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そうして、ここに来るまでにあった出来事も話すことになった。


「…報告を受ければわかることだが、短い間にいろいろあったのだな。私も昔は、仲間と呼べる者たちと冒険に出たことがあってね」


驚くべき言葉だった。

全くそうは見えないのに。

一国の国王が冒険に出てもいいのだろうか。


「それは私が王位継承順位が低かった頃の話だよ」


国王の話によると、王位継承順位が低く、誰も自分に目もくれなかった時代の物語だという。

遠い目をして、過ぎ去った日々を愉しげに語る国王からは、その日への切なさが感じられた。


「おっと、あまりに無駄話が過ぎたかな」

「いえ。私も楽しかったです」

「そう言ってもらえると助かるよ。大臣たちは私がこの話を切り出すと嫌な顔をするので、話す甲斐がないのだ。それはそうと、ここへ来るまでに他の騎士に会ったことはないかね?」

「騎士、ですか?」

「ああ。あるいは、平民に扮した多数の敵だったかもしれん」


王国の騎士が敵だって?

なぜそんなことを言うのかわからない。

国王の言葉をじっくり考えてみたが、特に思い当たる節はなかった。

しかし、ふとアトラス山脈で墓を作り、そこにあった白骨を埋めたことを思い出した。


「山を越える時に騎士の遺体は見ましたが、それが国王様のおっしゃる人たちのことかは分かりません」

「ふむ、遺体か。時期が一致するところを見ると、おそらく間違いないだろう。彼らは良からぬ意図で行ったのだが、私としては、ブルト騎士たちの葬儀を執り行ってくれたことに対し、感謝を伝えたい」

「…当然すべきことでしたから」


良からぬ意図?

私の知らないことがあったのだろうか。

すると、私に良い知らせと悪い知らせがあるという。


「どちらの知らせから聞きたいかね?」


国王が伝える知らせなんて、あまり聞きたくないのだけど。

それでも選ばなければならないのなら、良い知らせは後にしたかった。

良い知らせで悪い知らせを上書きしてしまいたかったからだ。


「悪い知らせから聞きます」

「お前が見たという騎士の遺体は、第七王子が送った刺客だろう」

「!!」


国王の言葉に驚愕した。

いや、いつ私を見たっていうの、殺そうとするなんて。

悪い知らせがこの程度なら、良い知らせとは何なのだろうか。

私は一度深呼吸をして、良い知らせを聞きたいと言った。


「良い知らせは、私が遅ればせながらその事実を知ったということだ。お前が実際に騎士たちと剣を交えたのならともかく、起こらなかったことのために第七王子を殺したくはないからな。息子の母親である王妃が私を恨むだろう。だが、お前が第七王子を殺せと言うなら、私がそう命じよう」


私の望む通りにすると言ってはいるが、結局、私の答えは決まっていた。

これが青い血(貴族)の話術なのだろうか。

難しい。


「国王様のおっしゃる通り、私は騎士を見たことも、第七王子のせいで被害を受けたこともありませんから、彼を殺さなくても大丈夫です。ただ、今後そのようなことが起きなければいいのですが」


刺客なんて恐ろしい人たちが私のところに来ることは、もう無くなってほしい。

夜はぐっすり眠りたいんだから。


「はは、心配しなくていい。今後このようなことは二度と起きないと、私が保証しよう。そして第七王子は地方の領地へ送ることにする。そうすれば追従する勢力も瓦解するだろうから、第七王子への罰としては十分だと思うのだが、どうかな?」

「あ…はい。その程度で大丈夫です」

「感謝する。二度とそんなことはさせない。約束しよう」


結局、自分たちで問題を起こして、自分たちで解決した形だった。

第七王子が送ったという刺客に直接会ったことがないせいか、誰かが私の命を狙ったという事の深刻さは認識しつつも、それほど実感は湧かなかった。


「賢明な子だったのだが、不可能な欲に目が眩んでしまった。謝罪の意味を込めて、お前のための宴を開こうと思う。神殿に寄らねばならんが、あちらでも準備があるそうだから、残りの時間を有意義に過ごせるといい」



「どうしよう……」


私はあてがわれた部屋のベッドに横たわり、ぼんやりと天井を見つめた。

本来なら、自分が勇者ではないということを認めてもらって去るつもりだったのに、国王との対面があまりに衝撃的で、一番重要な「私は勇者ではない」という言葉さえ切り出せなかった。


なぜか分からないが私を殺そうとした王子。

そして、魔法使いかもしれない国王。

一気に脳の容量を超える出来事が押し寄せてきて、結局、頭がオーバーヒートしてしまったのだ。

その上、私のために宴を開くと言われて、プレッシャーで胃がキリキリ痛んだ。


その時、ドアを叩く音が聞こえてきた。


「入ってください」

「失礼いたします」


ドアを開けて入ってきたのはメイド。

私が王都に滞在する間、専属メイドが配属されたのだが、それがベティだった。

私への配慮なのか、私と年齢も近く、可愛らしい顔立ちで親近感が湧いた。

ベティは食事が載ったカートからテーブルへ料理を移しながら、新しい知らせを伝えてきた。


「明日、騎士団長様が勇者様にお会いしたいとおっしゃっています」

「行きたくないけど……必ず行かなければなりませんか?」


誰かも知らないのに、私が行ってどうするっていうの。

私に会いたい?

それなら本人が来るべきでしょ。


「招待に応じなくても構いません」


そうだよね?

ここで暮らすわけでもないし。

顔色を伺わなくても、文句を言う人はいないってことだ。

騎士団長だか何だかの招待に応じないと伝えようとした瞬間、ベティが残りの言葉を伝えてきた。


「勇者様が即座に招待に応じなければ、この言葉も伝えてほしいとのことでした。騎士クラドの父として勇者様にお会いしたい、と」


えっ?

騎士団長がクラドのお父さん?

鏡がないから自分がどんな顔をしているか見ることはできなかったけど。

今の私の顔がどれほどひどい有様か、わざわざ鏡を見なくてもわかる気がした。

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