第100話 意外なところにいた
「怪しいやつら!」 「ご用だ、であえっ!」 「くせものだ……っ!」
刀を手にした関所の役人たちが、次々と集まってくる…… だが。
やつらがどれだけ強かったとしても。
SUV ―― 広大な草原で満月のウェアウルフさえもぶっちぎったスーパーカーの、敵じゃないよな。
―― イリスとミア、ミリンが車に乗り込んだのを確認し、俺はアクセルを踏んだ……
数十秒でもう、最高速度に達する。
「待て……っ!」 「待てぇっ……!」 「者ども、道をふさぐのだ……!」
{ふっふーん! そんなの遅いのですよ!}
イリスが楽しそうに役人たちを煽っているが、まさにそのとおり。
―― どんどん集まってくるお役人の叫び声を、あっというまに振り切って。
俺たちは、関所を駆け抜ける ――
ヤパーニョ皇国、本土側の門を出ると目の前は、濃い霧だった。
霧のなか、走る車の音が、吸い込まれるように消えていく…… 明らかに、ただの霧じゃない。
「これが、ヤパーニョ皇国の鎖国結界です」 と、ミアが言う。
「くそ、前が全然、見えないな」
この先にはすぐ、大きな橋がかかっていたはずだが…… 欄干らしき影がちらりと見えた、と思っても、すぐに流れてきた霧が覆ってしまう。
{なかに入ってほしくない、って言ってるみたいなのです……!} とイリス。
鎖国結界だから、だろうな。
ともかく。
この霧のなかを車で走り続けるのは、どう考えても危険だ ――
後ろからは関所の役人が追いかけてきているから、止まるわけにはいかない。
しかし、ここで前から誰か歩いてきたら、確実に事故まっしぐら、だ……
「しかたないな…… いちかばちかで、転移使ってみるか……?」
「結界を抜けきらないと、危ないですよ、リンタロー」
「まあ、そうだよな……」
それにここで転移のために車を止めると、すぐに役人たちに追いつかれてしまう。
「なら、とにかく、この結界から出るのが、先なわけだな!」
偉そうな声とともに、ミリンの身体がぶれて、膨らみはじめた。
車体が、大きく揺れる……
「ちょ、ミリン! なにする気だ!?」
「余に、まかせよ!」
ミリンのセリフが終わらないうちに ――
俺たちは、大きな龍の腕に抱えられるようにして、もやもやとした霧のなかを飛んでいた。
なるほど…… 龍化したんだな、ミリン。
ミアが俺の隣で軽く首をすくめる。
「そういえば、ミリンはまだ、ちびっこなので、狭いヤパーニョの空を飛ぶにはもってこい、でしたね」
『おや! ちびっこ、いうな!』
金属をこすりあわせるような龍の声が霧に反響し、かすかにエコーがかかる……
数分後。
霧はすっかり晴れ、俺たちは再び、山の上にいた。
ミョート岳はなにもない岩山だったが、ここは、岩のすきまに小さな植物が、色とりどりの花を咲かせている。
{わあっ……}
イリス、嬉しそうだな。
{ちっちゃいお花、たくさんなのです! かわいいのです!}
「イリス姐やんは、この花がすきなんだな? この花は、ミヤマリンドウというのだぞ!」
人間の姿に戻ったミリンが、ドヤ顔で知識を披露する。
俺も、足元を見た。イリスの瞳みたいな、淡い青紫の花だ。
ミヤマリンドウっていうのか…… 前世の日本にも、ありそうな花だな。
「ということは、もう、ヤパーニョ皇国の本土に入ってるのか? いま俺たちがいるのは、リエンタ山脈のヤパーニョ皇国側…… ってところかな?」
「ええ、そのとおりです」
ミアが険しい表情で、うなずく。
「問題は…… 私たちが街で情報収集するのが、難しくなってしまったことでしょうか」
「ああ…… 派手にやったもんな」
SUVで関所をぶっちぎ………………ったうえ、ミリンで空を飛んで逃げたら。
ヤパーニョ皇国で神聖視されているミアとミリンはともかく、俺とイリスは、きっといまごろ、関所破りの大悪党にされていることだろう。
人相書が全国に回っても、おかしくないよな……
「まあ…… こうなったら、まっすぐオーエド城に転移してみるしか、ないか」
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