第98話 子どもたちは成長した
「アシュタルテ公爵さま! こんな小さな村をご訪問くださるとは、光栄のいたり!」
「さあ、さあ! 特上のワインです! どうぞどうぞ、公爵閣下!」
「うむ、いただこう」
無数につるされた、ランタンの灯に照らされて。
たくさんのゴブリン族やコボルト族に囲まれ、アシュタルテ公爵はゆったりとうなずき、杯を受け取った。
ぱっと見、威厳ある態度だが、きっと内心では 『かわいすぎて…… はぁぁぁっ……』 などとあえいでいるんじゃ、と、つい邪推してしまう ――
俺がアシュタルテ公爵に強制的に爆睡させられて、数時間後。
ピエデリポゾ村の俺たちの歓迎会は、中央の広場で行われた。
いくつものランタンの灯がゆらぎ、夜を幻想的に彩っている。その下には、屋台まで出ていて ―― いつも以上に、お祭りさわぎだな。
そんななか、俺とイリスは、さっそくウッウにつかまっていた。
「ししょー! イリスおねーちゃん! ボクがつくったポーション、あげる!」
「お、これ、ウッウがつくったのか? じゃあ、いただくよ」
{ありがとうなのです、ウッウさん!}
ウッウのくれたポーションは、透明度が高く、無数の魔素の泡が金色にたちのぼっている…… かなりのレベルだな。
あえて鑑定はせず、俺とイリスは一気にポーションを飲んだ。
炭酸飲料のような、すっきり爽やかな刺激と程よい甘さ…… のみこむと、すっと疲れがとれる感覚がある。
「うん、上出来だ。がんばったな、ウッウ」
{おいしいのです、ウッウさん!}
「えへへ、ボク、いっぱい、れんしゅうしたんだ」
「そうか。偉いぞ。錬金術はたくさん練習するのが、大切だからな」
「うんっ」
俺は、ウッウの金茶色の毛で覆われた子犬のヌイグルミそのものの頭をなでた。
以前に、押しに負けて弟子にしたものの、まだ錬金術は、ほとんど教えられていないのに ―― ウッウは、ちゃんと自分で頑張って成長したんだな……
いかん、年のせいか涙腺が。
「いやぁ、こいつ、大将みたいな錬金術師になるって、きかないんでさ」
いつのまにか、ウッウとそっくりなコボルトが、俺のそばに来ていた ―― ウッウパパだ。
「ワインも飲んでくれよ、大将! 山芋のチーズ焼きも、もらってきたぞ!」
「ああ。あのゴブリンの奥さんの?」
「そうそう。大将、まえに、美味いってほめてたろ? ほら、いくらでも、食べて、飲めよ?」
ウッウパパが俺の前に、こうばしい匂いのする皿を置いてくれる ――
つい数時間前まで俺は、とにかく早くイリスの心核を取り戻したくて焦っていた。
正直 『宴会どころじゃない!』 という気分だったんだ…… だが。
やっぱり、参加して、よかったな。
こうして懐かしいみんなとゆっくり話していると、温かい光が、胸のなかに生まれるのを感じる。
―― 俺たちは明日にはまたヤパーニョに戻るけれど、悲惨な戦場に身を置きに行くわけじゃない。
またこの場所で、イリスやウッウや村のみんなと。なんてことはない、けれども、かけがえのない日々を送る ―― そのために、必要なことをするだけなんだ。
== なろう版はここまでです ==
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