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第53話 水中戦という不利

 ――夜。


 ルナリス中央水域。


 水門塔の周囲は、昼よりも静かだった。


 水は穏やかに見える。

 灯りが揺れ、街は眠っている。


 だが――


 レインは分かっていた。


 これは、静けさじゃない。


 “制御された沈黙”だ。



 石橋の上。


 レインは水面を見下ろす。


 ミナは、少し後ろ。


 昼よりも、呼吸が浅い。


「……行くの?」


 小さな声。


「観測だけだ」


 レインは答える。


「今は、壊さない」



視聴者:501

【夜の水の街きれい】

【でも怖さ増してる】

【ボス戦くる?】



 レインは、指先で紋様を描いた。


 石橋の一部が、静かに変質する。


 水流解析用の小型生成迷宮。


 水の動きを“可視化”する構造。



 次の瞬間。


 水面に、細い線が走った。



 見えない糸のように、

 全水路が中央へ向いている。


 塔へ。


 ネレイスへ。



「……やっぱり」


 都市全域が、一本の巨大な水脈で繋がっている。


 単なる物理的水流ではない。


 “位相統一”。



 そのとき。



 水面が、割れた。



 音はない。


 ただ、黒い水柱が立ち上がる。


 そして――


 三体。


 水兵ではない。


 より濃く、より圧縮された水塊。


 内部に、淡い蒼光が脈打っている。



視聴者:538

【強そうなのきた】

【昼のやつよりやばい】

【完全に迎撃部隊】



 レインは、ミナを後ろへ下げる。


「下がってろ」


 短く言う。


 迷いはない。



 三体の水体が同時に動く。


 石橋を、すり抜ける。



 レインの足元に、紋様が展開。


 橋が立体迷宮へ変形する。


 水流遮断用の隔壁が出現。



 だが。



 水体は、壁をすり抜けた。



「……位相が違う」



 水が、空中で刃になる。


 振り下ろされる。



 レインは横へ跳ぶ。


 石橋が、真っ二つに裂けた。



視聴者:602

【避けた!?】

【今の普通に死ぬやつ】

【水刃チートすぎ】



 レインは歯を食いしばる。


(生成空間に、直接干渉される)


(こいつら、水流と同位相で存在してる)


 つまり――


 この都市全体が、敵の“場”。



 レインは一瞬で判断する。


 ならば。


 “場”を変える。



 足元から、円環が広がる。


 石橋が沈み、

 代わりに浮遊する足場が出現。


 局所的無水空間。



 水を、排除する。



 だが。


 塔の方角から、圧が来る。



 水が、押し返してくる。


 無水空間が、ひび割れる。



「……早い」



 ネレイスが、見ている。


 制御している。



視聴者:671

【主人公押されてる】

【環境が完全に敵側】

【これ不利すぎない?】



 一体が、レインの背後へ回る。


 水槍が、至近距離で放たれる。



 レインは、生成で瞬時に石壁を出す。


 だが――


 水槍は、石の内部へ染み込み、背面から噴き出した。



「……っ」


 肩をかすめる。


 赤い線が走る。



視聴者:708

【当たった!?】

【初ダメージじゃない?】

【これガチでやばい】



 ミナが叫ぶ。


「レイン!」



 レインは振り向かない。


 目は、敵ではなく“水脈”を見る。


(直接叩いても意味がない)


(制御点を切らない限り、再構成される)



 水体が、再び三方向から迫る。



 レインは、あえて一歩踏み込む。


 水体の中へ。



視聴者:742

【え入った!?】

【自殺行為】

【何考えてる】



 冷たい圧。


 全身が、水に包まれる。


 呼吸が奪われる。


 だが――


 レインは、目を閉じない。



(……分かった)


(こいつらは“水”じゃない)


(核は――)



 水体の中心。


 わずかに位相のズレた蒼光。


 制御の焦点。



 レインは、そこに紋様を直接刻む。



 局所生成。


 水の中に、極小の迷宮核を打ち込む。



 内部から、構造を書き替える。



 一体が、崩れる。



視聴者:801

【内部破壊!?】

【攻略見つけた?】

【頭脳戦きた】



 だが、残り二体。


 即座に距離を取る。


 学習している。



 塔の方角から、低い声が響く。


「……適応が早い」



 ネレイス。


 姿は見えない。


 だが、明確に“観測”している。



「だが」


 声が、冷える。


「水域では、私が上だ」



 水路全体が震える。


 橋の下から、巨大な水柱が噴き上がる。



 石橋が、完全に崩れた。


 レインとミナが、水上に投げ出される。



視聴者:882

【フィールド破壊!?】

【都市スケール戦闘】

【これもうボス戦】



 レインは空中で紋様を展開。


 浮遊足場を生成。


 ミナを受け止める。


 だが――


 水流が、四方から押し寄せる。



 ネレイスの声。


「学べ」


「ここでは、君の生成は不完全だ」



 レインは、歯を食いしばる。


 事実だ。


 水中では、生成構造が安定しない。


 常に“侵食”される。



(……なら)


(侵食前提で、構造を組む)



 レインの瞳が、静かに光る。


 怒りではない。


 理解の光。



 水流が、さらに強まる。


 今度こそ、押し切られる。



 だが。



 レインは、撤退を選ぶ。



 巨大な煙幕のように、石塵を生成。


 視界を遮る。


 その隙に、石畳の屋根の上へ。



 水柱は空を切る。



視聴者:941

【逃げた!?】

【でもこれ正解だろ】

【撤退=学習フェーズ】



 水流は、やがて静まる。


 街は、再び穏やかな顔に戻る。


 何事もなかったかのように。



 屋根の上。


 ミナが震えながら言う。


「……負けたの?」



 レインは、静かに首を振る。


「……学んだ」



 水域では不利。


 直接干渉は、侵食される。


 だが。


 制御核は存在する。


 水も、完璧ではない。



 レインは、水門塔を見た。


「……次は、場を変える」



視聴者:1,002

【主人公の学習ターン好き】

【ここから覚醒だろ】

【水ボス震えて待て】



 水理卿ネレイス。


 思想で縛る者。


 水で支配する者。



 レインは、初めて明確に押された。


 だが。


 目は死んでいない。



 水の都市。


 ここは敵の“場”。


 ならば――



(第53話・完)

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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