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文化祭はミニチュア街で(私立クリスティ学園シリーズ 魔法使いの生徒会編7)  作者: 月森琴美


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9/22

 ついに11月15日、文化祭当日になった。

 茉理はいつもより早起きして、台所に行く。

「おはよう。あら、いつもより早いのね」

 父と母、そしてめずらしく祖母がそろっていた。

「今日はちょっと早めに行こうかと思って。図書室で本を借りようと思ってるの」

 放課後に行くと、いつも貸し出されてしまってるんだ、だから……と朝食を食べながら母に苦しい言い訳をする。

 本当は文化祭の準備のため、いつもより早く登校するのだが、結局家族には文化祭の事は言えずに終わった。

(やっぱりちょっとね)

 何がきっかけでトラブルになるかわからないし、危ない橋は極力渡らない方がいい。

 茉理は嘘の理由を述べながら、心の中では正直に話せなくてごめんなさいと母に謝った。

 朝食を終え、鞄を持って出ようとした茉理の手をさりげなく祖母藤子が掴む。

「忘れ物はないかい? 茉理ちゃん」

「おばあちゃん」

 いきなりで目を丸くする茉理に、祖母は低い声で鏡を持ったかと聞いた。

 以前祖母が後野家に伝わる物でお守りになるから大事にするようにとくれた、丸い手のひらサイズの手鏡。

 茉理はいつもポケットに入れて、持ち歩いていた。

 お守りになるというのは本当らしく、時々不思議な現象が鏡によって起こったりする。

「持ってるよ。大丈夫」

 茉理はスカートのポケットから鏡を取り出し、見せた。

 藤子はほっと表情を緩める。

「それと2年A組の教室に、今日は行ってはいけないよ。いいね」

「えっ」

 茉理はいきなり具体的に帝のクラスを言われ、顔が強張った。

 目の前の藤子は真剣な目で、茉理に念を押す。

「絶対にあの教室に今日一日は近づくんじゃないよ。明日は行っても大丈夫だから」

 祖母が不思議な事を茉理に忠告するのは、今に始まったことじゃない。

 なので茉理は何かあるんだな、と感じた。

 両親ならば、おばあちゃんがまたボケて訳のわからないことを言ってる、という解釈になりそうだが、茉理は藤子の言葉に意味があることを知ってる。

「どうして2年A組に行ってはいけないの?」

 教えてくれないだろうと思ったが、一応聞いてみた。

 案の定、藤子は茉理が聞きたかった事は口にしない。

「何もなければ知らないに越したことはないからね。とにかく気をつけるんだよ」

「……わかった。いってきます」

 茉理はそう言うと、玄関を出た。




 いつもより早く出たので朝のラッシュにはまきこまれず、早朝の登校も良いものだなと思いながら校門に着くと、綺麗に装飾されたクリスティ学園中等部文化祭の看板が立てられて、その横に受け付けの机が置いてあった。

 受け付けには見知らぬ先輩たちが立って準備している。

「おはようございます」

 なんとなく素通りも良くないと思い、茉理はぺこりと頭を下げて通過した。

 先輩たちはよく似ているが、少し色味の違う制服を着ていて、高等部の生徒だとわかる。

(文化祭の手伝いに来てくれたんだ)

 茉理はこの時知ったのだが、体育祭と違い文化祭ではクラス企画の準備が忙しいだろうと、受け付けは係を各クラスから出さず、高等部の先輩たちが助っ人として動員されることになっていた。

 受け付けを通過して校門の内側に入ると、桜の大木の横に見慣れない白いテントがある。

 そこにはあふれんばかりに薔薇の花が置いてあった。

「わーっ、綺麗」

 こんなに一度に大量の薔薇を見たのは久しぶりで、茉理は声をあげてしまう。

 雅人がよく自分ポーズの際に背景効果としてばらまく薔薇の花はよくお目にかかるが、一度に花瓶やバケツに入れられて品よく置かれているのを見るのはいつぶりか。

(あんまりお花屋さんとか最近行かなかったものね)

 まさに薔薇専門の美しい生花店だ。

「来たか。早かったな」

 薔薇の間から制服姿の帝が姿を現し、茉理は驚く。

「おはようございます、帝先輩」

「ああ。おはよう」

 にやりと笑い、彼はすぐ茉理の横に移動してきた。

「今日も可愛いな、お前は。今日はあとでお前のクラスに行くからな」

「昼過ぎでしたよね。わかってます」

「そのあと午後は一緒にまわるぞ。2時から演劇部の舞台を見ることになってるしな」

「はい。楽しみです」

 茉理は笑みを見せる。

 そんな彼女に、帝は薔薇の花束を差し出した。

「やる。これはお前用だ」

「えっ、いいんですか」

 彼女は驚きながらも色とりどりの薔薇を束ねた大きな花束を受け取る。

「でもただでもらうのも……ここってお花屋さんなんですよね」

 どこかの企画の、と言うと、帝はすっと目を細めた。

「企画といえば企画だな。生徒会のウエルカムサービスだ」

「ウエルカムサービス?」

「今年は特館の温室で、雅人が育てている薔薇が狂い咲きしたからな。文化祭に来た客の中で欲しいやつに持っていってもらうことにした。直樹は販売したいなどと言っていたが、薔薇ごときただでくれてやってもいいだろう。昨日全員で話し合って、そういうことにした」

「そうだったんですね」

 そういえば生徒会企画がどうのとか言ってたっけ、と茉理は思い出す。

「すごく嬉しいです。ありがとうございます」

 嬉しそうに花束を抱えると、どこかでシャッター音がした。

「なんだ」

 帝は鋭いまなざしを投げる。

「おはようございます、帝様」

 カメラをぶら下げた男子生徒が挨拶をした。

「お前は昨日の……新聞部か」

「突然すみません。でもそのお二人がとてもお似合いでシャッターチャンスだったので、つい」

 彼は苦笑いしながら言う。

「あとで写真は寄越せ。他の奴に見せたり転売したり流すことは許さん」

 強い帝の言葉に、彼はもちろんです、とうなずいた。

「文化祭の写真は校内に張り出してデータ配布の注文を取る予定ですが、これはお二人の思い出の一枚ですからね。絶対に他に見せたりしません」

「ならばいい。データ含めて全部俺に渡せ。いいな」

「はい。では今日は一日よろしくお願いします」

 そう言って、彼はぺこりとお辞儀をして校舎の方に向かっていった。

 茉理は予期せぬ帝のとのツーショットが取れたので、少し頬が赤くなる。

(どんな写真だろう。友達に送ったり出来るかな)

 そう思い、いやいやと考え直す。

(絶対笑われそう。似合わない薔薇の花持って帝先輩と一緒に写ってる写真なんて、きっと自分が滑稽なだけだよ)

 これが美少女と評判である去年の帝の彼女園城寺美奈子先輩とだったら、きっと誰にでも見せれる素敵な恋人同士の写真が撮れていることだろうに。

 揺れる心を映す瞳で帝の横顔を見上げると、極上の笑顔で返された。

(あ、この顔は……)

 茉理はピンと来る。

 普段の二倍は優しさが倍増している微笑み、これは間違いなくもう一人の方だ。

 彼女の予想通り、そっと茉理の方に顔を近づけた彼は、そっと耳元でささやく。

「今日僕は君だけの執事になるつもりだから、よろしくね」

 そっと耳にキスを落とされ、くすぐったくて茉理は後ずさった。

(こ、こういうのはなしだってば)

 正直素敵な男の子に大切にされる経験がまったく皆無の自分としては、ふいうちに過剰なほど反応してしまう。

 情けない顔しているだろうなと茉理は、恥ずかしくてどうしようもない頬を花束で隠した。

「おい、帝。そろそろ後野さんを教室へ行かせてやれ。これじゃあ早く登校した意味がないだろう」

 後ろから無機質な声が聞こえ、茉理は驚いて振り向く。

 トレードマークの黒い眼鏡を鈍く光らせ、直樹が姿を見せた。

「おはようございます、森崎先輩」

 茉理はあわてて挨拶する。

 直樹の出現は、彼女のほてりを一瞬で覚ましてくれたので正直助かった。

「おはよう。今日はお互いがんばろう」

 そう言う直樹は昨日はジャージ姿だったが、今日はきちんと制服を着ている。

「そうだ、後野さん。君にこれをやろう」

 そう言って黒地に真っ赤な薔薇の模様が刺繍された魅惑的なお店に似合いそうなエプロンを渡され、茉理は戸惑う。

「あの、これは」

「花屋の店員用に作った物だがいらなくなった。良ければ君が使うといい。女子にエプロンは必須アイテムだろう」

「はあ。まあ使う時は使いますけど」

 茉理は予想外に派手な柄エプロンを見て、母もこんなの着ないだろうなと思いながら受け取った。

「というか、これ着てお花屋さんやるつもりだったんですか」

 直樹がこれを装着して薔薇の前で接客している様子を創造し、茉理は何考えてるんだろう、この先輩と一瞬彼の脳内を疑ってしまう。

「当たり前だ。そんな悪趣味な物、着てやってられるか。生徒会の名に傷がつく」

 憮然とした帝の言葉で、茉理はきっと彼が猛反対して止めたのだろうと察しがついた。

(そういえば体育祭でもすごいTシャツ着てたしな)

 自分で開発したゼリー状の布地で作った涼しそうなTシャツを着用して、競技に望んでいた。

 本当は一から三年全学年D組の生徒に着せるつもりであったのを、帝がそんなおぞましいドロドロの見た目をしたTシャツなど言語道断だと強引に変えてくれたのは、記憶に新しい。

(森崎先輩は白衣の方が似合ってるよね。でもそれはそれで不気味か)

 白衣を着て黒眼鏡。意味深なマッドサイエンティストっぽい男が微妙な笑みを浮かべて配る薔薇の花。

(何かありそうで怖いわ。もう制服オンリーでいいかも)

 茉理は怖い想像をあわてて打ち消し、制服の方が学生らしくていいんじゃないでしょうか、と無難な言葉を口にした。

「そうか。せっかくの文化祭だから俺も何かしたかったんだけどな」

 少ししょんぼりする直樹に、茉理はかわいそうになって提案する。

「じゃあうちのクラスの企画に参加するっていうのはどうでしょう。学年が違うので、微妙かもしれませんが」

 茉理はクラス企画の一環でお化けに仮装して校内を徘徊し、参加者に見つけてもらうというのがある事を話した。

「予備の衣装がありますので、良かったら校内パトロールの時に着用していただけませんか。そうして声をかけられたら、その生徒が持ってるカードにサインを入れてもらえばいいので」

「面白そうだな。引き受けよう」

 直樹はたちまち上機嫌になる。

(中学最後の文化祭だもの。何か思い出になる事をしたいよね)

 茉理は彼の様子を見ながら、そう思った。

 それにしても一体何を提案して、直樹はクラスの企画から参加拒否されたのだろうか。

 帝から聞いてはいたが、流石にその理由までは知らなかった。

「ではわたしは教室行きますね。頑張ってください」

 思いがけずもらった花束を抱え、茉理はお辞儀をして教室へ向かう。

 すると後ろから直樹もついてきた。

「君と一緒に行かないと、衣装を貸してもらえんだろう」

「あ、そうですね」

 茉理はうなずき、二人は並んで1年A組に入っていった。




 学級委員にわけを話し、快く承諾をもらって、直樹に吸血鬼の衣装を着てもらう。

 思ったより、彼はこの衣装がよく似合った。

 周りのクラスメイトも本格的な吸血鬼に見える、と喜んでいる。

「では今日からよろしくお願いします」

「こちらこそよろしく」

 サインをしてもらうためのボールペンを渡すと、直樹は教室を出て行った。

(良かった。やっぱり皆で楽しみたいよね、文化祭)

「茉理、あんたも早く着替えなよ」

 始まるよ、文化祭、と奈々に声をかけられ、茉理はあわてて幽霊の衣装を持って更衣室と貸した女子トイレに入って着替える。

 鏡を見ながらメイクを整え、トイレから出て一旦教室に戻った。

 朝8時30分に全員集合して、先生から点呼を受ける。

 終了時午後3時30分にも点呼があるので、教室集合だ。

 勝手に帰ったりすると無断欠席扱いになるので気をつけなければいけないと、昨日担任から言い渡されている。

「おはよう。全員いるな」

 担任の森先生が教室に入ってきて、学級委員の号令で全員挨拶した。

「よし。今日は沢山楽しんでいこう。それとくれぐれも魔法は禁止だ。使うなよ」

 違反したら罰則がある、と先生は付け足した。

「生徒会と教職員がパトロールすることになっている。当然お客としてくるご家族や他校の生徒なども同様だ。くれぐれも厳守して、楽しい文化祭にしてくれ」

「はい」

 全員元気の良い返事をし、文化祭が始まった。




 朝9時に受け付けが始まる。

 校門前で、高等部の生徒達が来たお客様のチケットや招待状を確認し始めた。

「へえ、随分朝から盛況やね」

「そりゃあうちみたいな中小企業と違って、天下の伊集院財閥がバックですやさかいな、この学校」

「はっはっはっ、お前ら何を言っている。伊集院財閥がなんぼのものや。うちこそ天下無双の建設会社天の川建設。今は小さくてもいずれ俺らが天下を取る」

 突然校門に現れた謎の忍者三人組。

 高等部の生徒達は、思わず身構えた。

 忍び装束とは、一昔前の戦闘服。

 よもや襲撃かと身を硬くする受け付けに、青い忍者服を着た長身の少年が三枚のチケットを差し出した。

「えー、本日はお日柄もよろしく文化祭の開催、誠におめでとうございます」

「……はあ、どうも」

 謎の訳分からない改まったような挨拶をされ、受け付けの先輩は一瞬拍子抜けする。

「うちら天の川学園から見学に来ました。よろしゅうおたの申します」

 そう言うと、三人はチケットをひらひらしながら受け付けを通過した。

「あ、文化祭へようこそ……って行っちゃったよ」

 受け付けの先輩はあわてて挨拶を口にするが、もう三人はいなくなっている。

「良かったのか、あれ、通して」

「でもチケット本物だったぞ」

 首をかしげながら先輩たちは、次の来訪者への応対に追われて彼らの事はすぐ頭の中から消え去ってしまった。



 赤、青、黄色の異なる色彩の忍者服を着た三人組は、桜の大木の前に来た。

「おっ、なんか凄いのありまっせ」

「薔薇ですなあ」

「はっはっはっ、薔薇しかないとはなんてお笑いな花屋だ。そうか、ここは薔薇屋か。ば、ら、や」

「なんか会長が強調しはると、違う店みたいにきこえまっせ」

「ほんまほんま。なんかおしゃれな店が、一気に妖しい店になりましたなあ」

(そっちの方が怪しそうなんだけど)

 店番をしていた斎は、いきなり現れた三人組を見てそう思う。

 クラス企画用の水色エプロン(何故かそのままでも花屋によく似合った)をつけたまま、斎は一人店番をしていた。

 今日の午前中は、彼の担当である。

 といっても何かあったら席をはずしてかまわないと、帝からは言われていた。

『どうせただで配っているのだ。別に欲しい奴が誰でも持っていっていいものだしな』と。

 横に専用の看板も立ててある。

 そこには綺麗な文字で、[生徒会主催 ウエルカムサービスの花です。ご自由にお持ち帰りください]と書かれていた。

 忍者三人組も、この看板に気付く。

「おっ、なんか書いてありまっせ」

「んーと、なんだこれってただで持っていっていいんやて。太っ腹ですな」

「はっはっはっ。お前ら知らんのか。世の中ただより高いもんはないんだぞ。一番気をつけないといけないって事を忘れるなよ」

(なんか違う気がするけど、合ってる気もする)

 斎は奇妙な三人組を注視した。

(どこのクラスの人たちだろう。忍者屋敷なんて企画、立ててるクラスあったかな)

 考え込んでいると、三人はごそごそ相談し始めた。

「そういえば会長はん。これ、手土産に丁度いいんとちゃいますか」

「そういえばそうどすな。彼女はんに会うのに、手ぶらはちょっとあかんのちゃいますの?」

「はっはっはっ、お前ら、良いところに気がついた。おいっ、そこのバラ屋っ」

 突然視線を向けられ、斎は目を瞬かせる。

(僕のことだよね)

 バラ屋と呼ばれるのはちょっとなんだが、意味は間違ってはいないのでとりあえず静かに受け止めた。

「このバラ、全部俺がもらうぞ。はっはっはっ、お前はもう用無しだ。行ってよし」

「ええーっ、会長、それはちょっと多すぎでっせ」

「そやそや。彼女はんかて困りますよ。会長はいつもワイルドすぎですさかい、ちょっと加減せなあきまへんえ」

(一体どこの言葉だろう。方言? 混じりすぎだよ)

 聞きにくい会話を耳にしながら、斎は困った顔になる。

「ほら、他のお客はんにも譲りませんと」

「怖―い魔王と手下はんたちに襲われて、面倒なことにもなりますえ。プロポーズどころじゃありゃしまへん」

「はっはっはっ、心配するな。魔王ごときおそれる俺ではないぞ。何故なら俺こそ未来の大魔王となる男なのだからな。はーっはっはっ」

(この会話の流れからすると、この人たちもしかして……)

 斎の目がきらりと光る。

 事前に聞いていた情報とあわせると、この三人組は例の話が通じない人たちなのだろう。

 彼は少し考えて、色んな色を取り混ぜた薔薇を三十本取り出すと、用意していたラッピング用紙に綺麗に包み、ピンクのリボンをつけた。

 そしてそれを会長と呼ばれた彼に差し出す。

(どうせ僕は会話なんて出来ないから、話が通じなくてもかまわない)

『差し上げられるのはこれだけですよ』

 そんな意味を込めてずいっと花束を差し出すと、会長忍者はおおっと声をあげた。

「はっはっはっ、もう用意するとは気が利くじゃないか。よし、これをもらってやる。大魔王の俺は寛大だからな。そしてお前に俺の下僕になることを許可してやろう。嬉しいだろう、泣いて喜べ」

「会長はん。それ、別な意味で泣くと思いまっせ」

「別に他校の生徒勧誘せんとも、下僕不足じゃないですさかい。余計な人材増やさんでもよかですよ」

「はっはっはっ、それもそうか」

 高笑いしている赤い忍者と、横で顔をしかめている長身の青忍者。

 黄色い忍者はあきれた声で突っ込み役を担当している。

(三人並ぶと信号みたいだな)

 斎は心の中でこの人たちがトリオで漫才に出た場合、信号機という芸名がぴったりそうだとどうでも良いことを考えた。

「それよりそろそろいきまひょか。相手待たせたらあきませんえ」

「そうそう。女は怒ると怖いでっせ。会長はん、よく気をつけなはれ」

「それもそうだな。では行くか。はっはっはっ」

 高笑いしながら三人は中等部校舎の方に歩きだす。

 その背中を見送りながら、斎はうーんと頭が重くなるのを感じていた。

(先輩たちが、蛇蝎のように嫌ってる意味がわかったような気がする)

 なんとなく彼らが何もトラブルを起こさずにいてくれる気がしない。

 それでも今日一日、何事もなく終わりますようにと、心の奥で斎は祈らずにはいられなかった。


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