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雲ひとつない、晴れ渡った日。
私は国王と一緒に、日陰の天幕から騎士たちが手合わせをする様子を眺めていた。
片方で剣術の試合が繰り広げられている間。
もう一方では、馬上で槍を操る馬術試合が。
また別の場所では、弓術の試合が一目で見渡せるように進められていた。
「ここに集まった騎士たちは、王国でも実力を認められた精鋭たちだ。見て回って、気に入った者がいればこっそり教えてくれればいい。」
人々を無理やり参加させたわけではないという。
意思を尋ね、同意した者だけがここにいるのだと。
皆かなりの腕利きばかりなので、誰を選んでも後悔はしないだろうとのことだ。
国王の話を聞きながらざっと見渡してみても、皆かなりの技量を持っているように見えた。
しかし、どうしても仲間を選ばなければならないのかについては、さて。
あまり気が進むことではなかった。
あえて仲間が必要なのだろうか?
今までも一人でうまくやってきたのに。
王都に来るまでに出会った人々を除けば。
今まで一人で旅をしてきたが、何の問題もなかったではないか。
あのなかに、クラドも来ているだろうかと探してみた。
しかし、姿が見えないところを見ると、ここには来ていないようだった。
「気に入った者はいないか?」
気乗りしない私の心を見透かしたのか、国王がさりげなく尋ねてきた。
「実は、自分が人々から勇者と呼ばれていることが、あまり実感が湧かなくて。」
「その気持ちはよく分かる。私も今この立場にいるが、未だに自分がブルートの国王だという事実が信じられない時があるのだ。」
いや、国王がそんなことを言ってもいいの?
「先代の王は私を捨て駒として扱ったのだが、王国から遠く離れ、戻ってきたら人々は私が王になるべきだと言い出した。今振り返ってみれば、おかしな話だったよ。」
生きていれば、予期せぬ出来事が不意に訪れることもある。
その出来事が福となるか禍となるかは分からないが、どの道を選んだとしても、後悔はつきものだという。
大切なのは何を選ぶかではなく、いつか振り返った時に、後悔を残さないことなのだそうだ。
「では、今まで後悔したことはないのですか?」
「ないわけがないだろう。現に昨日だって、夜中に間食をしなければよかったと後悔しているのだから。」
やっぱり変な人だ。
「ひとつ聞きたいことがあるのですが。」
「何かな? 王妃の知らない愛人についてなら、答えることはできないぞ。」
そんなわけないでしょう。
そんな私生活、知りたくもありません。
「私生活がどうであれ、尊重いたします。」
「わはは、それなら何でも聞いてくれ。我が王国から勇者が現れた記念に、私が何でも教えてやろう。」
「私たちが初めて会った時、私が勇者だと気づいておられましたか?」
実質的に、師匠から譲り受けた剣を見て、私が勇者かどうかを見抜いたのかと尋ねているのと変わりなかった。
「うーむ、難しい質問だな。いっそ愛人のことでも聞いてくれれば、はっきり答えられたのだが。」
しばらく遠くを見つめて悩んでいた国王が、言葉を継いだ。
「そうでもあり、そうでもないな。」
「それはどういう意味ですか?」
「言葉通りの意味だ。だが、女神様が公認されたのだから、そういうことにしておこうか。」
はぐらかすつもり?
後悔を残すなと言ったのは、どこの誰だ。
私は国王の方へ身を乗り出し、低く囁いた。
「私、実は聖所にある剣を抜いたことはないんです。」
その言葉に、私をじっと見つめる国王。
何と言うだろうか。
妙に胸がドキドキする。
私は失敗したのだろうか。
そんなはずはないのに、周りの人間全員が私を見ているような気がした。
その時だった。
馬術試合で使われていた木製のランスが砕け散り、その破片が私の方へと飛んできた。
しかし、国王が局所的な魔法を使い、跳ね飛んできたランスの破片を防いだ。
トサッ。
虚空で静止したかのように止まり、そのまま下へと落ちる破片。
「気をつけねばな。騎士という人種は相当に荒っぽくてな、味方なら心強いが、血気盛んな連中だからこうしていつ何が起きるか分からん。」




