第88話 和風の国にやってきた
ぱっと見、イリスは普段と変わりない…… そうだよな、いくらカゲ太郎の触手でも、心核だけを抜き取るような離れ業が、できるわけない。
わけ…… ないよな?
「まさか、あれ。イリスの心核じゃ、ないよな」
{え、ええと、ですね…… 実は、その……}
「え? まさか!?」
{面目ないのです……!}
「いや、申し訳ながってる場合じゃ、ないだろ!」
{だって、変身とか分裂とか増殖とかが…… できなくなっちゃうのです! リンタローさまに恩返しが、シュリーモ村の秘伝の方法でしか、できなくなっちゃうのです……! ぴええええ……}
「この期に及んで、そっちで泣くの!?」
そうか ―― 以前のような心核損傷とは違って、まるまる抜かれただけなら、スライムの身体活動は一応できるんだな。すぐに停止してしまうわけじゃないんだ…… よかった。
だが、もちろん、危険であることには代わりない。心核が傷つくことを考えれば、カゲ太郎とは戦闘もできない…… なんとか、穏やかな交渉に持ち込み、イリスの心核を返してもらわなければ。
いっぽう、空の上では ――
龍体になったミリンがふたたび、炎を吐こうと身構えている。
『消えよ、卑怯者め……!』
「こらっ、逆鱗!」
ミアが手を、ミリンに向けてかかげた。
指先から、雷撃がほとばしる。鋭い光が空間を切り裂き、龍の口の横をぺちっと叩いた。
「攻撃をやめなさい」
『だって、おや! イリス姐やんが!』
「おまえが攻撃すると、彼女がより危険な状態に置かれることになるのが、わからないんですか?」
『はあい……』
ミリンの炎が、やんだ。
ミアは、今にも殺しそうな目でカゲ太郎をにらむ。
「条件は、なんですか?」
「はて? 身共が、あなたがたとの交渉などに応じる必要が、いったい、どこに?」
「おまえは、この渓谷の彩銀 ―― 『魔石』 が、ほしいのでしょう?」
「奪えばいいだけのものに、交渉する価値が、あるとでも?」
「……っ」
ミアが拳を握りしめた。
「安心しなさい、龍よ。スライムの心核は、施設で研究を終えるまでは、無事です…… このスライムは、ずいぶん特殊なよう 「《時間停止》」
「笑止」
不意打ちを狙った俺の 《超速の時計》 による攻撃は、あっさりとかわされた…… この程度は、予測済みだ。
本来の俺の狙いは、こっち。
「《九重錬成》 ―― 多層CNTヤーン網!」
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