表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壺の少女~真実を映す器~  作者: 大日向郁美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/13

第10章 壺の少女と王子

 

 ――ぐう……


 青年のお腹の鳴る音が、静かな納屋に響いた。

 彼は顔を真っ赤にして、両手でお腹を押さえる。

「……お腹がすいてたんだ」と、ぼそりとつぶやいた。


 リュシェンヌは思わずクスクス笑う。

「あの……朝ごはん、作りますね」

 そう言って、籠を手に外へ出ていく。


 森で摘んできたリンゴを食べやすく切り、軽く炒めたキノコ、畑で育てたハーブを煎じて、お茶を出す。質素だけれど丁寧にテーブルに並べられた朝食が小さな机の上に並んだ。


「……すみません……こんなもので……」

 リュシェンヌは少し申し訳なさそうに俯いた。


 青年はスプーンを取り、口に運ぶ。

 素朴な味が広がり、思わず目を細める。


「……美味しい」

 小さくつぶやいたその声に、リュシェンヌは胸を撫で下ろした。


 しばらくの沈黙あと、青年は穏やかに尋ねた。

「……ところで、君は一人でここに?」


 リュシェンヌは手を止め、小さく頷いた。

「父は……ヴェルメイユ侯爵です。戦に出てから……音信が途絶えたまま…。母はもう、……ずっと前に……亡くなりました」


 彼は驚きの色を隠せず、眉をひそめた。

「……侯爵令嬢がこんな暮らしを?」


 リュシェンヌは下を向き手を膝の上でぎゅっと握りしめた。

「……みんな、私を……怖がるんです……。壺を被るようになってから、誰も近づかなくなった……」


 青年は言葉を失い、ただ静かに彼女を見つめていた。

 火のぱちぱちと燃える音だけが、二人の間に流れる。


 しばらくの沈黙のあと、リュシェンヌがふと思い出したように顔を上げた。

「……昨日、図書室で……聞いたの」 


「……何を?」


「……レオンという方が、……王子を探しているって。……そして、王妃派の兵達が、このあたりに来ている。あなたを――殺そうとしているって」


 青年の手が一瞬、止まった。

 その仕草を見て、リュシェンヌは静かに言葉を紡ぐ。


「……あなたは、アドリアン王子……ですよね?」


その一言に、アドリアンの瞳が揺れる。

覚悟を決めたように、彼はゆっくり頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ