、境内にベチャァッと降ってきた。

「え? 作者? え? 作者だよね今の?」

 あまりの直球な脅迫と、本当に天の声を演出しやがった存在に、俺は一瞬でスンッと真顔になった。おい、ラノベの主人公に向かって「存在消したろか」は一番言っちゃいけないNGワードだろ。

「おいおい仙、作者を怒らせるなよ。プロットの都合で出番減らされたらどうするんだ?」

 魔理沙が三角帽子を直しながら、冷や汗混じりに突っ込んでくる。

『我が主よ、ご安心を。もし作者に存在を消されそうになっても、この巨体(※現在は小さな使い魔モードですが)で文字通りデータごと守り抜いてみせます』

 ルクスまでが、健気なんだかメタいんだか分からない忠誠心を真顔で誓い始めた。

「……っていうか、さっきからなんなのよあんたたち」

 完全に置いてけぼりにされていた霊夢が、お茶をすすりながら冷めた目でこちらを睨みつけてくる。

「人の境内に乗り込んできて、作者だの打ち切りだの、勝手に外の世界のメタな専門用語で盛り上がらないでくれる? 文字数が無駄に消費されるでしょ」

 博麗の巫女すらも、なろうの1話あたりの平均文字数を気にする始末。

 ツッコミ担当がほぼいない、全員がボケ(メタ発言)に全振りしたカオスな空間が、そこには完成していたのだった。

 さっきまで「一発殴らせろ!」と一番ブチギレていたはずの俺は、急にスンッと賢者モードになり、まるで喧嘩を仲裁する幼稚園の先生みたいな優しい笑顔でみんなを見回した。

「まぁまぁみんな落ち着いて……あやとりでもやろうよ」

 謎のあやとり提案。

 緊迫した博麗神社、誤解を解きにきたはずの復讐戦(?)の場で、俺の口から出たのはまさかの伝統的な毛糸遊びだった。

 さすがにこの超展開には、全員が呆れてツッコむだろ――そう思った俺が甘かった。

「やろう(!?)」

 妹紅が、なんの躊躇もなく本気の目で乗っかってきた。おい、さっきまで俺を必死に宥めてた熱血キャラはどこに行ったんだよ。

「ナニソレやろう(!?)」

 魔理沙まで、見たこともない新種の魔法道具を見つけた時のようなキラキラした目を輝かせて、箒を放り出さんばかりの勢いで食いついてくる。

『諦めよう』

 隣で佇むルクスが、静かに天を仰ぎながら、この世界のすべてを、そして自分の主の精神状態を悟ったかのような声でぽつりと呟いた。元・憤怒の悪魔が、怒りではなく諦観の境地に達した瞬間だった。

「ツッコミがいないとこんなカオス(???)なんだ……」

 それまで散々冷めたメタ発言を繰り返していた霊夢ですら、完全に目の前の狂気に圧倒され、湯呑みを震わせながらガタガタと引き攣った笑みを浮かべていた。

 もはや誰も、何のためにここに集まったのかすら覚えていない。

 博麗神社の境内は、一瞬にしてカオス極まる「あやとり会場」へと変貌を遂げようとしていた。

 ――なわけないだろ! ちゃんと続きやりますよ!?

 すみません読者さん、くだらんことして!

(※ナレーションは仙がただいま大慌てでやっています。このままだと本当にあやとりで1話分終わってしまうところだった。危ない危ない)

「はっ……!? 俺は一体何を……!?」

 俺はハッと我に返ると、ポケットから出しそうになっていた謎の毛糸を即座に仕舞い込んだ。

 あやとりの構えをとっていた妹紅と魔理沙が「チッ、やらないのかよ」と言いたげな不満げな顔をしたが、それは無視だ。

「おい霊夢、話を戻すぞ! 俺たちはあやとりをしに来たんじゃなくて、昨日の誤解を解きにきたんだ!」

 俺がビシッと霊夢を指差すと、霊夢はようやく恐怖から解放されたようにホッと胸を撫で下ろし、大幣をトントンと地面についた。

「そうね、さっさとその本筋に戻して頂戴。これ以上メタボケを続けられたら、私のキャラ崩壊が止まらなくなるところだったわ。……で? 誤解って何よ」

「俺とルクスは、幻想郷を脅かす異変の犯人なんかじゃないってことだ。俺はただ外の世界から迷い込んできただけの普通の人間だし、ルクスは俺の影から生まれた相棒なんだぜ!」

 俺が胸を張して言い切ると、足元の小さなルクスも『その通りです』とばかりに、静かに紅い瞳を霊夢へと向けた。

 これでようやく、博麗の巫女も真面目に話を聞いてくれる――そう思った。

 だが、霊夢は湯呑みを口元に運ぶと、薄笑いを浮かべながら鼻で笑った。

「ウッソだァ〜」

「殴るぞ」

 俺は一瞬で笑顔を消し、ガチのトーンで拳を固めた。

「……」

「……」

 霊夢と俺の視線が火花を散らす。

「……」

「……」

 妹紅も、魔理沙も、ルクスまでもが言葉を失い、博麗神社の境内に完全な静寂が訪れた。誰も動かない。風の音すら聞こえない。あまりにも長すぎる、不穏な、そして完全に無駄な沈滅(沈黙)。

「いや物語進まねぇよ!!!」

 耐えかねた俺が、自分のセリフに、そしてこの場の空気に全力でツッコミを入れた。

 そうだ、俺がツッコミをサボったら、本当にこの17話は無言のまま終わってしまうところだったんだ!

「あ、ごめん」

 霊夢がハッとしたように湯呑みを置き、すんなりと頭を下げて謝ってきた。

 なんなんだよ一体! 巫女のプライドはどこに捨ててきたんだ!

「悪かったわね、ちょっと新顔をからかってみたかっただけよ。……本当は、あんたたちが鳥居をくぐる前に、永琳から『誤解だから手を出さないように』って伝書鳩が届いてたのよ」

 霊夢はバツが悪そうに頭を掻きながら、ようやく本当のことを話し始めた。

 なんだ、最初から誤解だって分かってたのかよ。本当に人騒がせな巫女だな……。

「まあ、大怪我させたのは事実だし、あの一撃を耐え切るなんてあんたの相棒も大したものだしね。……お詫びに、私が直々に修行をつけてあげても――」

『なわけねぇだろそんなあるある展開は嫌だよ』

 霊夢がしおらしくお詫びの提案を口にしたその瞬間、空の向こうから、さっきの関西弁の重低音ボイスが容赦なくツッコミを叩き込んできた。

「……え?」

 霊夢が提案の途中でポカンと口を開けて固まる。

 おい作者ァ! なんでお前が霊夢の提案を全否定してんだよ!

 そこは普通、ラノベの新展開として修行して強くなる王道の流れだろ!

『そんな使い古されたあるある展開、俺の作品では絶対にやらん! 仙、お前は修行なんかさせんからな!』

 天の声が、己の執筆ポリシーを大音量で主張してくる。

 どうやらこの物語の創造主は、王道の修行イベントが死ぬほど嫌いらしい。

「ちょっと魔理沙、今の声何……? なんか私の脳内に直接、私のセリフのダメ出しが聞こえたんだけど……」

 ついに霊夢の耳にまで作者の声が届いてしまったらしく、博麗の巫女が本気でおびえ始めた。

「安心しろ霊夢。あいつは作者だ。展開の都合が気に入らないと、すぐに天から怒鳴り散らしてくるんだぜ」

「本当、我が儘な作者だねぇ。まあ、修行展開がボツになったのは、文字数が節約できていいんじゃないか?」

 魔理沙と妹紅が、もはや驚きもせずに「いつものこと」のように空を見上げてやれやれと首を振っている。

 すると、天の向こうの創造主は、今度は情けない声を上げて愚痴をこぼし始めた。

『霊夢、台本渡したじゃぁ〜ん! なんでその通りにやらへんのや! (あ、読者の皆様すみません。グダグダで、そういう作品なのでお許しを!)』

 天の声が、作中のキャラへの文句と、読者様への全力の言い訳を同時に叫んでいる。

 おい作者、読者さんにダイレクトに謝るくらいなら、最初からもうちょっと計画的にプロットを組んでくれよ!

 そんな天からの情けない訴えに対して、霊夢は湯呑みをコトッと置くと、何でもないことのようにあっさりと言い放った。

「あ、ごめん捨てた」

『捨てたァ!?』

 空の向こうで、作者の魂の絶叫が響き渡った気がした。

 

「だって、そんなありきたりな修行台本、読んでる方も退屈でしょ。だいたい私、お詫びに修行をつけてあげるほど暇じゃないし、お茶の時間が遅れる方が死活問題だわ」

 霊夢は全く悪びれる様子もなく、むしろ台本を捨てた自分を正当化している。博麗の巫女のマイペースさは、世界の創造主の命令すらも紙クズ同然に扱うらしい。

「まぁ、霊夢が台本通りに動かないのは今に始まったことじゃないからな」

「全くだね。作者もいい加減、こいつの自由奔放さに慣れるべきだよ」

 魔理沙と妹紅が、完全に作者を哀れむような目で見つめている。

 主導権を握るはずだった作者が一番の被害者になるという、これまた凄まじいカオス展開がそこに繰り広げられていた。

 ――まぁ、台本が捨てられちまったもんはしょうがない。

 これでようやく、昨日の誤解も解けて一件落着……。

 そう思って、俺がホッと胸を撫で下ろした、その瞬間だった。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!

 突故(突如)として、博麗神社の境内全体が、地響きのような不気味な振動に包まれた。

「な、なんだ!? 地震か!?」

 俺が慌てて周囲を見回すと、妹紅も魔理沙も、いつの間にかお茶を飲む手を止めて鳥居の方を鋭く睨みつけている。

 ただの地震じゃない。鳥居の向こうから、妖怪の妖気とは明らかに異なる、禍々しくも圧倒的な『異世界の魔力』が津波のように押し寄せてきているのだ。

『あ、マモンか』

 足元の小さなルクスが、その名を呼んだ。

 マモン。キリスト教の七大罪において、ルクスの『憤怒』と並ぶ、『強欲』を司る大悪魔。

 そんなとんでもない世界の大物が、なぜか博麗神社の鳥居の下に堂々と佇んでいた。

 一体、どんな恐ろしい陰謀を企ててやってきたのか――俺たちがゴクリと息を呑んだ次の瞬間、強欲の悪魔マモンは両手を天に突き上げて高らかに叫んだ。

『神社に来たからにはここの有り金全部奪い尽くしてやりますの〜!』

 まさかの、ただの賽銭泥棒(物理)の宣言だった。強欲の方向性が随分とせこい。

『あ〜、マモン。やめた方がいいぞ』

 足元のルクスが、すべてを察したような、なんとも言えない哀れみの目を向けながら静かに忠告する。

『そんな関係ねぇですの〜! 強欲の悪魔の恐ろしさ、思い知るですの!』

 マモンはルクスの忠告を無視して、ものすごい勢いで境内の奥、賽銭箱や社務所へと突撃していった。霊夢は止めるでもなく、ただお茶をすすりながら「どうぞご自由に」と冷めた目で見送っている。

(数分後)

『ここの神社、なんもねぇですの……』

 ボロボロの賽銭箱(中身は空っぽ)を抱えたマモンが、魂の抜けたような顔でトボトボと戻ってきた。あまりのおもしろい(おぞましい)貧乏ぶりに、強欲の悪魔のプライドが完全に粉砕されたらしい。

『だから言ったのに』

 ルクスが深いため息をつきながら呆れ顔で呟いた。

 こうして、地獄からやってきた恐るべき強欲の悪魔マモンは、博麗神社の「絶対的赤貧」の前に敗北したのだった。

 誤解が解けたと思ったら、今度はとんでもなく騒がしい同僚の来襲。

 俺とルクスの幻想郷での日々は、まだまだ一筋縄ではいかないらしい。

読んでいただきありがとうございました!次回はなるべく早く出しますので、お待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。