【33】恋バナとヤキモチと
「えー!そんな美味し…じゃなくて面白…じゃなくて驚きの展開だったの?!」
「晴ちゃん、隠す気ないでしょ。」
「そこはスルーして?」
「二人とも…他人事だと思って…!」
真っ赤になってうっすら涙目の穂奈美さんを囲んでの晩ご飯。流石に連日呉羽おばさんの料理をおねだりするのはマズイ、と母さんと私でパスタとサラダとスープを作った。スープ?インスタントですが何か?
衝撃の初対面プロポーズと青い鳥で同僚になったことなど、インパクト最大級の話題に思わず穂奈美さんをいじって愛でる会と化してしまった私とかあさん。それを見なかった事にして沈黙を守るとうさん。
しかし。他人の恋バナなんて美味しい飯のタネでしかないのだ。存分にいただきたい所存である。穂奈美さん可愛いし。瑞穂兄ちゃん、見る目あるな。
「穂奈美さんが幸せになる話ならいくらあっても足りないですよ!でも、もし瑞穂兄ちゃんが不埒なこと仕出かしたらちゃんと言ってくださいね!一発かましますから!」
「そんな危ない…」
「うちのかあさんが!」
「へ?私?!…まぁ、否やはないけど。」
「ないんだ…。」
最後にボソッととうさんの呟き。何か身に覚えでもあるのかな?後で聞いてみよ。
しかし、このやり取りでクスクスと笑い始めた穂奈美さんにちょっと安心した。
「穂奈美さんは、青い鳥のお店の雰囲気とかママとの相性とか、そっちはどうだったの?」
「正直、瑞穂さんのことでその辺は頭からすっ飛んでましたけど…とても素敵な方で、一緒に仕事してみたいって思えました。」
「ママのコーヒーもいただいたわよね。どうだった?」
「あんなに美味しいコーヒー、初めてでした…!」
うっとりと、今度は頬を染めて思い出している。
「今までコーヒーって、ただ苦いだけの飲み物だって思い込んでいたんです。…お給料も安かったし、節約してたらコーヒーって案外贅沢品で…。なのにあんなに香り高くて、口の中で味が移り変わって、飲み込んだ後の余韻まで楽しめるなんて…本当に美味しいコーヒーってああいうものなんですね…!」
「あら!穂奈美ちゃん、きちんと味のわかるオトナなのね!」
「えっ…やだ、恥ずかしい!いっぱしの口聞いちゃった…。」
…瑞穂兄ちゃん、これ早々に萌え死に案件だな。私でもクラッときた。なんなのこの恥じらいっぷりときたら。後で唯にもシェアしとこう。
…と思っていた時期が私にもありました。
翌日、唯にこの話をしたら…。
「ふうん…昨夜はそんなに楽しかったんだ。」
「そりゃー、穂奈美さんみたいにステキな人が一緒だったらご飯も美味しいに決まってるじゃん!しかも恋バナ…」
「晴ちゃんはさ、穂奈美さんみたいな人が好みなの?」
「へっ?!」
頬杖をついて少し膨れっ面の唯。可愛いっちゃ可愛いんだけど、何かいつもと違う気がする。
おかしいな、瑞穂兄ちゃんと穂奈美さんの恋バナ応援って話のつもりだったんだけどな?何か…身の危険を感じる…?
「ゆ、唯は瑞穂兄ちゃんと穂奈美さんの行く末が気になったりしないの?!」
「瑞穂兄さん…?あー、そういう話か。ごめん、晴ちゃんが穂奈美さん可愛いって話ばっかしてたから聞き逃しちゃった。ごめんね?」
小首を傾げて、傾城の微笑みで見つめてくる唯。だから他の子たちも見ただけで妊娠するからやめとこうよ…?相変わらず心臓に悪いな!
「唯、もしかしてヤキモチ妬いてんの?」
「妬いてるよ?」
「えっ」
「晴ちゃんが新しいお姉ちゃんに夢中で、僕のこと忘れちゃうんじゃないかってさ。」
…脳内真っ白ってこういうこと?
再起動がなかなか出来ないで固まっていると、午後の講義の予鈴が鳴った。
「晴ちゃん、午後は同じ英文法の講義だったよね?そろそろ行こうか。」
「あ、うん!そう、だね。行こう。」
先日の水族館よろしく、手を引かれてドナドナされながら講義に向かったが…その日は内容が全く頭に入ってこなかった。この単元落としたら唯のせいだからな…!




