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白瀬さんちの開かない扉  作者: いもっち
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【24】〈またの名を〉初回カンファレンス〈反省会〉

「ただいまー、晴ちゃん、唯くん!そんでお疲れ様でした、ありがとう!!」

「2人ともほんとに良くやってくれたね。おかげで最初の一歩は無事成功したようだよ。」


 2階から居間に降りると、満面の笑みでとうさんとかあさんが抱きついてきた。


「おかえりなさい。そっちも上手くいったの?」

「バッチリだったに決まってるよ!仮眠もベッド使わせてもらっちゃって、どの世界線の晴ちゃんも優しいって確証を得たわね!」

「そうだ、ちょっと聞きたいことがあって…着替えの件なんだけど。」

「あぁ、最後の『コレ』のことだね。」


 そう言ったとうさんが、居間に用意していた服を着ているのに気付いた。床には、ビニール袋に入ったホコリだらけの今朝着ていた服。


「もしかして、あっちで着てた服を扉越しに返した?」


 そう言ってあっちのかあさんが放って寄越した服を見せる。


「そうそう、服のチョイスもおんなじだわね〜、さすが、近い世界線だけあって差分が小さいわー。」

「これってどういうことなの?何で着替えたり汚れ物持ち帰ったりしたの?」

「これはね、転移した物、生物無生物に関わらず観測されないと素粒子レベルまで分解されて存在ごと消滅するかもしれないからなんだ。」

「え?えっ?!」

「もちろんすぐにってわけじゃない。ポイントは観測されるかどうかと、世界のホメオスタシスというかなんというか…。他の世界から来た存在はなかなか世界に受け入れられるハードルが高くてね。とにかく観測されないと存在確率が下がっていって、消滅する可能性が高いんだよ。」

「なにそれ怖っ!」

「もちろん消滅するだけじゃなくて、元の世界に戻される可能性もあるから、消滅する確率は思ってるほど高くはないと考えて良い。」

「とは言っても、せっかく買った服が消えちゃうのももったいないじゃない?だからちょっとめんどくさいけどこうしたわけ。」


 もったいない…そういう問題なの、これ?


「ってか、そしたら別の世界線に飛ぶのって危ないんじゃない!」

「それが、僕と凪ちゃんは大丈夫なんだよ。なんせ2人セットでお互いに観測し合ってるから、消滅の危険がとても低いんだ。」

「この世界でも晴ちゃんがいるから大丈夫だしね。」

「どゆこと?」

「この世界の人間として晴ちゃんが生まれるための因果となったから、消える確率がぐんと下がった、ってところかな。」

「まぁ、単体じゃそうはなり得ないからこそ2人セット扱いなんだろうけどさ。」


 そう言って呑気に笑う2人。良いのかそれで。


「さて、謎解きはその辺にして、今回の反省会が必要なんじゃないかしら?」


 と、唯に似た目の笑ってない笑顔で呉羽おばさんが切り込んできた。実はあっちの両親が仮眠を取っている間も我が家に留まって、朝からの状況を聴いてくれたりオヤツ(手作りの一口ドーナツ!)を振る舞ってくれたりしてくださったのだ。え、この人、女神かな?


「反省会…そうだね、今回はちょっと急ぎ過ぎた気もするから」

「あ、私、持って帰ったデータを本体に入れてこなきゃ…」

「凪ちゃん?」

「はいっ!」

「端末を繋いだらしばらくは時間がかかるのよね?」

「えっと…その…。」

「しばらくはデータのアップロードに時間がかかるから手は空くよね?ね、凪ちゃん?」

「雪雄さんの裏切り者〜!」

「1人だけ逃げようなんてさせないよ?一緒に不幸になろうね!」


 冷や汗をかきながらも必死に道連れにしようとするとうさん。

 どうせ2人ともお説教されるのわかりきってるのに、かあさんも往生際が悪いな。


「今朝のやりとりも含めて報告済みだから、無駄な足掻きは辞めといた方が良いと思うんだ、かあさん。」

「おばさん、ちゃちゃっとセッティングしたら戻ってきたほうが良いと思いますよ?」


 唯と2人で追い打ちをかけると、「はぁ~い………」とうなだれて端末を抱えたかあさんは2階へと向かった。とうさんは諦めの表情でお茶をすすっている。

 数分で戻ってきたかあさんが、しょぼくれた様子でテーブルにつくと、呉羽さんが笑顔のままパン!と手を打った。


「では、反省会を始めたいと思います。まずは今回、朝から振り回されて大変だった晴ちゃんと唯から。」

「え、えっと…。困ったな、と思ったのはマニュアル渡されただけで行動の説明がほぼなかったことかな。すぐに出かけちゃったから、マニュアルのわからないところがあったとしても聞けなかったし…。」

「僕も、まさか今日から開始するって聞いてなかったから驚いた。マニュアルは読みやすかった方だと思うけど、何せこの厚さだから…。」

「私もね、聞いた時は耳を疑ったわよ?帰ってくるなりマニュアル押し付けてさっさと出かけるなんて。せめて読み合わせして、内容の理解に齟齬がないか確認とかするのが普通でしょう?」

「「その件につきましては如何とも申し開きのしようもなく…」」

「どっかの政治家みたいな答弁はやめてもろて。」

「睡眠不足と低血糖で判断能力が鈍っていたのは認識出来ていなかった。データの解析結果を見て焦ってしまった。今は反省している。」

「どっかの犯罪者のインタビューみたいなんだけど!」


 とうさん…虚ろな目でネタかますのやめて、ホントに!真面目に進めたいのに…ほら!唯が吹き出すの我慢しようとしてスゴイ顔になっちゃってるじゃん!


「雪雄さん、凪ちゃん?反省してるなら改善策や対応策はもちろんあるのよね?」

「あのね、マニュアルに関しては今後改善する余地があるからどんどん意見が欲しいの。だから後で2人とも時間ちょうだい?」

「それと、今回の着替えの件もしかり、世界線をまたいだり飛んだりした時にどういう状態なのかも含めて理解しておいて欲しいから、その説明の時間もいるね。」

「それをどうして事前に出来なかったのか、が問題だったのよね?ごまかされないわよ?」

「「申し訳ありませんでした。」」

「2人からはこうして欲しいって要望とかある?」

「「事前申告してください。」」

「だそうよ?」

「「はい!」」


 完膚なきまでに呉羽おばさんにやり込められたとうさんとかあさん。その後は細かい疑問や要望、解説の応酬が続き…。


「ピンポーン」

「え?はーい…?」

『こんばんは、うちの2人がお邪魔してないかな?』

「隼瀬おじさん?!」

「あら、隼瀬さん帰ってきたの?もうそんな時間?」


 玄関に向かい、隼瀬おじさんを迎え入れて戻ると、呉羽おばさんののほほんとした「おかえりー」という言葉と、目に見えて顔色が悪くなり目が泳ぎまくった両親が出迎えた。


 両親よ、第2ラウンド頑張れ。

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