第95話 止められる者
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刃と蒼が、真正面から激突する。
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衝撃が、音を奪った。
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空間が白く弾け、蒼の城の塔が一斉に軋む。
石壁が粉塵となって舞い、剣閃の軌跡だけが残像を引く。
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視聴者:1,118,441,882
【入った!?】
【どっちだ】
【見えへん】
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アルヴェルトの刃は、レインの喉元へ。
レインの蒼は、アルヴェルトの心臓へ。
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どちらも、あと半寸。
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血が、一滴。
レインの肩から落ちる。
アルヴェルトの頬にも、赤い線が走る。
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静止。
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風だけが、遅れて戻る。
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「……止まれ」
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低い声。
だが命令ではない。
選択を促す声。
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アルヴェルトの刃が、わずかに震える。
レインの蒼も、これ以上は踏み込まない。
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【止めた?】
【互いに】
【ギリギリ】
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アルヴェルトが、静かに息を吐く。
「次で、どちらかは」
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レインは答える。
「ああ」
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蒼の城が、まだ呼吸している。
だが主の意志で、収束を止めている。
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一方。
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セリスの刃が、ミナの頬をかすめる。
赤の爆炎が、セリスの外套を焦がす。
こちらも、あと一瞬で致命圏。
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「やめて!」
ミナが叫ぶ。
だが視線は逸らさない。
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セリスの剣先が、止まる。
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「……あなたも、本気で守ろうとしている」
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赤と銀が、触れたまま静止する。
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【止まった】
【剣士同士の会話】
【熱い】
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戦場の周囲。
蒼の兵も、グランヴァル兵も、動きを止めている。
誰も割り込めない。
ここは四人の間合い。
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アルヴェルトが言う。
「忠誠は、命より重い」
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レインは返す。
「対象が違うだけ。俺は目の前の人を守りたい」
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「国家は秩序だ」
「秩序が人を守る」
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レインの蒼が、わずかに揺れる。
「秩序のために、誰かを削るなら」
「俺は、別の方法を探す」
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アルヴェルトの目が細まる。
「理想だ」
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「可能だ」
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短い沈黙。
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次の一撃で終わる。
それは双方が理解している。
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だが。
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遠方から、砂煙。
馬の蹄。
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伝令が、戦場中央へ駆け込む。
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【誰やねん】
【よく乱入できたな】
【タイミング読めよ】
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「アルヴェルト様!」
「緊急報告!」
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刃は、まだ喉元。
蒼は、まだ心臓。
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アルヴェルトは視線を逸らさないまま、告げる。
「言え」
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「……戦争の理由が、誤認と判明!」
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戦場が、凍る。
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「レムナート王女殿下とグランヴァル王子の婚約破棄は――」
「侮辱ではなく、書簡の改竄による誤解!」
「両国王は停戦を決定しました!」
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沈黙。
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【は?】
【まさかの恋愛の縺れ】
【2人でやれよ】
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アルヴェルトの刃が、わずかに下がる。
レインの蒼も、収束を解く。
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「……くだらない」
ミナが呟く。
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セリスが目を閉じる。
「……それでも、よかった」
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アルヴェルトが剣を完全に下ろす。
「王命が変わるなら、我らも従う」
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レインは蒼を解く。
城の圧が、少し軽くなる。
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【戦争終わり?】
【あっけない】
【でも死ななくてよかった】
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黒と金の旗が、ゆっくりと下ろされる。
蒼の城も、塔を一つずつ解体していく。
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だが。
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その時。
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遠方の地平線に、白い線が走った。
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音はない。
だが、山の一部が削れ落ちる。
削れた断面が、光も熱もなく、ただ“消えて”いた。
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視聴者:1,139,441,882
【え】
【戦争じゃない】
【なに今の】
【地形が消えた…?】
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エルフィナの黄が震える。
「……違う。これは砲撃でも、式でもない」
「“現象”」
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レインの蒼が、地面へ沈む。
深く。
さらに深く。
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そこで触れる。
巨大な脈動。
周期的な波。
鼓動のように、一定の間隔で、星の内側が息をしている。
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アルヴェルトが、空を見上げたまま呟く。
「……あれは、“再配置”か」
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セリスが唇を噛む。
「……あんなに広範囲に」
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ミナが、拳を握る。
「……人にどうにか出来るレベルじゃない」
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レインは答えない。
代わりに、蒼が足元に薄く広がる。
“探査”の紋様。
地中へ潜り、遠方へ伸びる。
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そして、同時に――
感じる。
さっきまで戦場に漂っていた、黒い鎖の干渉とは別の、
もっと古い、もっと深い“重さ”。
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「……原脈だ」
レインの声が、低く落ちる。
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エルフィナが即座に繋ぐ。
「グランヴァル側の流れが、異様に太い。さっきの“白い線”と同期してる」
「場所は?」
「……王都方向。地下の主幹流路が、そこに集まってる」
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視聴者:1,143,002,441
【王都!?】
【戦争終わったのに次の災厄】
【再配置クル〜】
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アルヴェルトが、剣を鞘に収める。
決断は早い。
「停戦は成立した。なら、次は“国を守る”」
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セリスが、強く頷く。
「王都にいる人たちを、消させない」
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ミナがレインを見る。
赤が、まだ熱を残している。
「行こう。……戦争は終わった。今度は助けに」
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レインは、ようやく頷いた。
「確認する」
短く。
「グランヴァルの原脈を」
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その時――
ほんの一瞬だけ。
戦場の空気の端に、“何か”が触れた気がした。
誰かが、こちらを見ている。
観測者、あるいは黒幕か。
だが姿はない。
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レインは目を細める。
「……まだ終わってない」
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【黒幕生きてる】
【王都編きた】
【次の舞台へあーゆーれでぃ】
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戦争は止まった。
だが――
星の鼓動は、止まっていなかった。
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(第95話・完)




