73.その標的は七王神の血を引く者
八天創造神がそれぞれ支配する都市には中央に城が建っている。支配者としての権威を見せつけるかのように。
そんな八天創造神の城だが、面白い事に支配する八天創造神の特徴がそれぞれの城に現れていた。
火曜創造神は不老不死の法を見つけるために、人体実験を行っていた。
その為の実験部屋が城内を大きく締めていた。
また、人体実験用のサンプルを保存する為の部屋なども。
金曜創造神は己の支配を確実にするために、逆らう者を犯罪者として捉えて善悪の判決と言う名の処刑を行っていた。
その為、城の地下には犯罪者を閉じ込めておくための大量の牢獄が設置されていた。
土曜創造神は己の肉欲を満たすためにそれ専用の部屋を用意したり、大乱交をする為の大部屋を作ったりなど。
また、集めた大量の富を収める為の宝物庫があったりする。
だが木曜創造神の城にはこれと言った特徴は見られず、ごく普通の城として木曜都市に治まっていた。
強いてあげるとすれば、『AliveOut』に協力していることからメンバーの為に城の設備や部屋を貸し出している事だろう。
そんなごく普通の木曜創造神の城――木原城だが、現在神秘界の騎士・The Hermitの影響を受け変貌を遂げていた。
城そのものは球状になった影の霧に覆われており、場内の至る所に大量の罠が仕掛けられていた。
改築した訳でもないのに城内の間取りもこれまでとは違い、これまでになかった階段や部屋などが増え、明らかに収まりきれない空間が広がっていた。
まるでThe Towerの夢現の塔のように内部がまるっきり別空間の様だった。
これが影の霧によるものなのか、はたまたThe Hermitの別の能力なのかは不明だが。
そんな変わり果てた木原城内部をデュオ達は進んでいた。
大量の罠を力技でぶち破りながら。
「・・・なぁ、流石にこれは酷いんじゃないのか?」
「そう? 少なくとも私達に被害を出さず罠を解除するには最適な方法だと思うけど」
力技で罠を踏破していく2体の生きた鎧をウィルは引きつった顔で見ていた。
ベルザはそんなウィルに盗賊が居ない現状ではこれがベストだと暴論を叩きつける。
デュオは顕現召喚魔法で生み出した生きた鎧を操作しながら罠の囮にしつつも少しばかりウィルと同じ気持ちでいた。
わざわざ自分たちの為に用意した罠がまるで意味をなさない。The Hermitにすら同情する気持ちでもあった。
だからと言って素直に罠を踏むつもりもないし、わざわざ付き合って1つ1つ解除していくわけにもいかない。
ベルザの言う通り、ただでさえ盗賊が居ない状態で罠を相手する事は出来ないのだ。
尤も全ての罠が生きた鎧で囮に出来るわけではない。
中には囮に出来ない罠や、全体に襲い掛かる罠などもあったりした。
例えば城内にも拘らず何故か巨大な岩が転がり落ちてくる罠とか、部屋に閉じ込め水責めをする罠とかだ。
因みに巨大な岩は生きた鎧を犠牲にしつつ時間を稼ぎ別の部屋に逃げ込んで躱すことが出来た。
水責めはソロが『最強の正体不明の使徒』の能力を使い、時空神の力で空間を外とつなげ水をそこから流して難を逃れていた。
「それにしてもおかしな話ね。わざわざ罠なんかで迎え撃つなんて」
「何の話しですか?」
数々の罠を潜り抜けながらも進むデュオ達だが、ベルザはこの木原城に仕掛けた罠に違和感を抱いていた。
「デュオちゃんから聞いた話だと、The Hermitは奇襲に特化した能力を持っているように見えるのよね。
奇襲の強みは何時何処で仕掛けてくるか分からないと言う点が上げられるわ。
一度で仕留められなくても、何度も仕掛けることによってデュオちゃん達を精神的に消耗させられるのよ。
そう考えると罠を張って迎え撃つのは得策とは言えないと思うの」
奇襲のメリットを考えれば罠で迎え撃つには些か勝機が下がるのだ。
しかもご丁寧に木原城には罠を仕掛けたと宣言までしている。
「その瞬間移動的な能力に制限が課せられているとかじゃないのか?」
「別に瞬間移動が無くてもThe Hermitの能力を考えればデュオちゃん達の周りに潜むのも簡単そうに見えるんだけどね」
「能力的な問題でなければ、デュオ達よりも木曜創造神やギルドマスターの方を優先させる理由があるとか?」
「日曜創造神的には木曜創造神やルーベット達よりもデュオちゃん達の方が目障りなような気がするんだけどね」
ソロがThe Hermitの能力の制限を疑えば、ベルザはそれ以外の能力でも奇襲は可能だと推測する。
フレンダが木曜都市を優先させているのではと推測するが、ベルザはそれも否定する。
七曜都市に組織的に攻勢を仕掛けている『AliveOut』もそれなりに目障りなのだが、実際には鈴鹿やデュオ達の方が八天創造神に一番ダメージを与えているのだ。最終的に狙われるであろう日曜創造神にしてみればデュオ達の方が一番目障りになるはず。
「まぁそれは会ってみれば分かるんじゃないのか? 木原城で待っているって言ったんだ。まさか向こうさんだってこの罠で俺達を仕留めきれるとは思ってないだろうよ」
「それはそうなんだけどね。それを言ったら身も蓋も無いじゃなの」
ウィルの言葉にベルザは苦笑しながらも答える。
少なくともThe Hermitの思惑を知ることでこの後の戦いの対策を立てられるかもしれないのだ。考えておいて損は無い。
尤もウィルとてその考えには至っているが、平気で相棒であるクロを使い捨てにするThe Hermitの考えを理解する気にもなれなかったししようとも思わなかった。
会話しつつも周囲を警戒しながら罠を強引に突破していく。
罠で削られていく2体の生きた鎧を何度も召喚しながら一行はThe Hermitが待ち構えているであろう謁見の間に相当する部屋の前へと辿り着いた。
「さて、準備はいいかな?」
デュオの言葉にウィル達は頷く。
2体の生きた鎧に指示を出し、扉を開けさせる。
扉を開けた瞬間、爆発と雷光が辺り一面を覆った。
罠は最後の扉にも仕掛けられていたのだ。
勿論これまで散々罠を潜り抜けてきたデュオ達にも最後の扉にも罠があることは十分承知だったので安全対策はしっかりしていた。
デュオとソロで全員を包むバリアを張り罠をやり過ごしていた。
このバリアは古式魔法のマテリアルシェルと言い、平面に防御壁を張るマテリアルシールドとは違い、半球状の全方位の防御壁を張る魔法だ。
これもベルザから教えられた魔法だった。
現在ベルザは戦闘能力が減衰しているが、それを補ってあまるほどの魔法の知識を有している。
デュオはベルザのその魔法の知識に感嘆していた。
罠による爆雷が晴れる事には破損された扉の向こうの部屋の様子がデュオ達の目に飛び込んできた。
「・・・む、もう来たか。まさか罠を力ずくで突破するとは思わなかった。
もう少し時間をかけて苦しませたいところだったが、仕方がない。残りはデュオ達を始末してから行うか」
そこには血塗れで影の霧に手足を拘束されている木曜創造神・木原時枝と血に濡れた蛇腹剣を持つThe Hermitが居た。
木原時枝の長い艶のあったストレートの黒髪は不揃いに切り刻まれ乱れ、顔にも片目を抉るような十字の傷跡が見られた。
それだけではなく、体中にも致命傷になりうる幾つもの刀傷がつけられている。そして左腕が肩口から斬られていた。
枷のように影の霧で宙に四肢を拘束されていたところを左腕を斬りおとされたようで、左腕だけが宙に浮いている状態だ。それがまたThe Hermitが行った凌辱の酷さを一層浮だ出せていた。
ルーベットと狼御前も部屋の壁際で木原時枝と同じように影の霧に四肢に枷を嵌められ宙に拘束されていた。
ただこちらはThe Hermitが木原時枝に掛かりっきりだったせいか、凌辱の後は見えない。
影の霧の影響か、今は気を失っていて俯いていた。
「ひでぇ・・・」
「今すぐ木曜創造神を解放しなさい」
あまりの木原時枝の惨状にウィルとフレンダは直ぐに敵意をむき出しにしてThe Hermitに構えを取る。
デュオ達も直ぐに構えを取るが、まずは冷静に判断し状況の把握に努めた。
「貴女の目的はあたし達じゃなかったの? 木曜創造神達はあたし達を呼び寄せるはずの人質だったはず。
人質は生きてこそ意味があるものよ。今の木曜創造神の姿を見れば人質の為に攫ったようには見えないけど」
「お前たちが目的なのは変わらない。七王神とその血を引く者。それが私が主より始末を命じられた者達だ」
The Hermitの言葉にデュオ達は驚愕した。
七王神――この場に居るベルザはまだ分かる。七王神は八天創造神に対抗できる力を持っているし、日曜創造神にしてみれば自分の目的の邪魔をする不確定要素でもある。
だが血を引く者と言うのは誰の事を指しているのか。
ソロの事とも思われたが、彼は26の使徒として七王神の能力を持っているに過ぎない。
七王神の血を引く者とはまた別だ。
残るのはデュオとウィルとフレンダ。この中の3人の内の誰かと言う事になる。
そんな混乱をしているデュオ達を余所に、The Hermitは語り続ける。
「だがそれとは別に私はこの女に制裁を加えなければならない。この女はあろうことか主を裏切った卑怯者だ。決して生かしてはおけない。
主は放っておけと言われたが、私にはとてもじゃないが赦せない。主の恩赦をありがたがることも無く、『AliveOut』に協力しのうのうと主に反逆を企てるこの女を。
『AliveOut』に潜伏している時もどれだけこの女にはらわたが煮えくり返っていたか」
「そ、それは貴女には関係の、無いこと、よ。部外者が口、を出して欲しく、ないわね」
「黙れ。口を開くな」
ボロボロになりながらも反論する木原時枝にThe Hermitは無造作に蛇腹剣を振るい、新たな傷を作り上げる。
木原時枝は僅かな抵抗とばかりに悲鳴を上げずに黙って堪えていた。
おそらくデュオ達が来る前からこうして抵抗してはThe Hermitを苛立たせていたのだろう。
「貴女のそこまで日曜創造神に対する忠誠心は感服するが、これ以上は彼女への凌辱は見過ごせないな。
悪いが力尽くでも止めさせてもらうよ」
「裏切り者、卑怯者、幾らでも彼女を罵ることは構わないけど、それって貴女の本心じゃないでしょ? 貴女はただ木曜創造神に嫉妬していただけ。
女の嫉妬は醜いっていうけど、まさか同性愛の嫉妬とはねぇ・・・」
ソロは女性擁護主義者と言えど、流石にThe Hermitが木原時枝に対して行った行為は容認できなかった。
ベルザはThe Hermitが主である日曜創造神に対する想いは忠誠心ではなく、それすらも超えた愛情であることを見抜いていた。
「悪いけどあたし達が来た以上、これからはあたし達の相手をしてもらうわよ。これ以上は木曜創造神には手出しさせないし、どうやら聞きたいことも増えたしね。力尽くでも話してもらうわよ!」
そう言ってデュオは静寂な炎を宿す火竜王を構え、The Hermitと対峙する。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ウィルとフレンダが最前列に構え、その後ろにソロ、最後尾にはデュオとベルザが並ぶ。
臨時パーティー故に連携の練度不足は否めないが、仮にもA級冒険者や26の使徒でもある魔人と七王神が揃っているのだ。そこは個人の強さでカバーをする。
対するThe Hermitはいつの間にか5人に増えていた。影法師で4体の分身を生み出したのだろう。
一見するとどれが本体か分からないように思えるが、よく見れば影法師たちと違う武器を持っているので直ぐに判明する。
影法師たちは剣や盾、杖を持っているのに対し、本体はトリニティの蛇腹剣を持っているからだ。
デュオ達は蛇腹剣を持つ本体を重点的に狙うようアイコンタクトを取る。
だがThe Hermitはそんなデュオ達を嘲笑うかのように影の霧を操り分断を図った。
明かりの魔法と風の魔法で影の霧の影響を逃れていたが、The Hermitが本気になって操った影の霧は防げずにデュオ達は為す術も無く簡単に分断されてしまった。
デュオの隣に立っていたはずのベルザが影の霧に呑まれ、直ぐに影の霧の中に手を伸ばすも空を掴むだけだった。
おそらく木原城の内部の変化を考えれば、この影の霧がデュオ達を空間を湾曲させたか別の空間へと異動させたのだろう。
「ただでさえ個人ごとに強いのに連携なんかさせると思うのか? だとしたら私に対する認識が甘すぎるな」
分断されたデュオの前に蛇腹剣を持った本体のThe Hermitが現れた。
どうやらThe Hermitが影法師を生み出したのは1人ずつ相手をするためのようだ。
そしてデュオの相手はThe Hermit本体がすると。
「The Hermitこそあたし達を分断したくらいで倒せると思っているの? それこそあたし達に対する認識が不足しているわよ」
「ふっ、お前らは決して私に勝つことは出来ない。こうして分断された時点でな」
「それはやってみなくちゃ分からないでしょ!」
そう言いながらデュオは卵の十冠にチャージされた魔法の1つを解放する。
解放されたのは雷属性魔法のライトニング。
放たれた一条の閃光はThe Hermitを飲み込んだ。
デュオはそのまま呪文を唱え、顕現召喚でアインとツヴァイを呼び出す。
これで簡単に終われるほど甘くは無いと思いながら。
案の定、ライトニングの閃光の中から蛇腹剣が飛び出してきた。
ライトニングはThe Hermitの前に集中的に集まった影の霧に遮られていたのだ。
デュオに迫りくる蛇腹剣をアインが大盾で弾き、ツヴァイが大剣を持ってThe Hermitに突撃する。
だが弾かれた蛇腹剣が背後からツヴァイに巻きつき、そのまま持ち上げられ地面へと叩き付けられた。
勿論ツヴァイもただでは叩きつけられはしなかった。
大剣を更に蛇腹剣に絡みつかせてそのまま地面へと突き刺し蛇腹剣の動きを封じたのだ。
ツヴァイを叩きつけながら蛇腹剣を引き戻そうとしていたThe Hermitに一瞬動きが鈍る。
デュオはその隙を逃さずに再び雷の魔法を放つ。但し今度は古式魔法の雷だ。
「ポジトロンキャノン!!」
The Hermitは先程と同様に影の霧を集中させて防ごうとしたが、ポジトロンキャノンは影の霧を吹き飛ばしThe Hermitを飲み込んだ。
一瞬、やったか?と思ったデュオだったが、直ぐに静寂な炎を宿す火竜王を逆手に持ち替えて剣のように構え背後を振り抜いた。
するとそこにはThe Hermitが居て元に戻した蛇腹剣を振り降ろすところだった。
ガキンッ!
「よく気が付いたな」
「そろそろあんたの手口も能力も分かって来たからね。背後から狙うと思っていたわ」
「しかも剣の腕まであるとは。ただの魔導師じゃないな」
「こう見えても無幻想波流の使い手なのよ。接近戦用に奥の手を持っているのは魔導師としては常識よ」
The Hermitは一度距離を取り、再び蛇腹剣を伸ばす。
「いい加減、その蛇腹剣は返してもらうわよ。それはトリニティの物よ!」
デュオも一度下がり、アインを前に出させる。
ツヴァイは背後からの奇襲を警戒させ、デュオの背後に回す。
アインは伸びてくる蛇腹剣を巧みに防ぎつつデュオを守り、その合間を縫って魔法を次々と放つ。
The Hermitは影の霧を巧みに操りながらデュオの魔法を防いでいたが、唐突に霧の中から影が触手のようにThe Hermitに絡みつき動きを封じた。
デュオが周囲が影の霧に覆われているのを利用して霧の中に闇属性魔法のシャドウバインドを潜ませていたのだ。
The Hermitも流石にこれには意表をつかれてしまい、更なる影法師や影渡りを使う暇も無くシャドウバインドに縛られる。
そしてデュオは止めの一撃を放つ。
「シャドウファング!」
影の霧の中でありながらもよりはっきりとわかる濃い影が大きな咢となってThe Hermitに襲い掛かった。
The Hermitはこれまでのように影の霧を集中させてシャドウファングを防ごうとしたが、闇の牙は影の霧をすり抜けてその牙を突きたてる。
デュオは幾つもの属性の魔法を放ちながらもこの影の霧の特性の1つを解明していた。
特に光属性魔法や雷属性魔法と言った光を伴う魔法は影の霧に吸い込まれほぼ無効化されてしまう。
だが、同じカテゴリーに属する闇属性魔法であれば影の霧の影響を受けずに攻撃が可能だった。
今度こそ為す術も無くThe Hermitはデュオの魔法をまともに受けて、シャドウファングはThe Hermitの体を食いちぎり上下に分断した。
残された下半身はそのまま倒れ込み、影の霧と同化するように黒く崩れて消える。
これは影法師が倒されて消える様と同じだった。
まさかこのThe Hermitも影法師だったのか――?
てっきり蛇腹剣を持つThe Hermitが本体かと思い込んでいたが、よくよく考えれば敵がそんな分かりやすい目印をもっている訳がない。
実はそれは囮で本体は別に潜んでいる。
だがそれでは本体は何処に?
デュオはアインツヴァイに周囲を警戒させながら素早くThe Hermitの対処法を考える。
そんなデュオに考える隙を与えないかのように蛇腹剣が無弦モードで分割した刃が宙を舞いデュオに襲い掛かってきた。
「一つお前の勘違いを正そう。私は影法師ではなくれっきとした本体だ。だが影である私をお前は倒すことは出来ない。
残念だったな。私をここまで追い詰めたのは誉めてやろう。だから安心して死ね」
先程影法師を倒したと思われる場所に何事も無かったかのようにThe Hermitが蛇腹剣の柄を持ち無弦モードの刃を操りながらデュオを追い詰めていく。
デュオは蛇腹剣の攻撃を必死に防ぎながらThe Hermitの攻略法を考える。
そこでデュオは1つの言葉に違和感を覚えた。
彼女は常に自分の事を影と呼んでいた。
それはThe Hermitが影に徹する役割とか、影武者や影法師の事を指しているのかと思ったのだが、もしそれが本当に影を差している言葉だとすれば――
デュオはその可能性に賭けある魔法を放つ。
「シャイニングジャベリン・シールドバインド!」
デュオオリジナルの光属性魔法の束縛術を伴った光の槍だ。
この光の槍に貫かれればダメージを与えながらバインドやシャドウバインド同様に動きを封じることが出来るのだ。
そして狙いを付けたのはThe Hermit――ではなく、その足元に映る影だ。
「がっ!?」
The Hermitは影を光の槍に貫かれ初めて苦悶の表情を見せた。
それにより影がThe Hermitの本当の本体であると確信し、デュオは動きが完全に封じられている今、止めの魔法を放った。
「レイジングバニッシャー!!」
光属性魔法最大の魔法がThe Hermitを襲う。
影の霧に光属性魔法が利かないと思わせておきながら、本当の攻略法は光属性魔法にあったのだ。
影が本体であるThe Hermitは光属性魔法に弱かった。
それを隠すための敢えて影を前面に押し出し、影法師や影武者で本体の影を隠していた。
影の霧は空間湾曲や建物の出入りを封じる結界の役割もあるが、光属性魔法が利かないとアピールし本体への攻撃を心理的に封じる意味もあった。
The Hermitは襲い来る光の本流に自分が敗れた事を悟る。七王神の血を引く者に。
いや、七王神の血を引いているから敗れたのではない。デュオと言う者に敗れたのだと。
The Hermitは決して侮った訳ではないが、デュオの評価を見誤っていたようだったと。
影の霧に多少威力は削がれるが、広範囲高出力のレイジングバニッシャーはThe Hermitを影から引きずり出し全てを飲み込んだ。
The Hermitが倒されたからなのか、レイジングバニッシャーの威力が凄かったのか、影の霧は完全に吹き飛び、デュオは木原城の謁見の間に立っていた。
分断されたウィル達も同様に謁見の間に居り、突如影の霧が解除された事に周囲を警戒していた。
「デュオ!」
ウィルはデュオの姿を見つけると直ぐに駆けつけ無事を確認し安堵していた。
「ウィル達も無事のようね」
「当たり前だろ。まぁ何度も復活する影法師にはちょっとうんざりしたけどな」
「そうね。何処に本体が潜んでいるか分からなかったからちょっと苦労はしたけど」
「私にはThe Hermitを倒す決定打が無かったから耐えるだけだったが。まぁ盾役だから何の問題も無い」
「デュオの所が本体だったわけか。よく1人で倒せたな」
完全ではないベルザが少し心配だったが、どうやら何とか凌ぎきったようだ。
フレンダは自分1人ではThe Hermitが倒せない事を理解しており、防御に専念する事でどうにか凌いでいたようだ。
ソロは魔導師であるデュオがThe Hermitを1人で倒したことに少し驚いていた。
「まぁ、何とかね。本体を見極めればそれ程難しい事じゃなかったわ」
そう言ってデュオはまだ息があるThe Hermitを見る。
その姿はボロボロで、下半身と左腕が損失していた。
「最後に1つだけ聞かせて。七王神の血を引く者ってどういうこと? あたし達の中にそんな人がいるの?」
あまり会話が出来る状態じゃなかったので、デュオは最後に1つだけ訊ねた。
デュオ達を動揺させるためなのか本当の事なのかを確かめるために。
その間にソロとフレンダは木原時枝とルーベット達の介抱をする。
特に木原時枝のダメージは深く、ソロが『最強の正体不明の使徒』の力で傷を癒していた。
「・・・ふっ、まさか自覚が無いとは。お前のその膨大な魔力は何処から来たのだと思う?」
その言葉でデュオ達は誰が七王神の血を引くのかを理解した。そして同時に納得もする。
「我が主は七王神の力を恐れていた。100年前、魔王を倒した彼らの力を。そしてその力を引く者達を」
「待って。もしかしてあたしの村が襲われたのは・・・」
「我が主の差し金だ。まぁ血を引くのはお前だけではなく他にもいたから滅ぼした村や人は幾つもあるがな」
どうやらデュオの村を襲ったあの召喚従魔師アレスト=グロリワールは日曜創造神が裏で手を引いていたらしい。
クオの事と言い、デュオは八天創造神と何かと因縁が付きまとっていたようだ。
「デュオ・・・」
デュオの心情を察してウィルはそっと肩に手を触れる。
「結果として主は正しかったわけだ。これほど強力な邪魔者が現れるんだからな」
その言葉にデュオは何も言わなかった。
結果としてはそうだろうが、日曜創造神が余計な事をしなければデュオの村は滅びることは無かったし、デュオは冒険者にならなかったかもしれないからだ。
「後1つだけいいかしら? 日曜創造神は七王神を恐れていたって言うけど、じゃあ何で私達は神秘界に召喚されたのかしら?」
The Hermitの言葉が正しければ日曜創造神は七王神の力を恐れている。
ならばなぜベルザ達はこの世界に呼ばれたのか。
「七王神を呼んだのは主ではない。月曜創造神と水曜創造神だ。まぁ水曜創造神は倒されたから意味は無かったみたいだが」
「本当に日曜創造神は関わってないの?」
八天創造神の黒幕と言うべき日曜創造神が七王神の強制召喚に関わっていないことにベルザは少し戸惑いを覚える。
謎のジジイ――ベルザにとっては100年前の盟友――によれば不老不死の法の1つに七王神が必要であると聞いていたからだ。
だが死の間際のThe Hermitからもたらされたのは全く別のものだった。
「我が主が召喚したのはかつて魔王と呼ばれたアイと呼ばれる者だ。彼の者に不老不死の法が隠されていると主は狂喜していた」
「えっ!? アイちゃんが!?」
その言葉にベルザだけではなく、デュオも驚いていた。
トリニティの仲間であるアイの正体はフェンリルから聞かされていたが、まさか行方不明になっていたアイが日曜創造神に捉われていたとは思いもしなかったのだ。
「我が主は既に不老不死の法を見つけ出している頃だろう。精々無駄な足掻きをして主を楽しませる事だな」
そう言ってThe Hermitは影法師と同じように影の霧のように崩れ去って消えた。
残す八天創造神は日曜創造神と月曜創造神の2人だ。
月曜創造神には鈴鹿達や謎のジジイが向かっているから、予定通り倒していれば残りは日曜創造神ただ1人となる。
天と地を支える世界の平穏を勝ち取るためには日曜創造神の討伐は必須事項だ。
デュオ達は『AliveOut』に木原時枝とルーベット達を任せ、The Hermitの最後の言葉の日曜創造神が不老不死の法を見つけない事を祈りながら魔都とも呼ばれる日曜都市に最後の決戦を挑む為に向かう。
ストックが切れました。
暫く充電期間に入ります。
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