第97話 使いきったのだった
「転移成功! よっしゃ! ―― うん、《ヒツジさんの着ぐるみ》 も、やっと脱げた!」
都合よくチートスキルが使えて、ほんとよかった……
とりあえず着ぐるみから解放されて、サッパリした俺を、ソフィア公女とベルヴィル議員 ―― いや、今は元首だった ―― が残念そうに見る。
「「着ぐるみのほうが、よかったのに……」」
みんな、どんだけヒツジさん好きなんだ……?
―― ベルヴィルは、俺とイリスがラタ共和国を出てすぐに、議員から元首に選出されたそうだ。
ベルヴィルの不眠症は、あのとき俺たちと夢魔をはらって以来、すっかり治ったらしい…… だが今度は、元首の仕事が忙しいため、じゅうぶんには眠れない日々を送っているという。
「そうか。たいへんなんだな…… 気休め程度だが、なにか出そうか?」
「ありがとう、リンタロー。けど、大丈夫よ。いまは、がんばらなきゃならないときだから」
ラタ共和国から貧困を完全になくしてォロティア義勇軍の影を一掃し、真に自由で平等な国家を実現する ―― そう語るベルヴィルのグレーの目は、以前の何倍もイキイキとしている。
国家元首の仕事、やりがいはじゅうぶんに感じてそうだな。
だが、物理的には、以前にも増して忙しいに違いない。
さて ―― そんなベルヴィルが、ソフィア公女と、ここ旧ドブラ議員邸の地下実験室にきていた理由。
それは、密談のためだそうだ。
もとの主、ドブラ議員はすでに姿を消していても、地下のセキュリティーは活きている。そのため、ベルヴィルにとっては、ほかに知られたくない話を安心してできる場所になったようだ。
かつての政敵の屋敷が ―― 皮肉といえば、皮肉だが、ともかく。
そうとも知らずに座標設定して転移したあげく、ふたりを巻き込むような事態にならなくて、本当に良かった……!
「それで、リンタロー?」 と、ソフィア公女が俺に詰め寄る。
「ォロティア義勇軍とヤパーニョ皇国。いったい、どうなっていますの?」
「ああ、それは……」
俺は、デジマ奉行から足止めを食らったうえに夢見薬の密輸人として捕まりそうになった経緯を、ふたりに話した。
「なんて、ひどい……」
ソフィア公女が息をのんだ。
「そのようなことに、なっていたのですね」
「ああ。アシュタルテ公爵の拷問が終わればハッキリするだろうが、ォロティア義勇軍がヤパーニョ皇国の幕府と関わってるのは、間違いないだろうな」
「とすると……」
ベルヴィルが眉をひそめる。
どうやら彼女も、気づいたみたいだな ――
「ォロティア義勇軍は、大陸西部の国々で薬と奴隷への規制が強化される前から、ヤパーニョ皇国に目をつけていた、ということかしら?」
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