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第37話 まさかのワサビソフト

翌日。

朝起きてクッキーを焼いてから、俺とアリーアはワサビを使った名物料理を考える為に城下町の市場を巡った。


ちなみに俺たちが住むハーライト王国ではあまり育てられていないけど、隣のブフ王国では米の生産が盛んだった。

日本米のような短い粒の米、タイ米のような長い粒の米、それに餅米も輸入品として市場に並んでいる。


「なあアリーア。

 お酢を混ぜた米を小さく握って

 その上に生魚を乗せて、

 神野菜と醤油をつけて食べると

 美味しい……と思うんだけど

 どう思う?」


「だからぁ

 魚は生で食べるものじゃないの!

 しかもお米に乗せるぅ?

 そんなゲテモノ誰も食べないよ」 


ゲテモノ……。

寿司はアリーアに見つからないように、こっそり食べる事に決めた。


「名物って

 どんなものがいいんだろうなあ?」


「ロレスが作ってくれた

 ステーキ美味しかったから、

 あれでもいい気がするけど……」


「う〜ん……でも、

 まだ弱い気がする……」


「勇者様ー!!」


俺を呼ぶ声が聞こえた……ドミンさんの奥さんだった。

ドミンさんの奥さんは小走りで俺のところまで来た。


「冷竜のウロコは

 どうでしたかぁ?」


「あ〜あれは……。

 結局手に入らなかったんですよ。

 奥さんもお買い物ですか?」


「そう!

 ソフトクリームの新しいフレーバーを

 考えていてねー!

 でもなかなか良いのがなくてー」


ソフトクリームの新しいフレーバーか……。


俺は前世で長野の安曇野で食べたワサビソフトを思い出した。

あれは食べる前は「ワサビ? どうなんだろうなあ?」と思っていたんだけど、結構美味しかった記憶がある。


「ちょっと珍しい野菜を持っていて

 そいつで名物作れないか悩んでまして。

 ソフトクリーム

 試させてもらったりできますか?」


「いいですよー。

 今日はこの市場に近くに

 屋台出してるから、

 すぐにやってみましょ!」


俺たちは奥さんに連れられてドミンさんのソフトクリーム屋台に向かった。

屋台についた俺はワサビをすり下ろして皿に上に乗せ、ドミンさんに渡した。


ドミンさんはワサビを少し舐めて、驚いた顔をした。

まあワサビの味って似たのがあまりないもんね、ああいう反応にもなるだろう。


ドミンさんは攪拌機にバニラの素地とすりおろしたワサビを投入し、丁寧に混ぜていった。

回転する羽が空気を含ませるたびに、真っ白だったクリームがほのかに緑を帯びていく。


そして淡い緑色のソフトが、なめらかに巻かれはじめる──ワサビソフトの完成だ。


俺は完成したワサビソフトを食べた。

ああ、これこれ。

昔食べたやつもこんなだった気がする。


「みなさんどう思います?

 俺は悪くないとは思うんだけど。

 でも名物になるかどうかは……ん?」


ドミンさん、ドミンさんの奥さん、アリーアの全員が固まっている。

え? どうしたんだ?


アリーアは混乱していた。


「ロレス……これ……。

 ど……どうしよう……」


ドミンさんの奥さんは震えていた。


「勇者様……信じらない……」


いつも無表情なドミンさんだけど、顔に感情が溢れていた。


「…………うますぎ……る」


どうやらこの世界の人間にとって、バニラソフトの甘さとワサビの鼻にツーンとくる刺激が合わさるととんでもない未知の美味になるらしい。


「ロレス、名物ができたよ!

 神野菜ソフトクリーム。

 これを宿屋で販売したい!」


「そっか、じゃあやってみるか。

 これ目当てに行商人とかが来て

 ついでに泊まってくれるかもな」


攪拌機を回すのは相当なパワーが必要らしいから、アリーアの宿屋のゴテムさんに相談してみよう。


「ねえロレス。

 兵隊さんがこっちに向かってきてるよ。

 ロレスに用があるんじゃない?」


「え?」


2人の兵士は武具をガチャガチャと鳴らしながら俺の前まできた。

 

「勇者ロレス殿ですね」


「は……はい。

 そうですけど

 何でしょうか?」


「今から城に来ていただきです。

 王女様が勇者殿に

 会いたがっておられます」


 

 

次回『お姫様への報告』

お読みいただきありがとうございます!

次回は「魔王討伐の冒険譚を聞かせてもらえるとワクワクしている姫に会う」お話です。


もし少しでも面白いと感じましたら、ブクマや評価で応援して頂けると嬉しいです!

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