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白瀬さんちの開かない扉  作者: いもっち
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19/33

【19】唯、緊急参戦。

 衝撃の告白(?)の翌日、両親はあの扉から元いた地点へと戻っていった。「一度こちらの世界で日本に戻る必要があるから」とか、「パスポートの出入国記録の整合性が…」とか言っていた気もするが良く覚えていない。


 朝っぱらから唯が突撃してきたからである。


 黒部家では当初、親会議については唯に知らせるつもりは全くなかったそうだ。そりゃそうだ、だって無関係だし。それをどう丸め込んだのか誘導したのか、はたまた泣き落としたか恫喝したか…。最終的に丸裸レベルで事情を吐かされたらしい隼瀬おじさんたちが後ろで申し訳なさそうにしているのを尻目に、早朝から我が家に訪れた唯が目が笑ってない笑顔で両親に宣言したのだった。


「僕も、晴ちゃんと一緒に情報ハブの役割やりますね!」


 鳩が豆鉄砲食らった時ってこんな気分なんだろうか、なんて明後日な感想を抱くのも無理はないと思う。だって、ホントの本気で唯は関係ないのに。

 うちの両親は当事者だからまぁ仕方ないとして、娘の私も半分くらいは当事者みたいなものだ。両親のこの世界に対するアンカー、錨みたいなもの。それが私だから。

 黒部のおじさんも、まぁ関係者と言っても差し支えないくらいには事情を知っている。おばさんはどうだろう?なかなか微妙なラインだが、かあさんとの関係性から見ればかすってるくらいは関係してるかもしれない。


 でも、唯は。生まれてからずっと隣で暮らしてきてはいても、両親の特異性には関わり合っていなかったはずだ。何か変、くらいは思ってたかもしれないけども。

 こんな良くわからなくて胡散臭い、しちめんどくさくて厄介な事情に巻き込まれて良い立場ではないのだ、決して。


「え、と。あの、唯。何でその話が出てくるの?てか何で知ってるの?そもそも唯は関係ないじゃない、この状況…。」

「関係はあるよ。晴ちゃんがこれから大変になるだろうから、僕も手伝いたいって思ったんだ。」

「だけど…!」


 言葉を詰まらせた私に、黒部のおじさんとおばさんが疲れたような声で告げた。


「晴ちゃん、悪いんだが諦めて唯に手伝わせてやってくれ…。」

「え?諦め、って…え?」

「唯ったら、言い出したら聞かないんだもの、昔っから。晴ちゃんに悪いとは思うんだけど、唯も仲間に入れてやってくれる?」

「父さん?母さん?人聞きの悪い言い方はやめた方がいいと思うんだ。」


 笑顔で謎の圧をかける唯に、明後日を向いて目を泳がせている黒部家のお二人。一体昨夜、黒部家で何があったんだ。


 と、ここで空気を読まない我が両親が更に余計なことを言い出した。


「そういえば、あの後は唯くんに見えてた黒いモヤのような物は見えてないのかな?」

「ああ、今のところはあれっきりですね。」

「対策は、扉に関して言えば成功だったみたいだね。」

「でも、あれって境界が脆かったり揺らいだりしてる所も大好物よね?確かに私たちのような限りなく存在確率の高いモノには触れられないにしても、何某かの影響は及ぼして来そうでイヤなのよね…。」

「問題はそこなんだよ。存在確率を低く保つことで複数の世界線に同時存在する生存戦略を維持しているからには、やはりそれなりの影響をもたらして環境を変えようとする意図は否定しきれないから…。」

「ちょっと何言ってるかわかんない」

「影響のあるなしに関わらず警戒は必要ってことよ。」


 かあさんのざっくりした説明に脱力しそうになったが、ふと目に入った唯の表情が…。


「唯さんや。何でそんなにワルイ顔してんのかね?」

「ワルイ顔だなんてヒドイなぁ。僕も晴ちゃんたちの役に立てるってわかったんだから、嬉しいんじゃないか。」


 そう言うなら黒部のおじさんたちにドヤ顔するのヤメレ。おじさんたちも呆れてるじゃないのさ。


「何はともあれ、僕にも役割が出来たってことですよね!よろしくお願いします。」

「ちょ、唯!」

「そういうことだから、唯くんにも世話をかけるけどよろしく頼む。」

「とうさん!」


そうしてなし崩しに唯も参加することに決まった途端、「それなら後は若い二人で話し合ってもらおうか」と良い笑顔で例の扉から旅立ってしまった。


「あいつら……!」


とボソッと呟いた黒部のおじさん。その表情を見ずに去ったうちの親の冥福を祈りたくなってしまった…。


「で?差し当たって僕たちは何をどうすれば良いのかな?」

「詳しくはとうさん達が帰国してから説明するって。何でも色々と準備する必要があるのと、すぐには他の世界線のとうさん達も来られないだろうからってさ。」

「それについては俺たちも情報の受け渡しをするとしか聞いてないんだ。それが紙ベースなのかデジタルベースなのか、他の凪さん的なオーパーツベースなのかもね。」

「かあさんの立ち位置」

「帰国次第、凪ちゃんの昔の工房に行くとも言ってたかしらね?何だか大きな改造するとか…?」


 それは危険なフラグな予感しかしない。だがあの両親を唯一どうにか出来そうな黒部のおじさん達がこう言うと言うことは…


「嵐が来るの確定なのね………。」


 時節柄来るであろう台風よりも厄介な確定事項にため息をつく私と唯だった…。

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