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第43話 カナクからの撤退   (2594)

 サラルとの戦闘の無い「共存」現象はノードでもカナクでも十年近く続き、人々はこの平穏な日々がこれからも続く事を望んでいた。しかしある年の夏、カナクで危惧していた異変が起きた。


 ある夜悪天候でオーロラも出ない暗闇の中、カナクにこれ迄にない数のサラルが出現した。押し寄せたサラルの群れは警備ロボットやユニコーン型ロボに多数の槍を投げつけて損傷を与え、金属棒を振り回して警備隊員が待ち構える三段構えの防衛陣地に殺到した。防衛陣地に侵入したサラルに対し警備ロボットやユニコーン型ロボも発砲できない危機的状況になり隊員の被害が続出した。


 この状況にカーソン主任は夜間であるにも拘わらず、警備隊員を守るため防衛陣地上空に群れるサラルに対しレーザー砲の発射を指示した。東の小高いローグ山に設置されたレーザー砲台から白い線を引いたレーザー光線が防衛陣地上空のサラルの群れに発射され、たちまち多くのサラルが撃ち落とされる。逃げるサラルにもレーザー光線が箒で掃くように横方向に連続発射され、防衛陣地周辺は撃ち落とされたサラルの死骸で埋め尽くされていった。この戦闘でレーザー砲はサラル側に五百匹以上の大きな損害を与え、カナク周辺からサラルを追い払う事に成功した。

「レーザー砲の威力はすごい。サラルがバンバン落ちてきてそれを避けるのが大変だった」

「これでサラルもカナクに近付こうとはしないだろう」

 しかし、ローグ山のレーザー砲台の位置がサラルに知られた事により、サラルがレーザー砲台へ攻撃を仕掛けてくる事も考えられた。マテオ隊長の指示でカナク警備隊はサラル来襲に備え、レーザー砲台の守りを最優先事項として防衛対策をとる事となった。


 そしてその後半年近くはサラルの姿の無い日々が続いていたが、秋の嵐が吹き荒れるある日の深夜、再びサラルが押し寄せて来た。風雨で目視が効かずレーダーも働かない状況の中、サラルの群れがレーザー砲台のあるローグ山周辺に殺到した。サラル達はローグ山上空からレーザー砲台に金属棒を投げ落とし、その多くがレーザー砲台のドームを突き破り内部のレーザー砲自体に損傷を与えた。サラルの群れは、レーザー砲台周辺を守る隊員やユニコーン型ロボにも襲いかかった。カナク防衛隊は総力を挙げて反撃し、なんとか撃退したが、数十名の隊員が死傷しユニコーン型ロボにも多数の損傷が出た。

「嵐の夜に奇襲とはしてやられた!」

「レーザー砲が破壊されたらしい」

 カナクの警備隊はこの状況をノードに報告した。ノード政府もこの事態に驚き「直ちに救援部隊をカナクに送る」という返答を繰り返すばかりだった。

 夜が明けサラルが飛び去った後、技術者たちは破壊されたレーザー砲の修復に取り掛かった。カーソン主任を中心とする技術者達は一刻も休まずレーザー砲の修復作業に取り組んだ。しかし部品を取り換え破損した部分の復元に全力を尽くしても、なかなか完全な修復に至らなかった。


 技術者たちの懸命な作業が続く中、夜になりローグ山の上空に再びサラルが襲来した。多数のサラルがレーザー砲台のドームの破壊された部分から内部に侵入し作業中の技術者達に襲い掛かった。技術者達も銃を取って反撃したが、激闘の末カーソン主任を含む技術者全員が死傷した。サラルは金属棒を振り回しレーザー砲台内部を徹底的に破壊した。サラルの群れはレーザー砲台周辺のユニコーン型ロボや警備隊員にも襲いかかり警備隊に大きな被害を与えた。サラル達が飛び去った明け方、警備隊はレーザー砲台のあるローグ山付近から撤退しカナクの主要ドームを守る防御態勢をとる事を決定した。


 翌日の夜もサラルの襲撃は続き、カナクの主要ドームを守る警備ロボットにサラルの槍が撃ち込まれ、警備ロボットのなかには、赤い目にサラルの槍が突き刺さり動作を停止するものもあった。12台のうち5台の警備ロボットが破損した。サラルの群れは防衛陣地のユニコーン型ロボや隊員達にも襲い掛かり、ユニコーン型ロボも隊員も懸命に反撃したが、数に勝るサラルの槍攻撃に苦戦を強いられた。

 その後も毎夜サラルの襲撃は続き、カナクの警備隊は多数の犠牲者を出して後退を続け、終にドーム群の北端にある港湾地区に追い込まれる事になった。警備隊は作動可能な4台の警備ロボットの密集配備でサラルの襲撃を防いだが、数を増したサラルの槍が雨の様に降り注ぎ隊員達の死傷者が続出した。


 カナクの状況報告を受けたノード政府は既にカナク警備隊の完全撤退命令を出していた。警備隊はサラルが襲撃してこない昼間のうちにカナクから撤退する事になり、三隻の船に死傷者も含めた隊員五百名と十数台のユニコーン型ロボを乗せてカナクの港を離れる事になった。隊員達が乗り込んだ船からは、遠ざかっていくカナクのドーム群と港に取り残された4台の警備ロボットの姿が見えた。警備隊員達が去った後も、4台の警備ロボットは無人となったカナクの港を守り、サラルと戦い続けた。そして最後の1台が燃料バッテリー切れになるまで戦い続けた後、サラルの槍により破壊され機能を停止した。

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