第7章 闇を裂く光
セラフィーヌとレオンの足音が近づいてくる。
ーー怖い……!
心臓が早鐘のように打つ。
図書室の最奥の書棚まで逃げ込む。
ふと、壺から光が漏れ出て書棚の古い背表紙に吸い込まれていく。
指をそっと伸ばし、一冊の埃まみれの本を押すとーーカチリ、と微かな音が響いた。
書棚がゆっくりとスライドし、薄暗い通路が現れる。
(……隠し通路だわ!!)
リュシェンヌは迷わず中へ滑り込むと、書棚を閉めた。
通路は狭く、石壁から湿ったにおいが立ち込める。
隠し扉の向こうから、レオンの低い声が聞こえる。
「どこにいった!!」
リュシェンヌは息をひそめ壁際に身を寄せる。通路は左右に分かれ、奥に進むほど暗闇が深くなる。
足元はぬかるみ、何度もつまづきそうになるが、壺の中から光があふれ道を照らす。
(……ここなら安全……)
やがて通路は小さな階段に繋がり庭園と通じていた。
苔むした石の扉を押し開けると夜の庭がひっそりと広がっている。
リュシェンヌはほっと胸を撫で下ろす。
ーーでもまだ油断はできない。彼の命を救うためには、この庭を抜け、納屋へ戻らなければ。
息を切らしながら彼女は庭の奥へ駆け抜けた。抱えた本を胸にしっかりと抱き、心の中で強く誓う。
ーー絶対に、あの人を死なせたりしない!
壺の中で淡く光が揺れる。その光はまるで「急げ」と言っているかのようだった。
壺を被った少女が姿を闇の中に消える時、静まり返った屋敷の片隅で、ひとりの女が窓からその背中を見下ろしていた。
月明かりが、セラフィーヌの唇に薄く笑みを描く。
「……やはり、お前だったのね。呪いの娘」
セラフィーヌの指先が、宝石のついたナイフの柄にそっと触れる。
ーーふふ、もう少しで全てが思い通りになるわ。




