第102話 そしていなくなった
{{◎△$§>∞……!!}} 「イリスさん!」 「イリス姐やん!」
両親の呼びかけも、ミアとミリンの叫びも…… イリスの耳には、まったく届いていないようだ。
引き続き、錬成進度がうわごとのように、その口から漏れる。
{古代竜核、錬成中 ―― 錬成度…… 0%…… はぁうっ! 錬成度…… 0%…… ぷうううう! 錬成度…… ぷぁぁぅ……1%}
「イリス! 聞こえるか!?」
{ぷぅぅぅ…… 錬成…… 度…… 1%……}
イリス…… 錬金釜に変身してもいないのに、なんで、錬成してるんだ?
しかも、古代竜核だと ――!?
{錬成………… 1%…… ぷぁぁぁ……}
イリスの全身が、苦しそうに震えている…… はやく、止めなければ。
俺は、イリスがこうなってしまった理由を、考えた ――
「…… まさか、同期、とか……?」
「「{{同期????}}」」
ショーグン・イエツネとその愛人オツタに変身しているイリスの両親、それに、竜神族のミアとミリン…… 8つの瞳が、俺に注目する。
「イリスのスペア心核は、もとの心核に同期して、活動をしているんだ。もとの心核が、静かに安置されている場合なら、その基本的な働きをシェアしているだけだが……」
説明しているうちに、確信が深まってくる。
「もし、もとの心核がなんらかの活動を始めた場合、スペア心核も影響を受ける可能性は、おおいにある」
{{もしかして!}}
ぷぴゅっ! ぷぴゅっ!
イリスの両親が、同時にはねた。白いキモノの裾がはだけるのもかまわず、イリスに駆け寄る……
{もう、ショービン様はスライム錬成釜を完成させたんでしょうか!?} {でもって、もう! 稼働させているんでしょうか!?}
「その可能性は高いよな……」
認めたくは、まったくないが。
ほかに整合性のある理由を思いつかない……
「ですが、古代竜核の錬成とは……」
ミアが眉をひそめた。
「スライム錬金釜ならば、たしかに、なし得るかもしれませんが…… 負担が大きすぎるのでは」
「そのとおりだ」
俺は、うなずいた。
「現に、かかっている負荷はそうとうのように見える…… おそらくは、本物の心核が、なんらかの力で無理やり駆動させられているんだろう。急がないと 「どういうことだ!? イリス姐やんの心核! とまっちゃうのか!?」
ミリンが泣きそうな顔で俺をゆすぶる。
「なあ! リンタロー! どうなんだ!? そんなことには、ならんだろうな!?」
「ああ…… もちろんだ」
もともと、ここオーエドに来たのは、イリスの心核を取り戻すためだ。
ならば目的を、さっさと達成してしまおう。
わけのわからないモノの錬成なんかに使われて、すり減り、壊れてしまう前に ――
俺は、イリスの両親に確認した。
「さっき、ショービンとかいうボスはこの城のどこかにいる、って言ってたか? ……心当たりは?」
{それが} {まったく、わかりませんのです!}
イリスの両親たちは、ショービンから指示を受け従う立場であるものの、その居場所はまったく知らないのだという。
城のなかにいる、というのはショービンがイリスの両親を脅すために言ったことだそうだ ―― すなわち 『裏切ればすぐわかる』 と。
{でも、単なる脅しではないのです!} {たしかにショービン様は、城にいないとわからないことを、知っているのです!}
「なるほどな……」
しかし、城の家臣にも見つかっていない、ってことは、ショービンは、よほどうまく隠れているのか……?
俺はウィビーに聞いてみた。
「ヘイ、ウィビー。この城に 『あかずの間』 みたいな場所、あるのか?」
もしあるなら、ショービンがそこに潜んでいる可能性は高いだろう。
しばらくしてウィビーは、オーエド城のマップの上に赤いポイントを表示した。
〔シークレット・ルーム、ノーねー! but、誰も入らない地下道、あるねー!〕
ぷぴょっ! ぷぴょっ!
イリスの両親が、はねた。白いキモノの裾、完全にめくれちゃってるな……
{そこ!} {龍穴なのです!}
「龍穴だって?」
{龍穴は、ヤパーニョ皇国の鎖国結界を造られた、尊い龍がおわすところだそうなのです!} {もうすぐそこで 『大厳臥龍祭』 という神事が行われるのです!} {私たち、今年は自分が神事を行う、と宣言したのです!} {もちろん、ショービン様の命令です!}
イリスの両親が、くちぐちに説明してくれる…… つまりは、ヤパーニョ皇国の守り神みたいな龍のいる洞窟が、いまウィビーが示してくれている 『龍穴』 なんだな。
「……ん?」
なんかいま、ひっかかったぞ?
「なあ、ミア…… 古代竜って、鎖国結界、造れそうなひと?」
「実際に会ったことはありませんが……」
ミアが、ためいきまじりに答える。
「造れるでしょうね、確実に」
「で、そんなひとが、その実、この大陸そのものなんだけど…… みたいな話。ちょっとまえに、あったよな?」
「あの伝説か?」 と、ミリンが口をはさむ。
「古代竜核を、1/3以上集めると、大地の巨龍が目覚める…… うんっ!? よもや!?」
俺たちは、いっせいにイリスを見た。
イリスの本物の心核は、この城のどこかで、まだ錬成を続けているようだ……
{古代竜核、錬成…… 中…… うっぷぅぅぅ…… 錬成…… 度…… 11%……}
「―― いや、まさか、いくらなんでも、そんなバカなやつが、いるわけないよな?」
俺はみんなを見回した。
イリスの両親に、ミアとミリンの竜神族親子が、いっせいにうなずく……
{ですよね!} {そんなことしたって、マジで誰得、ですよね!} 「そうそう。寝言は寝てから言え、っていうんでしたっけ? そういうの」 「まったく! バカバカしすぎるぞ!」
俺たちは、懸念を笑いとばそうとした。が。
―― 声をあげて笑えた者は、誰もいなかった。
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