72.その天秤に賭けるのは神と巫女
「えっ!? お爺ちゃん月曜都市に行っちゃったの!?」
逸るアルベルトを宥め、水曜都市にやってきたデュオ達は早速ここを拠点として活動している『AliveOut』のメンバーと接触を図った。
水曜創造神の攻略に真っ最中だと思われていたが、聞けば既に水曜創造神は倒され直属の神秘界の騎士も攻略済みだと言う。
勿論倒したのは水曜創造神を目標としていた鈴鹿達だ。そして嬉しい誤算として七王神の闘鬼神と時空神が激戦の中、助っ人として現れたらしい。
らしいと言うか、その内の1人である時空神がデュオ達の目の前にいる。
水曜創造神攻略が終わった後始末をしている『AliveOut』に連絡を取ってもらい、攻略の主要メンバーの所へ案内してもらったのだが、この場に残っていたのは大賢神ベルザ、戦女神ローズマリー、時空神疾風の七王神の3人だけだった。
デュオはベルザとの再会に無事に水曜創造神を攻略できたことを喜んでいた。
だがその後の展開を聞いて当てにしていた鈴鹿達が既にこの場にいない事に頭を悩ませる。おまけに残されたベルザ達は現在戦闘不能状態だと言うから予想外の事態だ。
「鈴鹿がThe Devilの『契約』?を受けて直ぐに月曜都市に向かったのね。で、ベルザさん達は秘宝の欠片?と言うのを取られて力が出せない状態なのね」
「そうなのよ。下手をすれば鈴鹿の命が危ないから直ぐにでもThe Devilの居る月曜都市に向かった方がいいってラヴィが。
流石に鈴鹿が心配だったからフェルも虚脱状態にも関わらずついて行ったわ。ヴァイとアッシュさんも一緒にね」
水曜創造神と神秘界の騎士・Deathを攻略した鈴鹿達だったが、最後の最後で乱入者が現れたと言う。
それがThe Devilであり、鈴鹿に『契約』を受けさせフェンリル達七王神を戦闘不能にした原因でもあった。
鈴鹿が受けたと言う『契約』はThe Devilの特殊能力であり、内容が近日中にThe Devilの命を奪う事だと言う。
この近日中と言うのが厄介で、下手をすれば1日との解釈も取れるらしいと言うのがラヴィの談。
ラヴィはThe Devilとの面識があり、親しい仲だったためThe Devilの特殊能力を知っていたからだ。
その為、直ぐにでもThe Devilを攻略する必要があり、水曜都市での後始末もお座なりに月曜都市に向かったのだと。
そして厄介な事に実はフェンリル達の魂には、八天創造神が目標としていた不老不死の法が記された秘宝の欠片が隠されており、これを抜き取られたことにより一時的ではあるがベルザ達は現在力を出せない虚脱状態なのだと言う。
この秘宝の欠片を七王神に埋め込んだのは実は裏切りの神であり、裏切りの神は既に100年前に不老不死の法を発見していたのだ。
だがこの不老不死の法に危機感を覚えた裏切りの神は7つの秘宝の欠片に分けて密かにそれぞれ七王神の魂に隠した。
尤も秘密と言うのは何処から漏れるのか分からない。
八天創造神の水曜創造神は不老不死の法を探るうちにこの秘宝の欠片を突き止め、七王神から秘宝の欠片を抜き取る策を用いた。
まずは異世界に帰還した七王神を強制召喚で神秘界に呼び寄せた。
そして運よく何も知らない状態の天魔神アッシュを捕まえDeathの能力を使い魂から秘宝の欠片を抜き取った。
アッシュを人質に使いフェンリル達をおびき寄せ、見事に秘宝の欠片を奪い取った。
途中で現れた闘鬼神ヴァイオレットと時空神疾風の秘宝の欠片を奪えたのは水曜創造神にとっては幸運だった。
だが同じ八天創造神の月曜創造神も同じく秘宝の欠片を狙っていたのは予想外と言えた。
更にヴァイオレットが密かに仕込んだ策が更なる混乱を招いた。
実はヴァイオレットは自分の中にある秘宝の欠片を七王神の力ごと鈴鹿に移していたのだ。
その策が見事にハマり混乱を極めた水曜創造神だったが、その隙を突かれ第3の陣営・月曜創造神の直近の神秘界の騎士The Devilが乱入してきて水曜創造神の5つの秘宝の欠片を奪ってしまったのだ。
そして残りの1つ、鈴鹿の中にある秘宝の欠片を奪う為『契約』を結び月曜都市に呼び寄せたのが今回の戦いで起こった内容だった。
そして残されたベルザ達の元に探していた謎のジジイが現れたのだが、話を聞くと直ぐに月曜都市に向かってしまったのだと言う。
「まさかとは思ってたけど、謎のジジイがジージーだったとはね・・・」
ベルザ達は唐突に現れた謎のジジイとの再会に何処か嬉しいやら申し訳ないやらの複雑な表情をしていた。
「お爺ちゃんが異世界人だってのは聞いたけど、やっぱり知り合いだったの?」
「そうね、100年前に共に肩を並べて戦った仲ではあるわね。もしかしたら七王神じゃなく八王神だったかもしれないわ」
その言葉にデュオは謎のジジイの強さに納得がいく想いだった。
しかも聞くところによれば七王神最強であるフェンリルと双璧を為すほどの実力だったのだと言う。
「それよりどうするんだよ、この状況」
ベルザ達より水曜都市で起きた事情を聞かされたわけだが、事態は好転したわけではない。
ウィルがこれまでの事よりこれからの事だろと言ってくるが、当てにしていた戦力が得られないとなるとどうするべきかデュオは頭を悩ませる。
「最悪、木曜都市へはあたしとウィルの2人でもいいけど、流石にアルベルトとアラキネだけで日曜都市へはやれないわね・・・」
「俺達2人だけで木曜都市にか? それもきつくないか?
・・・いや、相手がThe Hermitだけだとそうでもないか?」
「少なくとも木曜都市に行けば『AliveOut』の本部があるから手練れの1人や2人はいるでしょ」
「ああ、なるほど」
問題は日曜都市の方だった。
ただでさえ日曜都市は伏魔殿と化している話を聞く上、今のアルベルトはルーナの事で頭がいっぱいで冷静な判断が出来ない状態だ。
アラキネをアルベルトに付けて抑えに回ればまだ何とかなるが、アラキネはアラクネの魔物だ。
日曜都市内部に潜入するのにはとてもじゃないが向いていない。しかもアルベルトも猪の獣人であるためこのコンビが日曜都市に赴くのはとてもじゃないが不安しか出てこないのだ。
「話は聞かせてももらった! そう言う事なら僕達が日曜都市に同行しようじゃないか」
「え? だれ?」
そう言って話しかけて来たのは爽やかなイケメンだ。
スラリとした長身に誰もが見惚れるフェイス、体つきも決してガタイがいいとは言えないが鍛えた体をしているのが服の上からでも分かる。
そして身に着けた装備も正にカッコいいと言えるものだった。
左右に佩いた2本の太刀に、目を引く真っ赤なマント。如何にも勇者然とした青年だった。
その青年以外にも2人ほど傍に控えていた。
1人は重戦士とも言うようなフルプレートを装備し、身を隠せるような大盾を背に背負っていた。
そして装備に見合うようないかつい顔をした男だった。
もう1人は重戦士とは逆の魔術師の姿をした男の子だ。
身長よりも長い杖を担ぎ、魔力を高めるローブを羽織ったある一部の女子が騒ぎ立てる様な少年だ。
「自己紹介が遅れたね。僕は『AliveOut』の精鋭部隊のリーダー、ヴェルコだ。尤も今となってはリーダーと言うのも名ばかりのものだけどね」
「俺はゴラン。同じく精鋭部隊の1人だ」
「ボクはポルク。ヴェルコさんはこう言っているけど、実際にはちゃんとしたリーダーだよ」
思いがけない人物の登場にデュオは喜びを隠せないでいたが、少しばかり都合がよすぎるのではと勘繰ってしまう。
それはウィルも同様で、ヴェルコ達に精鋭部隊のリーダーが何故こんなところにいるのか、また協力してくれるのかを訊ねた。
「精鋭部隊のリーダーが協力してくれるのならこれと言ってない程有難いが・・・神秘界の騎士の攻略はいいのかよ?」
「そう、まさにそれだよ。さっきも言ったけど、精鋭部隊のリーダーは今は名ばかりでね。
僕達が神秘界の騎士を攻略する前に、ある時期を境に別の誰かが次々攻略して僕達の役割が奪われている状態なのさ」
「あー・・・」
デュオはそれに思いっきり心当たりがあった。
主にデュオ達と鈴鹿達のパーティーの事だ。
状況が状況であり否応なしとは言え、デュオと鈴鹿は神秘界に来てからかなりの神秘界の騎士を攻略している。
全く別の第三者から見れば精鋭部隊は名ばかりと言われても仕方ない状態なのだ。
そう思えばデュオはヴェルコ達に少しばかり申し訳なく思った。
「多分、今も僕の知らないところで神秘界の騎士が攻略されているんだろう。
ならば今の僕に出来ることは攻略した後の事後処理だろうと各都市をこうして回っていたわけだが・・・そこで君たちの会話を聞いたと言う訳さ」
「ヴェルコさんのこれまでの神秘界の騎士を攻略した功績もあるから全くの役立たずって訳でもないんですけどね・・・
まぁ、そんな訳でボク達をアルベルトさんのお供に付けて欲しいんです」
「ルーナには月の欠片で世話になった」
「少なくとも戦力には不足は無いと自負しているよ」
ヴェルコ達の有難い申し出にアルベルトは物凄く喜び今にも掴みかからんとばかりにデュオに了承を求めた。
デュオとしても今の現状を考えるとヴェルコ達の戦力はありがたかったので申し出を断る理由は無い。
一応ではあるが、『AliveOut』にヴェルコ達の素性の確認を取り、アルベルト達の日曜都市突入組に加えた。
「ふむ・・・ベルザ、いざと言う時の為に我々も彼らと共に日曜都市に行こう。
この虚脱状態も日曜都市に着く頃には8割方回復しているだろうし」
「・・・そうね。それじゃあに日曜都市に行くのは疾風とローズマリーにお願いするわ。
私はデュオちゃんと一緒に木曜都市に行くわ。流石に2人だけを向かわせるのも、ね」
疾風の申し出にベルザは了解し、同じように七王神も2手に分れることにした。
今は戦力外の状態だが、七王神の加入にアルベルトはこれでルーナを助けに行けるとかなり喜んでいた。
アラキネはそんなアルベルトを苦笑しつつも日曜都市に着いてからの事を考え、ヴェルコや疾風の加入に安堵する。
ヴェルコ達は話には聞いていたベルザ達の素性に驚愕しつつも共に戦えることにかなり興奮していた。
こうして戦力を整え、手早く準備を済ませデュオ達は2手に分れてそれぞれの目的地を目指す。
そして別れ際にヴェルコから木曜都市の置かれている状況を聞かされた。
「木曜都市そのものは今のところ異常はないが、木原城が球状になった影の霧に覆われて中に居る人たちが閉じ込められているらしい。
木曜創造神は勿論の事、クランマスターやサブマスターが閉じ込められていると聞く。
デュオも木原城突入の際は気を付けろよ」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「これはまた見事に真っ黒ね・・・」
デュオ達は走竜を限界まで走らせ何とか日暮れまでに木曜都市に到着する事が出来た。
そしてそこで目にしたのはヴェルコから聞かされたとおり、影のような霧が球状となって包まれた木原城だった。
「まずは『AliveOut』の本部に行きましょう」
デュオ達はそのまま木原城に突入したいのを堪えて、木曜都市の一角にある『AliveOut』の本部である屋敷へと赴いた。
そして本部では日も落ちようとしているにも関わらず喧騒に溢れかえっていた。
「うおぅ・・・予想通りって言うか・・・大騒ぎだな、こりゃ」
「そりゃあ、ギルドマスターもサブマスターも居なければね。それでもそれに次ぐ者がこの場を仕切っているはずよ。
まずはその人から話を聞きましょう」
取り敢えず近くにいた人達から今この場を仕切っている人物を訊ねるがどれも要領が得ず、複数の命令系統が乱立しており現場は混乱しているように見えた。
デュオはまさかとは思うがトップ2人が不在をいいことに『AliveOut』を手中に収めるべく仲間内で争いをしているのではと穿った見方をしてしまう。
だがこの混乱状況を見ればそう思っても仕方がなかった。
「どうやら命令系統は3人の人物に絞られるわね。
No3の人が命令を出しているけど、策が消極的過ぎて他の2人が独自に命令を出しているみたいね。それで現場が混乱しているっぽいわ」
どうやら本部ではベルザが七王神であることを知っている人達が居たらしく、彼女から話しかけられると落ち着きを取り戻しスムーズに話を聞き取ることが出来た。
尤もそれだけではなく、七王神が来てくれたと言う事が希望に繋がり落ち着きを取り戻したとも言えた。
「それじゃあまずはそのNo3の人を訊ねましょう」
そう言ってデュオ達はその人物に会ったが、全く話にはならなかった。
「私が現在『AliveOut』を取り仕切っているフェスターだ。
言っておくが、木原城への突入は認められないぞ。現在は防御を固め木原城に変化が訪れるまで警戒をするだけだ」
「ちょっと、何でよ。自分のところのクランマスターが捕まっているのよ? 助けないでどうするのよ」
「・・・救出なら向かわせたに決まっているだろう。だがあの影の霧の中に入った者は誰一人として出て来た者はいない。当然中からも連絡は無い。
もう既に何人ものクランメンバーを向かわせているんだ。これ以上人数が減るのは問題が生じる。
故に今は何があっても対処できるよう防御を固め変化を待つだけだ」
デュオの言葉にフェスターは反論する。余計な口を出すなと言わんばかりに。
実際、かなりの人数が飲まれたのでフェスターの言い分も分かるが、だからと言ってこのまま待っているだけでは事態が好転するはずもない。
「少なくともあたし達が行けば事態は動くはずよ」
「ああ、そうか。The Hermitは俺達をおびき寄せるためにこんなことをしたんだっけ」
その言葉にフェスターは不快感を顕わにする。
ウィルの言葉が正しければ、フェスターにとって今回のこの騒動はデュオ達が原因と言えたからだ。
無論本当の原因はThe Hermitであるが、己の身の安全を守りたいフェスターには関係のない事だった。
「すまないが君たちには協力は出来ないし、これ以上余計な騒動を起こして欲しくは無い。大人しくしてくれないか」
デュオもこれ以上話しても協力は仰げないと判断し、残りの2人の方へと向かう事にした。
そしてその内の1人に会う事が出来たが、これまた頭に血が上りすぎてとても冷静な判断が下されているとは思えない人物だった。
「おい! 何ちんたらやってんだ! 早くクラマスの救出に行ってこいや!
あ゛? 人数が集まらないから行けないだ? だったら1人で行ってこい! 1人でも助け出そうと根性を見せて見ろや!」
流石に1人ではあの影の霧の木原城には突入することは出来ず、オロオロしていたクランメンバーにその男――ガンバッシュが無謀な命令を下す。
「で、あんたらは何だ? ああ、こっちの事なんかお構いなしに八天創造神や神秘界の騎士の尻を追っている奴らか。
あんたら力あるんだろ? こんなところでぐずってねぇで早くクラマスを助けに行けや。
それとも何か? 自分たちが一番だから俺の命令は聞けないってか? あ?」
話にすらならなかった。
デュオは早々に切り上げて残りの1人に会いに行く。
「どいつもこいつも無能ばかりで困りますよ。
私の作戦通りに動けばクランマスターやサブマスターの救出はとっくに終わっているはずなのに」
そう言ってクランメンバーに嫌悪の感情を差し向けるのは『AliveOut』の色んな作戦を考える作戦部の1人、シュミットだ。
彼女は彼女でプライドが高く、命令されるより命令する方に生きがいを感じ、自分より下の者を見下すタイプの人間だった。
何故こんな人物が『AliveOut』に居るのかと不思議に思うが、よくよく考えれば『AliveOut』には善人ばかりが集まるわけではないのだ。
自主的に神軍に行った者達や八天創造神に実験体として捕まった者達を除けば、天と地を支える世界から来る冒険者の殆んどの『AliveOut』で受け入れているからだ。
中にはシュミットのような人物が居ても不思議ではない。
「作戦通りにいかないことだってあるわよ。時には臨機応変が求められることだってあるんだし」
「それは私の言う事を聞かないいい訳よ。まったく、最初の作戦がうまく機能していればこんな事にはならなかったのに。
役立たずばかり集まって私の作戦の邪魔をして。でもデュオ達が来てくれて助かったわ。これならあの作戦も上手くいく。なんたって七王神も居るんですもの」
薄気味悪い笑顔を浮かべ自分の思い浮かべる策に酔いしれるシュミット。
シュミットの策がどんな策かはしらないが、これまでの言動を鑑みればデュオ達の身の安全を考慮した策とは言えないだろう。
「あ、取り敢えず他に協力してくれる人がいないか探してくるわね。策は人がいっぱいいた方がやりやすいものね」
「ええ、そうね。貴女達が頼めば協力してくれる人が大勢集まるわ。お願いするわね」
勿論デュオはシュミットの策に乗るつもりは無く、その場しのぎの案を提示してそそくさとこの場を去ることにした。
そんな事とは知らないシュミットはまた薄気味悪い笑みを浮かべる。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「こりゃあ確かに現場は混乱するわな。命令している奴ら全員が自分勝手な奴らばかりじゃあな」
「まさかここまで酷いものだと思わなかったわ・・・こうしてみるとルーベットさんや狼御前さんって凄い優秀な人物だったのね」
『AliveOut』に協力を求めるはずが、逆に強制的に協力をさせられたり、救助をするなと言われたり、根性で何とかしろとか言われたり、散々たる結果だった。
さて、どうしたものかとデュオは頭を悩ませる。
「ベルザさんはまだ戦闘は出来ませんか?」
「予想通り大体8割くらい回復しているわ。普通の戦闘なら可能ね」
「うーん、最悪あたし達3人だけでルーベットさん達を救出する事になりそうね」
『AliveOut』の協力が得られない以上、木原城に突入するのは現在のメンバーで対処するしかないとデュオは覚悟を決める。
だが天はデュオに味方をする。
「急いできた甲斐があったな。可愛い妹が無謀な突入をしないで済みそうだ」
「うん、間に合って良かった」
これと言っていいほどないタイミングでデュオの元へ現れたのはソロとフレンダだった。
「ソロお兄ちゃん! フレンダ!」
「2人とも無事だったか!」
デュオとウィルは2人が無事でいたことに安堵し、この場に駆けつけて来てくれたことに喜ぶ。
ソロもデュオとの再会を喜びながらも、目の前に映る影の霧に包まれた木原城を鋭い視線で眺める。
「積もる話もあるだろうけど、まずは目の前の問題を解決してからにしようか」
「うん!」
ソロ達にしてみればThe Towerの夢現の塔で離れ離れになりその後の状況を聞きたいのだが、今は現在進行形で状況が悪化しているルーベット達の救出が先だ。
デュオもソロ達の加入はありがたかった。2人の加入により戦力は格段に上がり、ルーベット達の救出率も高くなったからだ。
5人はそのまま真っ直ぐに木原城へと向かう。
おそらくフェスターの指示だと思われる『AliveOut』のメンバーが木原城へ近づくデュオ達を止めようとしたが、それらを無視して城門の前に辿り着く。
「真っ暗・・・と言う訳でもなさそうだな」
ウィルはこちら側と向こう側の境界がキッチリ別れている影の霧を覗き、中に薄っすらと城門が見えてそう呟く。
影の霧は部分部分で明暗はあるものの、どちらかと言うと陽が落ちて薄暗くなった夕闇の様だった。
まずは安全確認の為ウィルが先行して影の霧の中へ入る。
ウィルに異変は見られず特に問題が無いようだったが、ウィルが戻ろうとしても影の霧の向こうから出てくることは出来なかった。
これは事前に聞かされていた誰も戻って来なかったと言う事から予想できていた。
つまり一度は行ったらThe Hermitを攻略するまで出てくることは出来ないと言う事だ。
尤もデュオ達は初めからそのつもりなので何のためらいも無く影の霧の中へと入る。
「ライト」
流石に薄暗い中での戦闘は困難なため、まずは視界を確保できるか明かりの魔法を灯す。
全く効果が無いわけではないが、やはり目の前が薄く霧がかって視界が遮られる。
それならばと、デュオは弱い風属性魔法で周囲を吹き飛ばし影の霧を追い払う。
「よし、視界も確保したことだし早速中に入ろうぜ」
そう言ってウィルが城門に手を掛けようとしたが、ベルザが待ったをかけた。
「待って、まずは罠の確認をしなきゃ。The Hermitは木原城に罠を仕掛けて待っているって言ったんでしょ?」
「いや、確かにそうは言ったが・・・今この中で罠の発見や解除を出来る奴は居ないぜ。
もしかしてベルザが盗賊の真似事が出来るのか?」
デュオやウィルは勿論の事、ソロやフレンダにも罠の発見や解除は出来ない。
そして当然ベルザもだ。
「じゃあどうするんだよ。まさか今更盗賊でも連れて来るっていうのか? 中に入ってしまってからじゃ遅いぜ」
言うならもっと早く指摘しろよとウィルは少し非難めいた言葉を発するが、そんな事を言うからにはベルザには別の策があった。
「それじゃあデュオちゃんお願いね」
「分かりました。ちょっとまだ完全に理解はしてないですけどやってみます」
どうやらベルザの策は既に仕込みを終えてデュオに任されていたらしい。
本来ならベルザが行えればよかったのだが、秘宝の欠片を抜かれた影響で脱力状態(魔力にも影響がある)が完全に回復していないからデュオに任せることにしたのだ。
デュオは呪文を唱える。いつもとは違う全く聞いた事のない呪文だ。
「顕現召喚、アイン、ツヴァイ」
目の前に2つの召喚魔法陣が現れ、そこに2体の生きた鎧が現れた。
1体は大盾を持った防御タイプで、もう1体は大剣を掲げた攻撃タイプの生きた鎧だった。
「魔力で創り上げるオリジナルの魔物を召喚する魔法よ。
アインとツヴァイは私が設計した生きた鎧ね。その強さはスケルトンロードに引けを取らないと自負しているわ」
「いや、凄いのは分かるが、これでどうやって罠を発見や解除をするんだ?」
どう見ても目の前の生きた鎧は戦士系であり、盗賊系には見えない。
「こうするのよ。デュオちゃん、やっちゃって!」
デュオはアインに命令をして城門を開けさせる。
城門の開門と共に、何処からともなく無数の矢がアインに向かって降り注いだ。
だが全身鎧であり、生身の生物でもないアインには何の問題も無く城門を開ききる。
ベルザの策はなんてことは無い、ただの力押しでの罠の踏破だった。
まさかの力押しの策にウィルやソロ、フレンダは開いた口が塞がらなかった。
次回更新は3/2になります。




