第96話 王都の鼓動
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グランヴァル王都。
高い城壁と、赤茶の石畳。
戦争の緊張を知らぬかのように、市場は賑わっていた。
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【急に平和】
【王都でデート回?】
【温度差えぐい】
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「……やはり、鉱石、鉱脈、そして原脈がある場所に都市は栄えてきた。その力を借りてな」
アルヴェルトが低く言う。
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レインは足元へ蒼を薄く沈める。
探査の紋様が、王都全域の地下へと広がる。
「間違いない」
「主幹原脈が、王城地下で合流してる」
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エルフィナの目に淡い黄色が灯り、頷く。
「通常の三倍。戦場より濃い」
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ミナが肩をすくめた。
「みんな普通に暮らしてる」
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パン屋の匂い。
子供の笑い声。
露店の呼び込み。
この街の誰も、自分たちの足元に“星の鼓動”があることを知らない。
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セリスが、レインの横に並ぶ。
「調査は分かった。でも……少しくらい、歩いてもいいでしょう?」
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ミナが即座に反応する。
「そうよ。ずっと戦ってばっかりだったし」
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【きた】
【日常回】
【ハーレムターイム】
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レインが眉を上げる。
「観光か?」
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「視察よ」
セリスが微笑む。
「他国王都の視察も、立派な任務よ」
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「なら私は、食料事情の確認」
ミナがパン屋へ視線を向ける。
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アルヴェルトが、わずかに口元を緩めた。
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束の間の“平和”。
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市場通りを、セリスが先に歩く。
落ち着いた足取り。
時折、レインを振り返る。
「グランヴァルの王都は初めて?」
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「ああ」
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「なら、案内するわ」
自然に、距離が近くなる。
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その瞬間。
ミナが反対側に回り込む。
「ねえ、スイーツはこっちの通り」
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両側からレインの腕を取る。
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【両手にフラワー♡】
【どっち選ぶ?】
【原脈より修羅場】
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「ちょっとまて……探査中だぞ」
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「集中してるなら問題ないわよね?」
セリス。
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「蒼は足元に出てるでしょ?」
ミナ。
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確かに、蒼は薄く地中へ伸びている。
だが意識は半分、両側に持っていかれている。
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店先で止まる。
銀細工。
蒼い宝石。
赤い布飾り。
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「どう?似合うと思う?」
セリスが、小さな蒼石の首飾りを手に取る。
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「私はこっち」
ミナが赤い髪飾りを掲げる。
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視線が、同時にレインへ向く。
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【詰んだ】
【答えろ主人公】
【地雷原】
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レインは少し考え、
「どっちも似合う」
と答えた。
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二人が同時に睨む。
「どっちが“より”?」
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その瞬間。
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足元の蒼が、微かに乱れた。
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ほんの僅か。
だが明確な、異質な干渉。
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レインの視線が落ちる。
市場の喧騒の中、
一本の黒い鎖が、石畳の影に沿って伸びていた。
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誰も気づいていない。
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その鎖は、ゆっくりと、レインの足元へ絡みつく。
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【来た】
【黒鎖】
【再来】
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レインが蒼を展開する。
だが、遅い。
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影が立ち上がる。
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黒い鎖が、空中に無数に浮かぶ。
市場の中央。
人々の悲鳴。
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その中心に、立つ者。
黒幕。
顔は仮面で覆われている。
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だが、その背後に広がる波形は、明らかに“原脈と同期”していた。
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「……確認完了」
低い声。
「局所均衡、開始」
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鎖が、一斉に伸びる。
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【完成体】
【原脈同期きた】
【王都戦場化】
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アルヴェルトが遠方から駆け込む。
「レイン!」
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黒鎖が地面へ突き刺さる。
王都の地下へ、直結するように。
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蒼と黒が、真正面から交差する。
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黒幕が、レインだけを見る。
「お前の干渉値は異常だ」
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鎖が、球状に絡み始める。
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ミナが叫ぶ。
「レイン!」
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セリスが斬り込む。
だが鎖は、斬っても増える。
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球体が、形成される。
巨大な、黒い球。
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その中心に、レイン。
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蒼が内部で炸裂する。
だが球は崩れない。
むしろ、原脈と共鳴し、さらに強固になる。
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【閉じ込められた】
【黒球】
【ドクンドクンドクン】
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黒幕の声が響く。
「直接確認する」
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球体が、沈む。
石畳を溶かすように、地中へ。
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ミナが地面を叩く。
セリスが叫ぶ。
アルヴェルトが剣を突き立てる。
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だが、黒球は止まらない。
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王都の地下へ。
さらに深く深く。
原脈へ向かって。
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地上に残ったのは、
静まり返った市場と、
揺れる星の鼓動だけだった。
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(第96話・完)




