怪しむ者、怪しいモノ達
「・・・・・・だからメナルーの奴は騙されているんだって。」
酒場のテーブルでケレス達の審査をした男、クレックルが同僚達と話している。
「勇者になりたいんだろ? この時勢でやることかね」
「姿勢は立派だろ? 始めなきゃ生まれねえってそんな志は」
「そうなんだよ、立派な奴なんだよあいつは」
サボテン酒に浸していた乾燥腸詰めをかじりながらクレックルはくだを巻く。
「立派だからこそ騙されやすいんだよ。」
「また始まったよもう・・・・・・」
「少し理由がごぜぇますって感じだしたら、あいつは絶対助けちゃうんだよ。
良い奴なんだよ。だから心配なんだよ」
「だーかーらー!シェムジェム以外に危険物はなかったんだろ!」
「あいつは口の中調べてないって言ったんだ!
爆薬でも仕込んでたらどうする!」
「湿らねえ爆薬なんざロストテクノロジーだっつの!
さらに言うならそんな所に隠せる程度で何ができるんだ!」
同僚達は正論を言っているのだが、クレックルは聞かない。
クレックルの中では既に正論と言うことになっているからだ。
「何で解ってくれねえんだ・・・・・・
悪いことに巻き込まれてほしくねえんだよ・・・・・・」
クレックルは幼少の頃失敗した。
街で盗難が続いた時期があった。
彼はあまり周りと話さなかった男を、犯人と決めつけてしまったのだ。
あっという間に街に広まり、その男は牢獄にいれられた。
クレックル少年は勿論確信があるわけではなかった。
しかし大人達も言っているのだから、自分は正しいと思っていた。
だが翌日、メナルーが真犯人を見つけてしまったのだ。
パトロールしているときに犯行に及んだ故、言い逃れができなかった。
さらに男のアリバイを当時の酒場の女将が証言していた事が解った。
安心を早く求める心が、聞き取った者の頭から消していたのだ。
手段心理が働き、言った女将さえも忘れていた。
冤罪は晴れたが、男は街に住むことが出来なくなった。
自分が原因だとクレックルは罪悪感を覚えた。
大人達は鵜呑みにした自分たちの責任だと言ったが、モヤモヤは消えなかった。
戒めが必要だと気がついたメナルーが言った。
「自分のためであろうと他人のためだろうと、
本当の安心を求めるならしっかり調べるんだ。
たとえ自分一人になってでも、真実が見つからなくてもね。」
クレックルはあの審査まで、その言葉を心に刻んで仕事をしてきた。
そしてメナルーに対し敬意を抱いていた。
今、かつての過ちを繰り返そうとしていることを彼は気づかない。
既に影響を受けた故、視野が狭まってしまっているのだ。
今や彼はメナルーを下に見てしまっている。
しっかり調べられていない不安な案件と認識している。
「ほらもっと飲め。寝たら何時ものおまえに戻るさ」
「そうだ。何時ものおまえはもっと賢いって」
同僚達がどんどん勧めてくる。
しかしどれだけ酔っても疑念は頭にこびりついていた。
時は戻り昼間の門。
ケレス達が街に入ったしばらく後、女門番が交代していた。
そこに二人の旅人が来た。
顎の割れた巨漢が微笑み、ほくろの男が荷物を渡す。
「少し持ち物を見せて貰いますね。」
そう言って身体検査を行う。
「はいありがとうございます。
武器は預からせていただきますね。
入街証明を作りますのでお待ちください。」
「お疲れ様です。ほらおまえも労えよ」
「そうっすね。」
ほくろの男が偉そうに言う。
体格のギャップを不思議に思いながらも門番は仕事を続けた
彼女は知らない。
彼らがたった二人残った盗賊であることを。
そして彼らはケレスを着けてきたことを。
さらに彼らも知るよしもない。
その上空で黒い何かが一瞬現れまるで鳥の如く、霞や霧が飛翔するように消えたことを。




