6話 同棲は思ったより夢がありました
「片野。わたくしの布団のシーツを洗濯しなさい」
「男に洗わせるなんて不本意だが…頼む」
「本当は私がやるべきなんですが…お願いしますね」
そう言って出ていった3人を横目に、俺は3人分のシーツを真希が前に『創造魔法』でつくっといた箱に『水属性魔法』で中に水を生成する。
そして、シーツを入れようとしたところで止める。
俺は部屋に誰もいない事を確認し、
思い切りシーツに顔をうずめた。
いい匂いが俺の鼻に…
楽園だ。人間のままだった俺の特権だ。
この時間がいつまでも続けばいいな、そう思った時…
―――3人が軽蔑したような視線で睨んでいた。
「『呪われし風の魔神よ 罪深き者に死の報いを』っ!!!」
鈴原の放った魔術により、俺の身体は吹き飛ばされ、壁にめり込んだ。
◇
こんな俺と、鈴原、井上、神崎の同棲生活が始まったのは数日前。
「どうしましょう。私達帰れませんわ」
鈴原が絶望の表情で言う。
「取り敢えず当分の寝泊まりは保健室だな」
至極残念そうに井上が言う。
「そんなの考えられませんわ」
「いや鈴原。お前は専用のベットがあるから平気だろ」
そう、机、椅子など全て自分で買った新品を使う鈴原は、保健室のベットでさえ自分専用の物を使っているのだ。
因みに洗濯は毎日家の者に取りに行かせ、クリーニングに出しに行く。
「洗濯は、洗濯はどうするのです。ここ洗濯機も無ければ地下だから干す事もできませんわ」
「そんな事はどうでもいい。問題はこいつだ」
そう言って井上は俺を指差す。
「こんな根暗で年中盛ってそうな男と同室で寝たら、いつ襲われるかわからないぞ!」
いやいや、健全な俺が勝手な誤解されてるのだが。
「ほら、否定しないのが何よりの証拠だ!」
喋れない俺の代わりに弁護人を要求する。
「いや、陸はそんな事しないよ!」
真希が庇ってくれる。
こいつに感謝したのは始めてかもしれない。
「中学生の時にピーー(自主規制)な事をしただけ…」
い、異議あり!冤罪だ。
人の黒歴史を掘り返すでない。
「まあまあ。寝る場所が他に無いから仕方ないですよ」
天使が舞い降りた。
「むうーー」
鈴原が悔しそうに唸った。
◇
そして今に至る。
真希はどうやら「豪華な部屋」というダンジョンマスター部屋があり、そこで生活するらしいが、毎日のように遊びに来る。
俺達はダンジョンの49階層を守らなければならない。
だが、ダンジョンマスターは、転移魔法で外に買い物しに行ったりしている。
曰く、「少しのお金ならダンジョンマスター部屋にあった」。
その金で食料を買って俺達やクラスメートのところへ持っていく。
しかし、金が尽きるのも近いだろう。
ここはダンジョン。倒した冒険者の装備を売れば、食べていける。
もう数日立っているが、このダンジョンには誰も来ないのだ。
俺は真希がつくった神器を売ればいいと思ったが、神器なんて持っていくと目立つと言う真希の意見で取りやめた。
「ああ、誰か冒険者来ないかな~」
そろそろ収入源が来ないとマズイ。そう思い始めた時。
「ダンジョンに侵入者。繰り返す、ダンジョンに侵入者」
警報のような音が鳴り響く。
音源はあの漆黒の封筒に入っていた石だった。
「何それ?私そんなの持ってないぞ」
警報に驚き怒りを忘れたらしい井上が言う。
他の2人も同様の反応を示していたので、この中では俺しか持っていないらしい。
よく見ると、石には『49』としるされている。
おそらく各階フロアボスが持っていて、上の階への鍵代わりになっているのだろう。
つまり、階を上るには、フロアボスを倒す必要があると言うことだ。
そんな事より侵入者だ。
だが、このダンジョンは巨大。結構時間がかかるだろう。
俺はソファーに倒れ込むと、
「え?侵入者が来たんじゃ…」
取り敢えず寝ることにした。
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