『東方仙影譚』第十一話
どうも作者の炙りサーモンです。この作品は東方projectの二次創作です。パロディやメタ発言、作者の勝手な解釈などが含まれます。それでも大丈夫という方は次に進んでください。
『――朝が来ました。全員、目をあけてください』
永琳さんの厳かな声が響き、部屋に再び明かりが灯る。
俺は弾かれたように目を開け、冷や汗を拭いながら、恐る恐る周囲の席を見回した。
輝夜、優曇華、てゐ。
全員、いる。誰も欠けていない。
「……え? 誰も、死んでない?」
俺が呆然と呟くと、ゲームマスターの永琳さんが手元の資料をめくりながら、フッと不敵な笑みを浮かべた。
「ええ、昨晩の犠牲者は『なし』よ。どうやら優秀な【騎士】が、人狼の襲撃を見事に阻止して守り抜いたようね」
――うおおおおおっ、騎士ナイス!!!
人狼ゲームにおいて、初手の夜に誰も死なないのは、市民陣営にとって最高に有利な展開だ!
肩の上のルクスも、俺の興奮を察して『きゅ~っ!』と小さなドラゴンの翼をパタパタさせて喜んでいる。
「あら、誰も死んでないなんて、つまらない夜ねぇ」
輝夜さんがつまらなそうに頬杖をつく。
いや、お前が人狼だったら確実に誰かを殺しにいってたはずだ。それが防がれたってことは、やっぱり輝夜が人狼なのか……?
いや、待てよ。
「……なぁ、てゐ。お前、昨日の夜は誰を占って、どんな結果だった?」
俺は、唯一の生き残り占い師(自称)である詐欺師兎に鋭い視線を向けた。
「え~? 教えてあげてもいいけどさぁ」
てゐはニヤニヤと怪しい笑みを浮かべ、長い耳を揺らしながら俺の顔を覗き込んできた。
「ねぇ仙くん。もし私が、昨日の夜に【あなた】を占って『人狼』って結果が出てたら、どうする?」
「はぁ!?」
心臓がドクン、と嫌な音を立てた。
俺はただの市民(無職)だ。絶対に人狼なわけがない。
つまり、てゐは俺をハメようとして、わざと嘘の結果を言おうとしている。
「ちょっとてゐ! 仙が人狼だったの!? じゃあ、やっぱり私の霊媒師の直感通りじゃない! 今日の昼のターンこそ、このガキを吊りましょう!」
輝夜さんがここぞとばかりに身を乗り出して、勝ち誇った顔で俺を指差す。
しまっ、た……!
人狼ゲームは得意なはずなのに、てゐのハッタリと輝夜の私怨コンボのせいで、またしても俺が一番怪しい容疑者に仕立て上げられようとしていた。
「待て待て待て! 俺は市民だって! てゐ、お前が嘘つきの人狼だろ!!」
輝夜さんとてゐの二人に挟まれ、ゲームオーバーの危機がマッハで迫る。
――だが、こういう時こそ慌てちゃいけない。人狼ゲームは、焦って大声を出し始めた奴から怪しまれて吊られるのが鉄則だ。
俺は深く息を吸い込み、頭をフル回転させて、一番の「矛盾」を突くことにした。ターゲットは、自称・霊媒師のニート姫だ。
「なぁ輝夜さん。俺を吊る前に、まずはお前の仕事をしなよ。……昨日吊られた妹紅の役職は、結局どうだったんだ? それ次第で、てゐの言ってることの真実味も変わるだろ」
俺の冷静な指摘に、輝夜さんはハッとした顔をして固まった。
霊媒師が初日に死んだ妹紅を「人間」と判定すれば、てゐが本物の占い師である確率が上がる。ゲームの勝敗を分ける、超重要な結果発表の瞬間だ。
全員の視線が、輝夜さんの唇へと集まる。
輝夜さんは人狼カードを持つ指を少し震わせ、気まずそうに目を泳がせながら、ポロッと呟いた。
「……ごめん、みてない」
――は?
「夜のターン、眠くて確認するの忘れちゃった♪」
――和室が、本日一番の、絶対零度の静寂に包まれた。
肩の上のルクスすらも、ドン引きしたように『きゅ、きゅぅ……』と声を漏らしている。
あ、絶対コイツ。
え、絶対コイツ(人狼)じゃね?
仮に本物の霊媒師だとしても、村の勝利を完全に放棄した戦犯ニートである。
場の空気が一瞬でひっくり返り、輝夜さんに向けて、永琳さん、うどんげ、てゐ、そして俺からの、氷のように冷たい視線が一斉に突き刺さるのだった。
「……ひ、姫様? いくらなんでもそれは……」
「ちょっとみんな、そんなゴミを見るような目で私を見ないでよ!」
輝夜さんが必死に言い訳をするが、もう遅い。
その後、行われた投票タイムでは、実の身内である優曇華さんすらも無言で輝夜を指差し、満場一致で輝夜が吊られることになった。
「ちょっとぉー! なんで私なのよー! 永琳の裏切り者ぉー!」
叫ぶ輝夜さんは、ルールに従って優曇華さんにズルズルと廊下の奥へ引きずられていく。本日三度目となる永遠亭お馴染みの連行風景を眺めながら、俺は「やれやれ」と肩をすくめるのだった。
読んでいただきありがとうございました!次回はなるべく早く出しますので、お待ちください。




